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第二十三話 胡蝶の夢3
彼女の人助けはそれからも続いた。俺はあんな目に遭ったのだからちょっとは自重しろと言ったのだが、彼女が聞き入れる事はなかった。ただ、
「その時はたーくんが助けに来てくれるんでしょ?」
と返すようになった。俺はそれを言われると何も言い返せなくなる。これが「惚れた弱みだ」と素直に言えるようになるのはそれから数年後だ。
沙耶にとっては人助けなんて意識は無いのだろう。ただそこに困っている人がいるから、そこに辛い思いをしている人がいるから。そしてそんな人を救うつもりもないのだろう。
ただ自分の周りに笑顔が溢れてほしいから。そんな独善的な思いで行動しているのだと随分後に気付いた。自分が幸せになりたいからと行動している結果、人が救われているのだと。
だから彼女は本物なのだ。そこに偽善は無く、そこに作為は無い。
そしてそれは彼女が死ぬまで続いた。彼女は永遠に本物となった。
俺の中の正義は「沙耶」だ。俺の正義が失われる時、俺の中の沙耶も出ていってしまう気がする。
だから俺は助ける。周りの人の笑顔を守る。それが彼女、沙耶との誓いだから。




