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第六話 勉強会

前回の最後にあった通り、テストの話です。

正直、これただの日常の話じゃね?って思う自分がいます。

 テスト。それは学生にとっては不の象徴。

中学生になると、テスト期間というものがあり、そこでテストが行われる。

科目は国語、数学、理科、社会、英語の5教科である。

1年生の間の成績は高校受験に関係しないので、まだ気楽にできる。

言ってしまえば、1年でテストの点数が全て1桁でも、2年からずっと80点以上取れば良い高校に行けるのだ。

普通の学校ならの話だが…。

勇太の学校はそういう生徒がいることが気に入らなかったのか、追試制度となっている。

追試制度とは、ある点数以下の点数を取った生徒には追試を与えるという、誰もが聞いたことがある制度のことである。

え?そんなの簡単だって?それがそうでもないんだ。

勇太の学校は勉強熱心というか、なんというか、厳しいんだ。勉強のことになると。

その結果、『50点以下の点数を取った生徒は、その教科の追試を行う。それが複数ある場合はその教科全てを行う。また、追試の合格点は95点とする。』という形になった。

しかも、追試は合格するまで毎日行われ、部活に出ることは許されない。

授業が終わった瞬間に追試に連れて行かれるので、逃げることもできない。

結果、生徒は全力で勉強をして、全ての教科で50点以上の点数を取るしかない。

だから、みんな必死に勉強している。

間違ってる!そう思っていて何も解決しないから。

「というわけで、勉強しろ!勇太!」

浩治は漫画を読んでいる勇太に言い放った。

「大体なんでテスト前だってのに、漫画なんて読んでるんだよ。」

「今日、新刊が出たから。」

「買うなよ。」

「読みたかったんだから、しょうがないだろ!」

「開き直んな!」

浩治は少しの間、考えるような素振りをした後、

「よし、勇太。友達と勉強しろ。」

「……はああ!?」

「そうすれば、サボらないからな。それに、せっかく友達ができたんだから、それくらいはしたいだろ?」

「まあ、いいけどさ。じゃあ、明日くらいに聞こうかな。」

「あ、でも、今も勉強しろよ。」

「えーーー。」

結局、勇太はしぶしぶ机に向かうのだった。


 次の日の放課後。

勇太は友達である3人を呼び出した。集まって初めに竹宮さんが口を開いた。

「勇ちゃん、いきなり呼び出してどうしたの?」

「…テスト勉強があるから早くしてほしい。」

「あ、うん。今日、みんなで勉強しない?」

「勉強?」

井川と竹宮さんが同時に言った。

「うん。わからないとことかも教え合えるしさ。」

「で、でもさ…。」

竹宮さんが反論しようとしたところを西河さんがさえぎった。

「…賛成。」

「ゆ、ゆきっち!?」

「…2人も強制参加。」

「ちょっと待てよ!」

おっ!井川の反論か?

「…じゃあ、あんたは1人で勉強して何とかなるの?」

「………無理です。参加します。」

弱っ!まだ反論してないじゃん!

「…トモは?」

「……行く。」

なんかこの2人テンション低いなあ。どうしたんだろう。

「じゃあ、どこでする?」

「はいはい!俺、勇太ん家行きたい!」

テンション戻ってやがる!?

「いいけど、遊びに行くんじゃないからな!」

「やったぜーー!」

「聞けよ。」

というわけで、勇太の家で勉強することになった。


 勇太の家に向かっている途中、井川が話しかけてきた。

「勇太ん家って今誰かいるのか?」

「何だよ、突然。…今はたぶん、母さんと妹がいる。」

「妹がいるのか?」

「いるけど、それが?」

「勇太って1人っ子っぽい感じだからさ。2人もそう思ってたよな?」

「え?勇ちゃんはお兄さんって感じがしてたけど?」

「あれ?」

「…私も。」

「あれれ?」

「俺も!」

浩治は関係ないだろ!お前は知ってるし!

「俺だけかよ~。」

「皆、着いたよ。」

「おっ!ここか!」

ただの一軒家だけどな。

ガチャ。

「ただいまー。」

家に入ると、アイスを食べながら階段に向かっている妹と目が合った。

「あっ!おかえり。おに……その人たちは?」

「友達。」

「おじゃましまーす。」

友達と答えた瞬間、食べ終わったアイスの棒を床に落とした。

「……………お、お母さーん。お兄ちゃんが友達連れてきたー。世界の終わりだよー。」

「待てよ、おい。」

「だって、だって、お兄ちゃんが友達連れてくるなんて1億年に1度あるかないかのことなんだもん!」

「そんなに珍しいことなの!?失礼にも程があるぞ!」

「信じてたのに!」

「そんなこと信じるなよ!」

10分間の説明の末、妹は落ち着きを取り戻した。

「えっと、みんなゴメンな。紹介遅れたけど、俺の妹の木藤沙耶。」

「どうも。」

沙耶は3人にあいさつをしてから、

「じゃあ、勉強がんばってね。」

と言いながら早足で階段を上がっていった。


 勇太の部屋。

母親が今日は赤飯ね!とか言っていたが、それはおいといて、勉強だ。

「じゃあ、最初に4月のテストの結果見せて。」

勇太の学校では1年生は4月に学力判断テストを行う。

そのテストは各々がどれくらいの学力を持っているかを調べるらしい。

あらかじめ、持ってくるように言っておいたのだ。

「!?」

井川と竹宮さんが明らかにびくついている。どうしたというのだ。

「何で見せないといけないんだよ。」

「え?だって、皆がどれくらいの学力なのか、どの科目が苦手なのかとかわかっておいた方が良いだろ?」

「ぐっ……。たしかに。」

なんか悔しそうだな。

「…木藤。」

「何?」

珍しく西河さんが話しかけてきた。

「…まずは木藤から見せたら?」

「ゆきっちの言うとおりだよ!まずは勇ちゃんから見せるべき!」

竹宮さんがいきなり大声で言った。びっくりしたー。

「まあ、いいけどさ。はい。」

勇太は3人に見えるようにテストの結果の紙を見せた。

  

  木藤勇太

国語 94点

数学 91点

理科 83点

社会 80点

英語 99点

学年順位 21位


「……。」

「……。」

「…意外と高い。」

「意外って言うなよ。じゃあ、次は…。」

「…私。」

そう言いながら、西河さんは鞄から紙を取り出した。


  西河有希

国語 100点

数学 98点

理科 100点

社会 95点

英語 92点

学年順位 3位


「………。」

「………。」

「高っ!3位とかスゲー。なあ、2人とも。……あれ?」

井川も竹宮さんも隅で小さくなっていた。

「あの~、2人ともできれば見せてくれないかな?」

「……じゃあ、俺が。」

井川が嫌そうに紙を出した。


  井川一也

国語 28点

数学 9点

理科 13点

社会 76点

英語 19点

学年順位 253位


「…………。」

「…はあ。」

「……えっと、勉強すればなんとかなるさ。」

でも、社会に助けられてるって感じだな。大丈夫かな?

「じゃ、じゃあ最後に竹宮さん。」

「……うん。」

竹宮さんは恐る恐る紙を出した。

うわあ、嫌な予感しかしない。


  竹宮智菜

国語 7点

数学 2点 

理科 11点

社会 8点

英語 5点

学年順位 304位


「えっと、俺たちの学年って何人いたっけ?」

「……304人。」

「最下位?」

竹宮さんがゆっくり頷いた。

これはさすがに大丈夫じゃない!

勉強会を提案したからには、全員追試をクリアさせたいんだけどなあ。

「と、とりあえず、俺と西河さんで勉強を2人に教えるよ。えっと、役割分担は……どうしよ。」

「…木藤は数学と英語お願い。特に、英語は私より高いんだから。」

「ああ、わかった。」

ん?数学って2人の1番低い教科じゃないか?2人とも1桁だし。

まあ、しょうがないか。西河さんは3教科やってくれるんだし。

「よし、勉強始めようか!」

「……。」

誰も反応してくれなかった…。

こうして、勇太たちの勉強会は始まった。

勉強会といっても、ほとんど井川と竹宮さんに教えているだけだけど。

英語は少しずつ教えているとわかってきていたのだけど、数学はもう壊滅的だった。

解き方は詳しく教えて、2人ともよくわかったとかもう完璧だとか言うのだけど、実際に問題をやってみると全然解けないという状態。

あげくには、初めて見たとか習ってないとか言う始末。さっき教えたよ!!

他の教科もあまり進歩がなかったらしい。このままでは2人とも(特に竹宮さんが)追試になるらしい。

というわけで、これからも勉強会をすることにした。


 次の日の放課後は、学校の図書室で勉強することにした。

自分の勉強があるから教えることはできない西河さんは言っていたけど、図書室にはついてきた。

それを西河さんに聞くと

「…別に、トモが心配だったからついてきただけ。勉強はどこでもできるし。」

と、珍しく早口で言っていた。結構友達思いなんだなあ。

それはともかく、勉強だ。西河さんが自分の勉強をしているので、自動的に勇太が2人に教えることになる。ということは、当然

「なあ、勇太ここはどうするんだ?」

「ねえねえ、勇ちゃん。ここ教えて。」

こうなるよな。勇太は2人に一つ一つ丁寧に教えていった。休みなしで。

勇太は家に帰ると、リビングのソファに寝転がった。

「はあ、疲れたーー。」

「何~?帰ってきていきなり。珍しすぎて気持ち悪いんだけど。」

リビングでテレビを見ていた沙耶がテレビを見ながら聞いてきた。

「てか、おま、気持ち悪いって。」

「そんなのどうでもいいじゃん。」

「どうでもよくねえよ!ったく、えっと、今日も勉強会やったんだけどさー。」

「教えすぎて疲れたって?」

「なぜわかった!?」

「疲れてて、勉強会やったって聞いたら誰でもわかるよ。」

「そりゃ、そうか。」

「お兄ちゃん、ガリベンなんだから、それくらい頑張りなよ。勉強しか取得ないんだから。」

「そうだな……、ってそれひどくないか?」

「気にしない、気にしない。」

「気にするわ!」

「まあ、お兄ちゃんはその友達に頼られてるんだから、中途半端にしたらだめだよ。」

「……わかってるよ!」

そこに母親が声をかけてきた。

「勇太。もうすぐご飯だから、早く着替えてきなさい。」

「は~い。」

勇太がリビングのドアに向かおうとした時、沙耶に話しかけられた。

「ね~、お兄ちゃん。お兄ちゃんの学校って勉強に厳しいんだよね?」

「ん?ああ、テストが50点以下だと追試だからそうかもな。」

「お兄ちゃんの学校は行きたくないな~。勉強厳しすぎだもんね~。」

「……やっぱり、そうなんだよな。」

「お兄ちゃん、何か言った?」

「何でもない。」

そのまま勇太はリビングを出た。


 その夜。

「なあ、浩治。」

「どうした?」

「俺らの学校って勉強に厳しいのかな?」

「厳しいな。というより、厳しすぎ。」

「……だよな。」

「それがどうかしたのか?」

「いや、もしすごく頑張っても駄目だった人とかいたら嫌だなって思って。」

「そう思っても、俺らにはどうしようもないんだぞ。」

「わかってる!でも、やっぱりこんなの間違ってる!」

「それは俺も思っていることだ。さっきも言ったが、俺らにはどうすることもできないんだ。」

「俺は頑張ってる人たち、特に友達の役に立ちたい。」

「そう思うなら、思ってるだけでなく行動にも示せ。」

「!?」

「役に立ちたいならここで俺と話なんかしてないで、何か行動しろって言ってるんだ。」

「……そうだな。」

そう言うと、勇太は机に向かって、ノートに何かを書き始めた。

それは、午前3時まで続いた。


 次の日の朝、勇太が教室に着くと、井川と竹宮さんが一緒に勉強していた。

勇太はまっすぐそこに向かい、

「おはよう、2人とも。勉強はかどってる?」

と聞いた。2人とも、微妙と答えた。

「そうだと思って、今日はプレゼントを持ってきたんだ。」

「プレゼント?」

2人が声をそろえて聞いた。勇太は鞄から2冊のノートを取り出し、それぞれに手渡した。

「これは?」

「テスト範囲をまとめたノート。少しでも役に立てたらなって思ってさ。」

「これ勇ちゃんが?わかりやすいし、これなら頑張れそう。本当にありがと。」

「ど、どういたしまして。」

勇太は顔を赤らめながら言った。

それからのテスト勉強はそのノートを使って勉強した。2人とも少しずつだけど、理解できるようになっていった。

土日は竹宮さんが教えてほしいと言うので、勇太の家で2人で勉強した。

沙耶に何度も付き合っているのかと聞かれ、うざかったが、気にしないものとした。

そんなことをしている間に、ついに運命の日、テストの日がやってきた。

結果はどうなるかわからない。

だけど、井川も竹宮さんもあれだけ頑張ったんだ。きっと大丈夫だよな。

そう自分に言い聞かせ、勇太は学校に向かった。

なんか長くなりそうだったので、テストの話を分けました。


次回予告

皆で頑張って勉強した。

だからこそ、追試は逃れたい。

その思いは叶うのか。

4人のテストの結果は…。

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