第46話 領館へ凱旋帰宅する
目が覚めた時、どこに居るのか解らなかった。
一瞬前世のビジネスホテル? とか思ってしまったが、白雲城の従業員宿舎の一室であった。
なんだね、こっちの世界でも立派な部屋はあるんだな。
個室とは超贅沢なので、よく眠れた。
朝ご飯を食べた後、キッチンスタッフに見送られて馬車で帰るのである。
行きと同じく、お嬢様と家令さんと同じ豪華馬車であるね。
サスペンションが付いているのか乗り心地が良いなあ。
「リュージさん、今回は本当にありがとうございました」
「いえいえ、俺自身は何もしてませんし」
お嬢様は俺の手を取って握った。
「そんな事はありませんわ。全てはリュージさんのお陰なのです」
「そんなそんな」
お嬢様は感激家でいかんね。
「錬金術師のパオラの見立てでは、あと一週間、スダラマッシュを食べるのが遅れていたら、私は一生寝たきりになっていた、下手をすれば死んでいたそうなのです」
「フリッツさんの毒はそんなに?」
「はい、最後の最後でスダラマッシュが間に合い、私はスダラマッシュが大好物になって、沢山食べて、そのお陰で毒が排出されて元気になれましたの」
うわあ、ギリギリだったんだなあ。
いいタイミングで記憶を取り戻して良かったな。
「元気になって肌が綺麗になって、痩せてきて、私は美しくなれました。舞踏会に出る勇気もでましたのよ。久しぶりの舞踏会で、そこでミッチェルさまに見初められましたのよ」
お嬢様はおほほと笑った。
そうか、あの美丈夫はミッチェルさまというのか。
なんかイメージどおりの名前だ。
「これからバーモント子爵家は全霊を込めてリュージさんのバックアップをして、世界にあなたのレシピを広めますから、ご期待下さいね」
「ありがとうございます、過分なご厚意に痛み入ります。非才ですが、これからも頑張らせていただきますよ」
「そうですね、次は領祭ですね、もうすぐです」
家令さんも重々しくうなずいてそう言った。
そうだ、三郡六村の領民に俺の料理を振る舞って楽しく食べて貰おう。
うんうん。
楽しみだなあ。
馬車はガラガラと半日掛けて領館へと戻った。
お嬢様と家令さんは、御領主さまに事情を説明するために執務室へ入って行った。
俺は特に用事が無いので、サブキッチンに顔を出して手伝った。
「おお、リュージ、白雲城の夜会の首尾はどうだ?」
「上手くいったか、上手くいったか」
「ええ、みんな喜んでくれましたよ」
「「で、あいつ誰?」」
ファビアさんとミレーネさんが声を揃えてヘレンの方を見た。
「なんだよ、つれねえな、ファビア、ミレーネ。あたいだヘレンだぞ」
「「なにいっ!!」」
なんだよ、知り合いかよ。
領街の女子はみんな知り合いじゃないだろうな。
「おまえ、頬の傷はよ?」
「えー、なんだよ、こんな綺麗になりやがってよう」
「なんか神獣さんが治してくれた。んで、その借りでリュージの護衛をすることになったんだぜ」
「うおお、護衛、やっぱ出世だなあ、リュージ」
「私はやると思ってたぜ、リュージ。ヘレンは街で負け知らずの不良だったからさ、安心だぞ」
「ああ、おまえらとつるんで遊んでいた頃を思い出すなあ。なつかしいぜ」
サブキッチンに不良娘が三人になった感じだな。
かしましい事だ。
家令さんが呼びに来た。
御領主さまがお話があるらしい。
ヘレンも一緒に執務室に入った。
「おお、来たねリュージ、伯爵さまは大変にお喜びだったそうだ、夜会は大成功だったらしいね」
「ありがとうございます」
「そちらが、ボナンザ一家のヘレンだね。バーモント子爵家にようこそ。シャーロットが言う通り、リュージの護衛をしてもらうよ」
「はい、お任せ下さい」
御領主さまは立ち上がり、頭を下げた。
「そして、フリッツが面倒を掛けた、本当にすまない」
「あ、いえいえ、頭をお上げ下さい、こちらに被害はなかったのですし」
「リュージが懇意にしている神獣さまに治療のお手間をかけさせていただいたようだね。その正体も知りたいところだが、まあ、今日の所は詮索はやめておこう」
そうだね、ネコチャンさんについては説明が難しすぎる。
「フリッツは裁判に掛けるが、たぶん鉱山奴隷としてボルギス銀山に送られる事になるだろう」
そうか、死罪にはしないんだな。
やっぱりあんな人でも我が子だし、可愛いのかもしれないね。
「とくに俺としては何の問題もありません。御領主さまとお嬢様の思うとおりにしてください」
「そうか、すまないね。本当にね、なんというか、フリッツがシャーロットに毒を飲ませて殺そうとしていただなんて、思ってもみなかったよ。恐ろしい事だ」
フリッツは、ボナンザ一家に毒薬を融通してもらっていたようなのだが、そこらへんはどうするのだろう。
ボナンザ一家がバーモント子爵家に取り込まれたから、チャラになる感じかな。
まあ、イカサマ博打ではめられたんだろうからなあ。
「娘は君の料理に心酔して、王国中に広めると野望を燃やしているね。私も同じ気持ちだ、リュージの料理は革命的な物だから、私も協力を惜しまないよ。頑張ってくれたまえ」
「はいっ、頑張りますっ」
俺は勢い良く頭を下げた。
何だか運が廻ってきた感じだね。
女神さま、ありがとうございます。
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