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1―1

希は弁護士だが、その前に高校生であることを忘れてはならない。

希は17歳、典型的な(?)高校2年生なのだ。

弁護士の仕事があるので定時制高校だが、週3のペースで学校に通っている。

ちなみにメガネには度が入っていないので、学校では取っている。メガネは、依頼人に高校生だと思われてナメられないための変装だ。

――――――

希は、机で爆睡していた。

「おい守屋、聞いてるか?」

今は無論、数学の授業中だ。

「守屋、眠気覚ましに1番を解いてみろ。」

希は半開きの目で立ち上がり、黒板を見つめた。

「x=3…」

「正解だ。暗算か?」

「………zzz」

答えて席に座ってから寝るまでの時間、実に2秒。数学教師は呆れて、次の問題へ移った。

――――――

午後7時。

部活生ならともかく、帰宅部の希はすでに帰る時間だ。

希は、夜道を浅倉(あさくら) (ゆう)と歩きながら、とりとめもない話をしていた。

「なんか今日は遅くなっちゃったね~。」

優は多少天然が入った、本当に典型的な高校生である。

「ねぇ、遅くなったのは優のせいじゃない?数学教えてくれって言ったのはそっちでしょ?」

「いいじゃん、希は数学寝てても分かるんだし。」

「ああそうですか。授業中に寝てて授業を理解するのは結構大変なんだけど。」

閑話休題。

「で、いつになく遅くなってしまいましたけれども。」

肩をすくめ、希は言った。

「門限とかないの?心配されてない?」

ちなみに希に門限はない。作る人もいない。

「ああ、ダイジョーブダイジョーブ。お母さんの帰り、いつも遅いし。」

「いつも遅い?」

「そうそう、特に遅いときは日をまたいだりとか。」

「へぇ…」

希は腕を組んだ。

「理由は?」

「えーとね、なんか残業がどうとか。」

(残業…?)

「お父さんがいないから、夕飯は買って帰るし、そのお金も毎日くれるから全く困ってなんかないんだけどね~。」

「それで毎日コンビニに?」

「うんうん。」

希の、弁護士の血が騒いだ。

「残業代とかは?」

「知らないけど~、サービスとか言ってたような…」

(サービス残業…?)

「勤めている会社の名前は?」

「えーと、沖田商事。」

(沖田…だと…?!)

希は決意した。

「あー、ごめん。用事思い出した。じゃあね!」

「え?一緒に行くんじゃなかったの?」

何も言わず、希は走り出した。

――――――

沖田商事。

この会社、以前希が担当した事件の依頼人だった。

希は[労働基準法違反]のこの会社を弁護したのだ。

まあ結論を先に言ってしまうと、希は盛大に負けた。それはもう。

希としてはこの事件を受けたのは不覚だと思っているのだが。

その会社がまた労働基準法を犯したとなれば、黙ってはいられないのだ。

――――――

「すいません沖田商事の事件のファイル見せてください!」

勢いよくドアを開け、響法律事務所の中へ入る希。

中には響はいなかったが、弁護士仲間はいた。

「あれ?今日はこっちの仕事の日じゃなかったんじゃない?」

小粥おがいは自分のデスクから声をかけた。

「それにいつものスーツじゃないし…」

「小粥さん、ファイルはどこに?」

「えーと、2年前だね、ここの棚。」

小粥の言葉はスルーされてしまったが、これも希のやり口なのだ。

小粥はため息をついて、自分の仕事に戻った。

――――――

(おかしい…あの時、家宅捜索も入ったはず…!)

自分のデスクでファイルをめくる希。

そう、おかしいのだ。あの時警察が介入したことにより業務は改善されたはずだ。

それなのにサービス残業が続いているということは、懲りる気が全くないということになる。

(変だ…!あれだけの指導を受けたのに…)

これは司に掛け合ってみるしかないと、希は決意した。


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