雨の日
1人は好きなのに
どうしていつも邪魔するの
雨の日に窓を開けるのが好き
網戸にして、部屋の中で雨の風と匂いを感じて
雨の音以外のものが、世界から消えたような感覚が好き
落ち着く
ここは田舎だから
車の音や人の足音とか
騒がしいものはそんなに無い
雨の日の日曜日は、いつも以上に人がいないから本当に静かだ
ベッドに寝転びながら
ゆっくり、ゆっくり…
「がらがらがら〜
お邪魔しまーす」
激しく窓を開ける音と陽気な声で、私の静かな時間は終了した
「不法侵入」
「うわっなにお前冷たっ!雨よりも冷たい!!」
「帰ってよ」
「そうやって邪険にすんなよ、お隣の幼なじみに向かってさぁ。古新聞持ってきたんだぞ!部屋に靴置けるように!!」
そうやってたまに雨の日に私の部屋に入ってくる
玄関からは入ってこない
鍵が閉まってるから
「部屋が汚れる」
「じゃあ玄関の鍵開けて♪」
こいつの笑顔は苦手だ
明るくて、暖かくて
ちょっとイライラする
「やだ、私の家に来ないで」
「それはやだ」
「なんで!」
靴を古新聞の下に置き
ベッドの上にさも当たり前かの様に座り、にこにこと話をする
お節介やきなあいつに
"なんで"なんて聞いた所でいつも同じ答えしか帰ってこない
「いつも1人じゃ寂しいだろ」
ほら
目の前で
鞄からお菓子と飲み物を開けて
私の部屋の真ん中にある小さなテーブルに広げ始めてるあいつはそればかり
私は1人っ子で父も母も共働き
毎日忙しいらしく
家にはあまりいない。
そんな私に幼なじみのこいつはいつも気を使う
「黙ってないでほら!食べなさい食べなさい」
「帰ってって言ってるのに…」
そういいつつも目の前のクッキーには手を出してしまう
幼なじみなだけあって、私の好みをよく理解している
「1人は割りと好きなの
ほっといてよ」
「お前昼飯食べたわけ?」
「ちょっと!人の話し聞いてよ!」
「食 べ た の か?」
「今食べてるじゃない」
お昼なんか食べる気にならない
何も作られてないし
台所、なんか冷たいし
そんな事を考えながらクッキーを食べている私をみてあいつは大きなため息をついてみせた
「それはお菓子だろ、体に悪いな…なんか作ってやるから台所貸せ!」
「材料なんて無いわよ」
「買ってきてるよ!見ろこれ!!エコバックだぞ!」
「…知らないわよ」
全てお見通しか…
「なぁ、お前いつからそんな笑わなくなったんだよ
」
「元からじゃない」
「前はもっと笑ってたし、寂しがりやだったし…」
「……」
「つまんなそうな顔してるじゃんこの頃」
「あんたは幸せそうじゃん。彼女出来てから」
こいつには同い年の彼女がいる。髪が短くて背の低いふんわりした雰囲気の女の子
彼女が出来る前は毎日の様に私の家に来ていたけど
その彼女が出来てからは、たまにしか来なくなった
「彼女いるんだから私の家に来なくて良いじゃない
またヤキモチ妬かれるわよ?」
「ん?別れたよ?だから台所貸してね」
そう言ってあいつは部屋から出ていった
雨の音が部屋に響く
強くなってきた雨は耳障りに感じた
「私のせいだ」
彼女はヤキモチ妬きだった。他の女と仲良くしているのがどうしても許せないらしく、一度私の所にも「自分の彼氏にちょっかい出さないでほしい」と泣きついてきた
だから前は掛けていなかった玄関の鍵を掛けたのだ
あいつが入って来れないように
それでも、あいつは家に来た寂しがり屋な私を心配して、ご飯を作りに来たりした
寂しくないフリをしてもダメだった
きっと喧嘩でもして別れたのだろう
私のせいだ
私がもっとしっかりしていれば…
いつもは好きな雨の音も今日はやけにうるさい
灯りも点けていない部屋は暗くて静かだ
遠くで雷もなっている
嫌な天気
「おう!出来たぞ親子丼!!…あれ、なんでそんな部屋の棲みで体育座り?」
「…私のせいで別れたんでしょ」
「ん?何?雷と雨の音で聞こえない!」
「…」
「あ、分かった!雷怖いんだろ!!どれ、お兄さんがギュッってしてやろう!!!」
「止めてよ、そういうの…」
「?」
「そういう事するから彼女がヤキモチ妬いて…っ!」
「彼女と別れたのは他に好きな人が出来たから」
「は?」
酷い雨の中、薄暗い部屋であいつは顔を真っ赤にして言った
「そいつは昔から一緒にいて、笑ったり泣いたり表情がコロコロ変わる奴で
でも両親が少しずつ家に帰るのが遅くなるにつれて、そいつは笑わなくなって…
だから飯一緒に食べてやったら凄い嬉しそうで
だから料理勉強して
でも出来た彼女はヤキモチ妬きで、会わせてくれないくて
会えないって思ったら寂しくなった
そこで初めて気が付いたんだ」
「それって…」
「お前が好きだ。」
雨の日が好き
雨の日に窓を開けるのが好き
網戸にして、部屋の中で雨の風と匂いを感じて
雨の音以外のものが、世界から消えたような感覚が好き
それに、雨の日は
あいつが"幼なじみ"から"彼氏"になった思い出の天気だから
好き
結局、1人きりって寂しいですよね
閲覧ありがとうございました