第20話 マヨネーズ無双
晩ご飯までに、またボール一杯のマヨネーズを作り、スダラマッシュ、ズッキーニ、赤カブ、チェシャ葉と共に置いていたのだが、家族の大好評により瞬殺であった。
あとは一日おいて、腹痛等が無ければ完成としていいかもしれない。
オリーブオイルより、サラダオイルが欲しいのだが、菜の花とかここら辺ではやって無いよなあ。
食用油の需要はありそうなんだけど、ここいらへんだと南で作られるオリーブオイル一択であるな。
「これはいいなあ、もう無いのかリュージ」
「無いぞ、小兄ちゃん、作るのが偉く大変なんだ」
そういや小兄ちゃんは鍛冶屋見習いだなあ。
泡立て器を作って貰えないものだろうか。
「兄ちゃん、針金を使ってこういう感じの物を作れないか?」
お皿にマヨネーズの残りで泡立て器の概念図を書いてみた。
「単純な物だから出来なくは無いか……」
「あるとマヨネーズ生産がはかどるんだ」
「「「「作れ!!」」」」
一家中から凄い圧が小兄ちゃんに掛かった。
「お、おう……」
最近の小兄ちゃんは、俺のアイデアの背負い棒の生産で働いている。
マヨネーズが流行ると泡立て器生産で、また忙しくなるだろう。
一家に器用な兄ちゃんが一人いると便利だな。
「しかしこれは美味しいな、毎日食べたいのだが」
「よしとくれ、材料に油と卵と塩が要るんだよ、リュージの実験でもなければ高すぎで作れやしないさ」
「そうなのかー、惜しいなあ」
「流行ればだんだんと材料が揃ってきて、安くなるかもしれない」
「まあ、お祭りの料理には出るだろうよ」
「そうかー」
「また作ってくれよ、リュージ」
「ああ、また何かの時にな」
食事は家族の喜びに直結しているから、すぐに実感できていいなあ。
この好評感だと、御領主さまも、シャーロッテさまもお好きな味であろうね。
毎食出したり、お客様に出されたりしそうだ。
うんうん。
というか、この世界の奴らはみんな肉を食い過ぎなので、野菜がご馳走になるマヨネーズは丁度良いと思うな。
さすが転生グルメ物の定番になるメニューだぜ。
と、そう思った。
実りのあるお休みを経て、木の日からまた出勤である。
今日家に帰って家族が倒れて無かったら、領館でマヨネーズを作ってみるかな。
スダラマッシュに野菜と添えれば喜ばれるだろう。
「おはようございまーす」
俺が挨拶してもメインキッチンの料理人は返事もしない。
まあ、のっぽさんとか、ケハンさんなんかはこっそり黙礼してくれるけどね。
コック着に着替えて、作業開始だ。
というか、朝ご飯にはスダラマッシュ出ないから、基本的に洗い物だな。
食器とシルバーを綺麗に洗って、戸棚にしまう。
これらは宝物でもあるので、ちゅろまかしたら偉い事になるらしい。
料理人が時々、これで首になるっぽい。
つうわけなので、フリッツさまが俺を首にしたいときは食器やシルバー紛失の疑いを掛ければいいな。
俺様の運命は風前の灯火と言えよう。
そうならないように重々気を付けないといけないし、そういう事をさせないように気配りしないと駄目だな。
かといって新作メニューの開発はしなきゃだし、目立たないでいるのも無理という物だ。
世間というのはいろいろと問題があってままならない物なのだなあ。
お昼のスダラマッシュを製作し、洗い物を仕上げて昼休みだ。
控え室に下がる料理人さんたちに黙礼して、サブキッチンへと顔を出す。
サブキッチンはいつも通り大忙しで、顔を出したら喜ばれ、軽食を与えられて働かされた。
「リュージ、休日は休めたか?」
「来週の休日は領街でデートしようぜ」
「いやあ、金がなくてさ」
「んにゃろう、レシピの金はよう」
「けちけちすんなよう」
「あれらは父ちゃんに渡したよ」
「「ぎゃー」」
ファビアさんとミレーヌさんは陽気で阿呆で良いね。
下働きの子供メイドも良く懐いているし。
「最近、飯が少ないんだよ、もっと増やしてくれよう」
「何言ってんだー、騎士共が食い過ぎなんだっ」
「めちゃくちゃ喰うな、節制しやがれい」
食器を返しに来た当番の騎士たちにも二人は遠慮がないな。
ポンポンやり返していくね。
そんな戦争状態も、一時半を過ぎると終わり、三時までは静かな物だ。
「領館の水は結構美味しいね」
「ああ、ここは昔から良い水の出る井戸があって、そこに領館が建てられたんだぜ」
「水が美味いのは大事だしな」
なるほどね、水の精霊でも住み着いているのだろうな。
わりとこの手のファンタジー要素の少ない世界なんだけど、まったく無い訳ではない。
森の奥には魔物がいるし、たまに村の子供が食われて狩人が依頼されて退治したりする。
冒険者ギルドなる組織は、この世界には無い。
そんなに細かい賃仕事が沢山転がっている世界では無いので、魔物を倒すのは騎士団か、狩人で、冒険者とかのヤクザな身分の人間の用は無いわけさ。
身分が無い人間はこの世界には存在しにくい。
一応ジプシーのような漂泊の一団がいないわけではないけど、わりと迫害されがちだね。
土地や都市に市民権が無い人間は生きずらいのさ。
川縁に住む流民とかね。
まったく本格ファンタジーに救いはねえのか。
というかんじだ。
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