第24話 お嬢様マヨネーズに感激する
さて、サブキッチンのマヨネーズ生産に目処が立ったので、メインキッチンに戻る。
「ぐああ、乳化しねえぞ、これ」
「おお、リュウジ見てくれ」
「くそう、手が、手が」
ああ、メインキッチンではちゃんと作り方を教えてなかったから、酷い事になってるな。
とはいえ、メインで必要な量は、御領主さまとお嬢様の分なので、そんなでもない。
ボール一杯あれば問題ない。
まだまだ間に合う時間だ。
「最後の油を入れるのをちょっとずつにしてください。乳化できなかったのは捨ててくださいね」
「もったい無いが仕方が無いか」
一応みんな新型泡立て器を持っているな。
ケハンさんの持っていたボールと泡立て器を借りてホイップを始める。
「ああ、そんなちょっとずつか」
「沢山入れると乳化しませんよ」
「おお、泡立て器だとすごく早く出来るな」
「ちょっと見ててくれ、こうか」
「そうそう、上手ですよ、ケハンさん」
とりあえず今日の所は俺が作ったマヨネーズを御領主さまとお嬢様のお皿に盛った。
野菜はチェシャ葉を引いたところに、飾り切りをしたズッキーニ、赤カブ、人参、スダラマッシュを並べた。
「わあ、今日も綺麗ね、お嬢様好きそうだわ」
「よろしくおねがいします」
「わかったわ」
配膳メイドさんがお皿を運んで行った。
彼女らは容姿で選ばれているから、メイドさんの中でも綺麗なんだよねえ。
メインスタッフは肉料理を作ったり、マヨネーズを作ってスダラマッシュに掛けて喰ったりしていた。
ととととと、と誰かが廊下を走ってきてキッチンのドアを開けた。
「これはリュウジさんのお料理ね!」
シャーロッテお嬢様であった。
満面の笑みだな。
「は、はい、マヨネーズと申します」
「マヨネーズ、素晴らしいわ、お野菜にもスダラマッシュにも良く合って素晴らしいお味になりますわね」
「あ、ありがとうございます」
わざわざメインキッチンまで褒めにきてくれたのか。
なんだか嬉しいなあ。
「おかわりをください」
「はい、わかりました」
俺は野菜を飾り切りして、お皿に盛り付けて、マヨネーズをちゃっちゃとホイップして飾り付けた。
「まあ、不思議な作り方ね」
「あはは、お食事をお楽しみくださいませ」
「はい、ありがとうございます。私、リュージさんの料理だって一口食べて解りましたの、なんだかオーラがちがいますわよね、また新しい料理を作ってくださいね」
「はい、頑張ります」
お嬢様はおかわりを配膳メイドさんに持たせてホールに帰っていった。
大好評だったな。
うんうん。
なによりだ。
「おい、てめえ、ちょっと気に入られたからって、良い気になってんじゃねえぞ」
「ああ、なってませんよ、大丈夫です」
フリッツさまが俺の胸ぐらを掴んで凄んで来たぞ。
俺が褒められたんで悔しかったのだろうね。
他の料理人も目をそらしたり、マヨネーズをひねったりして関わらないようにしているな。
いろいろと困った人だよなあ。
とりあえず、戻って来た食器を丁寧に洗った。
スダラマッシュとマヨネーズ以外の俺の仕事は洗い方だからな。
ニコニコした家令さんが俺を呼びに来た。
「旦那様がお呼びです、リュージくん」
「は、はあ」
「マヨネーズのレシピを買い上げてくれるそうですよ」
「あ、ありがとうございますっ」
ドカーン、と、寸胴鍋がひっくり返った。
フリッツさまが蹴飛ばしたのだ。
家令さんはチラリとそちらを見て、黙った。
あんまり触りたくなさそうね。
俺は家令さんに案内されて、御領主さまの執務室に入った。
シャーロッテお嬢様もいるぞ。
「おお、リュウジ良く来た、今回のマヨネーズも素晴らしい料理だった。約束通り、レシピを買い取ろう」
「ありがとうございます」
俺はペコペコと頭を下げた。
金貨がずっしり入った革袋を貰った。
袋には三十ドナンと書いてあるから、この前から十枚多いな。
よし、これを元手に、また料理を開発しよう。
うん。
「スダラマッシュ、マヨネーズと、良い料理が揃ったな」
「野菜料理というのがすばらしいわ、お父様。美味しくお野菜を食べられると、食糧事情が良くなりましてよ」
「まったくだ、これからも素晴らしい料理を開発したまえ、リュウジよ」
「はは、かしこまりました」
テンプレ通りに行くと、次は鶏の唐揚げなんだけど、揚げ物はなあ。
なかなかなあ。
あと、肉料理はフリッツさまのテリトリーだから、怒らすかもしれないしな。
野菜とかでもう一品無いかな。
ちょっと考えるか。
俺は金貨袋を受け取り、そして、御領主さまに返した。
「申し訳ありませんが、このお金は領館で保管していてくれませんか、後日取りにまいりますので」
「そ、そうか、あ、うむ、そうか、家まで騎士を付けてやっても良いが」
というか、実家に置いとくのもなあ、色々怖いんだよな。
この世界、金融がまだだから銀行が無いんだよね。
ご褒美は嬉しいが、色々と怖いぜ。
「では、私の責任で保管して置きましょう、いいですね、リュージくん」
「はい、家令さん、おねがいします」
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