0―1
処女作です。
「弁護士ってなんだろう?」から始まって、Wikipediaさんに大変お世話になり、勉強(?)のため逆転裁判をやってハマり、法律書を読みふけり、そのせいで図書委員に怪しまれた結果です。
今回はプロローグということで0―1になってます。
2012/5/12 一部修正
二人組の警察官が、メガネにパンツスーツの女に話しかけた。
「鞄の中、見せてください。」
「嫌です。」
「なぜですか?」
「嫌だからです。」
女は素っ気なく答えた。
「嫌だから、ねぇ…」
片方の警官が、鞄を触る。
「クサいな、コイツ。」
「お、警部の勘が発動!」
違う警官が言う。
「逆に聞きますが、なぜですか?」
「そりゃ、俺の勘だ。」
「勘が当たるのはドラマだけで十分ですから、法的根拠を教えてください。」
警官は、顔を見合わせた。
「警職法のいくつだったか覚えてるか?」
「えーっと、3だったような…」
「4だろ…」
「あなたがた、本当に警察官ですか?第2条ですよ。」
女は、見下した口調で言った。
「警察手帳見せてください。」
「なンだと…!」
クサいと言った警官が、キレた。
警官は腕を振りかぶって、女の頬を殴った。
女は微動だにせず殴られたあと、メガネを上げてこう言った。
「只今をもって、暴行罪が成立しました。」
「は?」
顔色を変えずに女は続ける。
「後で告訴させて頂きますので、氏名と連絡先を教えてください。」
再び顔を見合わせる二人組。
「名刺出してくださいって言ってるんですけど。」
慌てたように、殴った警官はポケットから名刺を出し、女に渡した。
「あ、そうだ。申し遅れました、弁護士の守屋と言います。」
女も名刺を出し、殴った警官に渡す。
そこにははっきりと、[弁護士 守屋 希 (もりや のぞみ)]と書かれていた。
「それでは、失礼させて頂きます。仕事がありますので。」
女はハイヒールの音をツカツカとたてながら、歩いていった。
と思ったら、振り返った。
「そういえば、傷害罪は最近罪が重くなりましたよね?」
女の頬は、腫れていた。
――――――
「守屋…って!」
殴っていないほうの警官、響 司が言う。
「日本で唯一の、未成年スゴ腕弁護士じゃないですか…」
「それは…本当か…?」
殴ったほうの警官、光焔 烈が焦ったように言う。
「あと、お前はなぜそんなことを知っている…?」
「あ、僕の父親が法律事務所を経営していて、彼女はそこに所属しているそうです。いくら未成年といえど、その腕は侮れないとか。今のところ、彼女がついた事件は、全て勝利しているようで…」
「マジかよ…」
おろおろし始めた光焔は、あることを思いついた。
「今すぐお前の父親の事務所まで連れて行け!今ならまだ間に合う!」
「は、はい!」
――――――
事務所に着いた希は、ロッカーに鞄を入れ、自分のデスクに着いた。
その上は、「かわいい」もので溢れていた。
ペンはもちろん、クマやウサギのぬいぐるみ、 クリップまで。USBメモリは白一色だったが、ラインストーンが全面に貼ってあった。
「希ちゃん、その頬はどうしたんだ?」
男性が、希の後ろから話しかけた。
「ああ、響さん。おはようございます。」
椅子を回転させて、希は振り返った。
響さんと呼ばれた男性は響 隆一。司の実の父親である。
「息子さんって、警察官でしたっけ?」
「え?あ、そうだが。」
隆一は、質問を質問で返されたことをスルーすることにした。希のスタイルに付き合っていたら日が暮れてしまう。
「光焔って人、知ってますか?」
「たしか…司の上司だったはずだが。」
希は目を輝かせた。
「やっぱり!さっき、その人に殴られたんですよ!」
「はい?!」
――――――
「はぁ…」
隆一は頭をかかえた。
「ということで手続きよろしくお願いs
「ちょっと待て。」
慌てて話を遮った隆一。
「お前は警察の仕事を増やしたいのか?!」
希はさも当然であるかの如く、胸を張った。
「当たり前じゃないですか響さん。大体警察なんてカッコいいのはドラマだけなんですよ。実際は何人は職質するとかのノルマで動いてる組織です。」
「一応警察だって必要だから公務員で国費も入ってるんだが…」
「それがどうしたというんですか?ここに証拠もありますし、裁判で負ける訳が無いじゃないですか。」
ポケットから希が出したのはボイスレコーダーだった。
「抜け目の無いヤツだ…」
隆一は説得を諦めた。
――――――
突然、事務所の扉が開いた。
「守屋希ぃ!お前を現行犯で逮捕するぅ!!」
転がり込んで来たのは光焔と司だった。
「あれ?私、なにかいけないことでもしました?」
入り口に倒れている光焔を見て、希は言う。
「公務執行妨害だぁ!!」
「いつ、公務の執行を妨害しました?」
「警部、だから言ったじゃないですか…」
司が口を開いた。
「道を間違えたお前が言えることか!」
「警部も警部で無茶苦茶です!」
隆一は苦笑いしていた。
――――――
光焔のアツい説得がウザくなったのか、希は引き下がり、光焔と司は帰っていった。
で。
平和が戻った法律事務所で、希はポケットからビニール袋を取り出し、デスクの上に置く。
ビニール袋の中には、湿布と医療用テープが入っていた。
引き出しから鏡を出してデスクに置き、希はハサミで湿布を切り始めた。
その一部始終を見ていた隆一は思う。
希のポケットは4次元ではなかろうか、と。
プロットは組んでありますが、できる気がしません。
遅れても暖かい目で見守ってください。