第23話 マヨネーズ造り悲喜交々
「「ぬがーっ!!」」
「「ぬが~~!!」」
現在サブキッチンで絶賛マヨネーズの増産中である。
キッチンメイドさんが総出で肉木串を束ねた簡易泡立て器でマヨネーズをシャカシャカ泡立て中だ。
「リュージ、駄目なのか、一気に油を入れてひねったら駄目なのか」
「駄目です、ちょっとずつでないとちゃんと乳化しません」
「凄く美味しい料理だが、作るのが辛え」
「腕がだるくなってきたよ」
キッチンメイドさんは文句が多くていけないな。
というか、まあ、小兄ちゃんに泡立て器を早く作って貰わないと、みんな過労死してしまうな。
サブキッチンでは領館にいるスタッフ全員の食事を作るので量が多いんだな。
大変である。
「なんとか夕食にはマヨネーズを付けられるな」
「しかし辛え、リュージなんとかしろ」
「鍛冶屋さんに専用泡立て器を発注中だよ」
「「おお!!」」
とはいえ、領館の中で使う泡立て器も調達しとかないとな。
これは流行るし、お客さんにも出しまくるし、今年の領祭でも振る舞われるだろうな。
俺はサブキッチンを出て、家令さんの執務室を再び訪れた。
「家令さん、マヨネーズ用の調理器具を発注したいのですが」
「おお、本当かいリュージくん、この料理はスダラマッシュ並のヒットをするだろうから、専用調理器があると良いね」
「自分の分は村で兄に頼んで作り中なんですが、領館の調理場にも必要ですよね」
「そうだね、付いて来なさい」
家令さんは、領館の裏手の方に俺を連れていった。
ガッチンガッチン音がするな。
領館は鍛冶場もあるのか。
ずんぐりした男がガンガン熱した鉄を叩いていた。
「おいゴメス、仕事だ」
「おおう、家令さん、どうしたい? スコップでも足りなくなったか?」
「調理器具が大量に必要になったのだ、作ってくれ」
「調理器具? 蒸し器とかいう、あの変なザルの追加かい?」
「いや、リュージくん、頼むよ」
「はい、初めまして、リュージといいます」
「おお、スダラマッシュのリュージじゃないか、あれは美味えよな」
「ありがとうございます、で、新しい料理を開発したんですが、受けが良いので大量に作られそうなんですよ、それで専用器具を作って貰おうかと思って」
「ほうほう、どんなのだ?」
「針金で作った丸い泡立て器で、持ち手が付いている物です」
俺は羊皮紙にペンで簡単に泡立て器の図解をした。
「針金かあ、鋼だと錆びるが、銅だと柔いかな」
本当はメッキかステンレスで錆びない方が良いんだけど、難しいかもなあ。
ミスリルで作りたい所だが、無理だろう。
「ちょっくら待ってろ」
ゴメスさんは針金をくるくると巻いて取っ手を付けて泡立て器っぽい物を作ってくれた。
おお、手早い。
「これを使って、不具合があれば教えろ、直すぜ」
「ありがとうございます、さっそく使って見ます、あと、五六丁お願いしますね」
「解った解った、まあ、使って見ろ」
「はい」
思いの他簡単に作ってくれたな。
見た目は前世の泡立て器そっくりだ。
問題は、塩と酢に晒されるから錆が気になるな。
さっそく使って問題点を洗いだそう。
サブキッチンに戻ると、皆涙目でシャカシャカやっていた。
「リュージ手伝えー」
「人数分は出来たんじゃないの?」
「ちょっと計算してみたら足りなかった」
領館のスタッフは多いからね。
「おお、それが新型調理器か!」
「なんだか膨らんでいて良くひねれそうだぞ」
「ちょっと行って作ってもらいましたよ、使いながら問題点を出して改良したいそうです」
「「さすがゴメス、さすゴメ!!」」
とりあえず、下働きの子が苦戦していたボールをひったくって新型泡立て器で攪拌してみた。
おお。
おおおお!!
良く泡立つな!
肉木串の束ねた奴よりはずっと能率的だ。
あっというまに乳化したぞ。
まあ、前世のハンドミキサーと比べるべくもないけど、意外に使いやすい。
調理器具って、やっぱりデザインなんだよな。
同じ形なら、同じぐらいの能率は保証されているかんじだ。
「わあ、私もやる私もやる」
「新型をよこせ、新型を!」
逆上した二人組に新型泡立て器は分捕られてしまった。
「ぎゃあ、使いやすい、すばらしい」
「うわあ、すぐ泡立つ、すげえすげえ」
大好評だが、俺の道具が無くなってしまった。
と思ったらボフダナさんができたての泡立て器を五丁持って来てくれた。
全員に行き渡るぞ。
「メインキッチンにも五本卸してきたよ」
「ありがとうございます、手早いですねえ」
「ゴメスは鍛冶屋として優秀だからね、いつもは剣を打ったり盾を作ったりしてんだよ」
ああ、武装の方の鍛冶屋さんでしたか。
それでも領館の必要な金物類を生産してくれているんだな。
蒸し器も良いの作って貰ったしな。
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