第22話 マヨネーズ実作
朝一番にボフダナさんに挨拶をしてパリッとした洗い立てコック着を貰って着替える。
家令さんに相談があるのだがと聞くと、執務室を教えてくれた。
ノックして家令室に入ると、家令さんがにこやかに対応してくれた。
「なにかな、リュージ君」
「新しい料理を作ったのですが、メインキッチンで出してもよろしいですか?」
「いきなり御領主さまとお嬢様に出すのは難だね、お昼に私とメイド長に食べさせてくれませんか」
「はい、それでお願いします」
「どんな新しい料理なんでしょうね、お昼が楽しみです」
「あ、それは……」
「ほほほ、お昼までの楽しみにさせてくださいね、リュージさん」
そう言うと家令さんは立ち上がり、一緒にメインキッチンへと行ってくれた。
「フリッツさま、リュージくんが新作の料理を作るそうなので、許可をお願いします」
「あ、ああ、そうなのか、新作か、何料理だ?」
「野菜料理のソースですよ、フリッツさま」
それを聞くとフリッツさまは安心した様子で手を振った。
「野菜料理なんか勝手に作れ、昼のスダラマッシュも作れるよな」
「はい、両方作れますよ」
「お昼に、私と、メイド長、そしてフリッツさまが食べて安全を確かめたいと思います、それで良いですね」
「わ、解った、それでいい」
「ではよろしくお願いいたします」
家令さんはフリッツさまに向けて深々と頭を下げた。
「材料をいただけますか」
「おい、ヨハン、出してやれ」
「はい」
ヨハンさんは筋骨隆々のフリッツさまの一の子分って感じの人だな。
ヨハンさんに頼んで、オリーブオイル、卵、お酢、塩を用意してもらった。
他の料理人さんも興味津々だな。
まだ小兄ちゃんに泡立て器を作ってもらって無いので、肉木串を束ねて使った。
卵と酢と塩を混ぜて、そこにオリーブオイルを少量。
ほんの少量でいい、あまり落とすと卵と油が分離して、クリーム状にならないのだ。
シャコシャコ泡立てる、泡立てる、泡立てる。
ああ、大変だなあ。
でも肉木串の束の方が、家の適当な木片の集まりよりも泡立ちが良い気がする。
歯車を使ったハンドミキサーが欲しいが、無理だろうなあ。
途中、スダラ芋も蒸かして、マッシュしておく。
ズッキーニとか赤カブを飾り切り。
あとはチェシャ菜っ葉だな。
何とか必死になってお昼前にボール一杯のマヨネーズをひねりだした。
「というか、大変な料理だな」
「道具が揃ってくれば、もう少し楽になりそうですよ」
俺のマヨネーズひねりを見ていたヨハンさんが呆れたように言った。
よし、とりあえず、三皿、スダラマッシュと野菜類、そしてマヨネーズをとろりと掛ける。
「変な物作ったね、持って行くわ」
配膳メイドさんに、家令さん行きのお皿と、ボフダナさん行きのお皿を任せた。
フリッツさま用のお皿を彼の前に置く。
「スダラマッシュじゃねえのか、代わりばえのしねえ……、このソースか……」
フリッツさまは匙で一掬いマヨネーズを取って口に含んだ。
「!!」
彼は急いでズッキーニを口に放り込んだ。
「ま、マジか、なんだこれっ!!」
赤カブ、スダラマッシュにマヨネーズを掛け、ガツガツと食べた。
「そ、そんなに美味えんですか、フリッツさま」
「あ、ああ、いや、只の野菜だけど、えー? なんでこんなに後引くんだ? なんだこれなんだこれ」
フリッツさまは人品はよろしくないが、ちゃんとした料理人の舌ではあるので、美味い不味いははっきりと解るようだ。
「リュージ!! 作り方は!!」
「酢と卵黄と塩にオリーブオイルを垂らして死ぬほど泡立てます」
「それだけ、それだけで、こんなクリーミーな、ええ? マジかこれ?」
ダンダンダンと足音を鳴らして、お皿を持った家令さんとボフダナさんが飛びこんで来た。
「なんですかこれは!」
「なによ、これは!」
「マヨネーズソースです」
「「「マヨネーズ……」」」
部屋の他の料理人さんも興味津々であった。
「これは、晩餐に必ず出さねばなりませんね、御領主さまも、お嬢様も気に入る事うけあいです」
「この歳になるまで、野菜なんて美味いと思った事はなかったんだけどねえ、このソースを掛けた野菜が、ご馳走に変わるね、これは凄いよリュージ」
「スダラマッシュに掛けるともっと凄いな、どうしてこんなものを農民のお前が思いつけるんだよっ!! おかしいだろうっ!!」
「あはは、お褒め頂き嬉しく思いますよ」
とりあえず、マヨネーズを作り方を説明しながら増産し、メインキッチンの他の料理人さんにも振る舞った。
もの凄い大好評であった。
さすがは転生グルメ物の定番、マヨネーズだ、効果は抜群だ。
サブキッチンのファビアさんとミレーナさんも騒ぎを聞きつけて覗きに来た。
「リュージ、新作料理か」
「もりあがってんな」
「おお、おまえらも喰ってみろ」
ヨハンさんが、ラディッシュにマヨネーズを掛けた物を二人に食べさせた。
「「!!」」
「あんじゃー、こらーっ!!」
「うわうわ、食べおわるのがもったい無い、ヨハン、もっとくれ」
「駄目だ、べらぼうめー、メインキッチンの特産よー」
「ひい、作り方作り方!! 騎士共の晩ご飯に出してえっ!」
「教えて良いですか、家令さん」
「そうですね、騎士や領館スタッフにも、この異次元の美味しさを伝えてあげましょう。リュージくんサブキッチンに教えてきなさい」
「はいっ」
「「うおおお、リュージリュージ」」
二人のキッチンメイドさんに抱きつかれてもみくちゃにされたぞ。
うははは、さすがはマヨネーズだ。
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