1―2
「なんで僕なんですか!?」
「お前以外はみんな忙しいんだ!文句あるか!?」
――――――
話は2時間前に遡る。
「あー、響司さん呼んでもらえますか?」
希は一番近くの警察署で、係の人を困らせていた。
(なに、あの子…)
(まだ若いよね?)
(司さんを指名とは…)
(((許せん…)))
訂正。困らせたのではなく、嫉妬されていた。
当の本人は気にした様子もなく、司が来たのを確認すると、迷わずついて行った。
――――――
「沖田商事…またか…」
「そうなんですなので調べてみてください。」
「句読点がない文章がこんなにも読みづらいとは思わなかった。」
署内の個室で、司と希は話し合っていた。
「弁護士に捜査権はありませんので、協力をお願いしているのですが。」
「そうですか…じゃあ、光焔さんに聞いてみるよ。」
「お願いします。」
――――――
で、やっと冒頭に辿り着いた。
光焔は捜査に協力するどころか、1人で捜査をさせようとしているのだ。
「先輩…」
「行ってこい、響!」
「はぁ…」
――――――
「こんにちは…」
オフィスの扉を恐る恐る開け、司はゆっくりと沖田商事の中へ入った。
「ああ、こんにちは、警察の方ですか。」
中から一番に出てきたのは沖田商事の社長、沖田だった。
「さ、どうぞどうぞ上がってください。」
――――――
「最近の状況はどうですか?」
「そうですね、前に指導を受けてから、タイムカードを6時には切るようにしています。見ますか?」
沖田は少し奥に入ったあと、紙の束を持ってきた。
「どうぞ。」
司はその中の1枚を取った。
「シュッシャ 8:48 タイシャ 5:42、ですか。ほぼ8時間ですね。写真を撮らせて頂きますが、いいですか?」
「どうぞどうぞ、いくらでも。」
司は頭をひねり、大体のカードの写真を撮った。
――――――
「はい?!」
「知りませんよ僕も!」
希は警察署内で、司に文句を言っていた。
「…ん?」
希は今一度、カードの写真を見た。
「これ…おかしくありませんか?」
「…どこが?」
希はカードの写真を2枚出して、同じところを指した。
「ここ、出社と退社の時刻が全て同じですよ。」
「本当だ…」
3枚目、4枚目、5枚目の写真にも、同じ時刻が印字してあった。
「5人が同時に会社を出ることは、有り得ませんよね?」
「確かに…」
さらに、写真の山を崩し、「鈴木」と書かれているものを2つ、取り出した。沖田商事には鈴木さんは2人いるらしい。
「この『鈴木』の筆跡、妙に似てませんか?」
「言われて見れば、そうだ…」
見せられた写真を取る司。
「でも、同じ人が書いてるだけかもしれないよ?」
それを聞いた希は、チッチッチというように指を振る。
「じゃあ、なんでカードの更新のタイミングが全て同じなんですか?」
「…そのとーりですね、そのとーり。」
「全てのカードが同時に集まるのもおかしい。つまり…」
希は間を開けた。
「このカードは、一ヵ所で一方的に管理されている可能性が高い。」
「…そうだ。タイムカードは誰でも切れる…!」
――――――
[ねぇ優、いつもお母さんが帰ってくるのって、何時ぐらい?]
[なんでこれまた突然?]
家で、優と希はメールをやりとりしていた。
[細かいこと気にしなくていいから。]
[えーと、本当なら6時なんだけど、なんかいろいろ大変で、9時はまだ早いほうで、10時、12とか。]
(やはりか…)
希はケータイの前で腕を組んだ。
(でも、これ以上介入しても…おせっかいだよな…)
すいません…
間違いで1―3と書いてしまいました…
ほんとは1―2です。