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【連載版】本格異世界グルメ ~チートを断って異世界転生してみたら本格中世の村で俺のグルメ無双がヤバイ~  作者: 川獺右端


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第50話 女神様は語る

「戦争って、やばいんですか、この地方」


 女神様はニパっと笑った。


「もう大丈夫よ、導火線になるフリッツをリュージさんが倒しちゃったから、あなたが天寿を全うするぐらいの間は、この地方は平和でしょう」

「あ、いえ、あれは偶然でして、たまたま運良くフリッツさまが自爆しただけでして」


 女神様はスプーンでスダラマッシュを掬って口に入れた。


「スダラマッシュ、全てはここから始まったのです。本来の歴史では、今頃シャーロットさんは死亡しているはずなんです。悲しみのあまりバーモント子爵は最悪の決断をします。フリッツを子爵家の跡取りに正式に認めてしまうのです」


 ああ、そういう流れになるはずだったのか。


「跡取りになったフリッツを止める人は誰もいません。そのまま彼はバーモント子爵もちょっと強い毒で始末し、この領を乗っ取ります」


 そ、それは怖いなあ。


「そうね、大体そういう計画だったよ」


 ヘレンからの証言も取れた。


「そうなると、この領は地獄へまっしぐらに落ちていきます。騎士の大部分がやめて、代わりにボナンザ一家のゴロツキが騎士として入って来ます。彼は領のお金を浪費し、贅沢な暮らしで金庫を空にしてしまい、信じられないほどの重税を村々に課します。次々に農民は倒れて行きます」


 ブルッと震えた。

 そんな事になっていたら、貧乏な俺の家は真っ先に潰れる。

 家に体力が無いから、力が無い者、ピカリあたりから死んでいったろう。


「そうなったらもう、農民反乱ですね。農民対ゴロツキ騎士、フリッツ側には凄腕の剣豪のヘレンがいるので戦闘には勝ち続けますが、とうぜん王家から懲罰の軍が出て、フリッツの乱は鎮圧されます」

「鎮圧かあ、王家の騎士団は強そうだもんなあ」


 うっは、この世界線だとしてもヘレンは戦う気満々かよ。

 俺は多分、農民の反乱の途中で死んでるな。

 ピカリが死んだから、小兄ちゃんと大兄ちゃんと一緒にゴロツキと戦って死んだわ。

 うん。


 ほがらかに笑いながらネコチャンさんと遊んでいるピカリを見て、そういう世界がこなくて良かったと心から思った。


「ですが、今回はベストなタイミングで魔物毒特効のスダラマッシュが開発されて、シャーロットさんがそれを口にしました。ギリギリの所で彼女は持ち直して、スダラマッシュが大好物になり、改良された水芋スダラマッシュをいたく気に入って、リュージさんを領館に招き入れました」

「さすがリュージだなあ、すごいや」

「いやいや、たまたま、偶然だよヘレン」


 女神様はケルシャ漬けを食べて目を丸くした。


「塩っぱく無いんですね、へー、向こうの世界のザワークラフトみたいな、水キムチみたいな感じですね」

「唐辛子があるとキムチに出来たんですが、今、どのあたりですか?」

「新大陸ですからねえ、こっちの世界は魔物がいるからなかなか大変なのです、もうしばらくはこっちの大陸には入ってきそうにないですね」


 そうかー、やっぱ大陸とか気候とかも全然違うから、こっちの世界の唐辛子もそのまんまの味とかでは無いんだろうなあ。


「というわけで、悪漢フリッツは捕まり、リュージさんのスダラマッシュで一地方の内戦が回避されて、家族も幸せにくらせました。凄いですよリュージさん」


 女神さまに褒められたので、俺は凄く照れてしまった。


「たまたま偶然なので、はは、女神様は俺に、お料理の隠しチートとか付けてくれてませんか?」

「全然ですよ、この地方の平和はリュージさん前世知識だけで成し遂げた快挙なのです。私は何もしていません」


「でもなんだかみんな美味しい美味しいって褒めすぎのような気がするんですが」


 ああ、と言って女神様は花のように笑った。


「それは、どこの世界でもある、人間存在のチート能力ですよ。愛している人に美味しい物を作りたいという感情由来のチートなのです」

「料理は愛情ですかっ」


 意外、それは料理研究家が言うような手垢が付いたキャッチフレーズであった。

 だが、なんだか胸にしっくりと納まる感じがした。


 そうかあ、俺はこの世界で出来た家族に美味しい物を食べさせたいと思ったからこそ、それが味にも出ていたのか。


「解る、なんかリュージの料理は違うんだよな」

「うん、兄ちゃんの料理は特別なんだよ」


 そうかそうか、そんな簡単な事だったのか。

 スキルとか、チート能力とか、そんな難しく考える事は無かったんだ。

 愛情かあ。


 女神様はお料理を食べおわった。

 完食なされた。

 奉納されたワインは飲み残したので、持って帰るようだ。


「美味しかったわ、リュージさん、さて、相談なんだけど、ご褒美にチート能力は欲しくありませんか?」


 女神さまは悪戯っぽく笑った。


 迷った。

 迷った、超迷った。

 正直チート能力は欲しい。

 素晴らしい料理を作る才能とか、前世の素材を配達してくれるチートスキルとか。


 だけど、だけど。


「い、いりません、お、俺はこの身一つ、前世の知識だけで成り上がっていきますから、はい」


 女神様はにっこり笑って俺に抱きついて来て、頬にキスをしてくれた。


「それでこそ、リュージさんです。頑張ってね。また節目節目に来てお料理を食べさせてもらいますね」

「は、はいっ、ありがとうございます、頑張りますっ!!」


 俺は頭を下げた。

 女神さまを喜ばせる料理を作れた。

 美味しく食べてもらった。

 それだけで、俺は胸が一杯だった。


「さて、帰りますよ、ネコチャンさん」

「ニョーン」


 またな、リュージと言ってる気がする。

 女神さまはワインの瓶を担いで人の居ない広場を横切って去っていった。


 ありがとうごさいます。

 俺は女神様が送ってくれたこの世界で料理で成り上がりますから、見ていて下さい。

 俺はいつまでも女神さまの後ろ姿を見続けた。


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