#3-21.小さくて大きな贈り物
【まじらぼ 前回までは】
ソータの罠にはまり、歩く死人団は一網打尽。誘拐されたブライズ氏は無事、保護された──
1
歩く死人団は全員逮捕され、誘拐されていたニューロックの二代目ブライズは無事、救出された。
「ブライズさん、無事にお家に帰れて良かったですね」
サミちゃんが言う。
魔捜研のラウンジである。
テーブルにはお昼だというのに酒とご馳走が並べられている。
事件解決と人質の無事解放、そのお祝いだと、サミちゃんが用意したのだ。
メインはハーブたっぷりのソーセージ。でも存在感があるのはテーブル中央に置かれたコンロと鍋だ。
小さなコンロの中の炎はトカゲみたいな形をしていて、鍋の中にはチーズがふつふつと煮え、ガーリックの香りがただよう。
これチーズフォンデュか。
こっちの世界にもあるんだな。
鍋のそばには一口サイズに切ったバゲットふうのパンや根菜、芋がある。
それとオリーブオイルとハーブのドレッシングをかけた季節の野菜サラダ。あとベリーのジャムがあるけど、これはパンにぬってデザートかな。
「事件解決、めでたいのう」
のじゃ子さんの音頭で乾杯する。
彼女とクロエさんはワイン。オレたちはノンアルコールのエールだ。
「めでたいって言えばよ、エアリー夫人だ」
そして当然のようにいるペイジ。
すっかり魔捜研の一員だな。
「具合が悪そうってんで医者に診せたら、おめでただったンだ」
おめでた…ああ、妊娠か。
「夫人付きの侍女とかに話を聞くと、夫婦仲はとても良いらしくてな。旦那も大喜びしてたそうだ」
今頃そんな情報出て来るのかよ。
でも、夫人が死人団の内通者じゃなくて、オレはほっとした。
「一番あやしいのは夫人だ、なんて。騎士団ってほんと的外れだな」
「まったくだぜ」
皮肉も聞こえてないようで、ペイジはソーセージをかじっている。
「内通者は支配人のパレルだったそうじゃの」
のじゃ子さんが言う。
「昔、賭博にのめり込んで、ヤバいスジに借金したことがあったんだと」
ペイジがチーズフォンデュをふーふーしながら言う。
「借金はニューロックの先代が肩代わりして解決したが、その時にパレルは裏社会と接点が出来たらしいぜ」
「死人団のウエストとそこでつながったのか」
オレもチーズフォンデュを、まずはカブを試してみる。
「ウエストは元々ガラン一家お抱えのネクロマンサーだったんだ」
「ガラン一家?」
「表向きは運輸業だが、ウラじゃ密輸、恐喝、コロシとなんでもアリの犯罪ファミリーだ。ウエストは死体の始末とか死因の誤魔化しとかをやっていた」
ソーセージをもぐもぐしながらペイジが言う。
「そのガラン一家が5年くらい前に急に大人しくなったんだ。幹部が何人か死んだり、逮捕されたりして、カタギの仕事だけやるようになった。ボスが代わったんだろうって噂された」
今度はパンをフォンデュに付けて食べるペイジ。
「カタギになったのがガラン運輸だったわけか」
そういえば、犬のイェールがにおいを見失った船着き場。あそこにはガラン運輸の小舟がいくつもつないであった。運送屋のトラック駐車場みいなものだ。
イェールはしっかり手掛かりを見つけていんだ。あの場でオレが気づいていれば、事件解決はもっと早かったかもしれないな。
「ガラン一家が大人しくなったのと同じ頃、歩く死人団がその活動をはじめた。ウエストがガラン一家を乗っ取ってたんだ」
「表向きはカタギになって、ウラでは慎重に悪事を働いていた、というわけね」
クロエさんが言う。
「最新の魔法技術による葬儀屋っていうのは、ウエストがネクロマンサーであることを隠すためか」
「騎士団は、ゾンビ使い=ネクロマンサーという頭じゃからな。いや、わしらもはじめは騙されかけたのう」
ワインを一口してのじゃ子さんが言う。
「ソータさんがいなければ、逮捕できなかったですね」
「いや、そんな」
サミちゃんに微笑んで言われ、照れてしまう。
「でも、これでまた、ネクロマンサーの評判が悪くなるわね」
ワインをあおり、クロエさんがつぶやいた。
2
そうだった。
ウエストがネクロマンサーだったことで、人々はますますネクロマンサーを嫌うようになるのかもしれない。
ウエストが悪事に手を染めた背景には、何百年も続く、ネクロマンサーへの偏見や差別、迫害があるんじゃないかとも思う。
ヤツはクロエさん──ネクロマンサーを忌み嫌い、侮蔑していた。
それは、ウエストがネクロマンサーであることを隠すためだろう。でもその裏には、自分の境遇──ネクロマンサーに生まれついたことを呪っていた、そんな思いがあったんじゃないだろうか。
「クロエさん……」
「あ、サミちゃん、ワインのおかわり」
悲しそうなサミちゃんに、クロエさんはグラスを差し出した。
「だいじょうぶよ」
サミちゃんにワインをつがれながらクロエさんは笑った。
「死は誰にでも訪れる。どれだけ嫌っていようが、身内が死ねばネクロマンサーに弔いを頼むしかない。その時、どれだけボッタクってやろうかと考えるのが快感なんだから」
「クロエのそういうとこ、好きだぜ」
「でしょう?」
ペイジとクロエさんが笑ってグラスをかちんっと合わせた。
クロエさんはしたたかだ。そしてへそ曲がりだ。
それを知っているオレは、今、彼女が言ったことが、強がりのように思えた。
そこに、
「こんにちわ」
と、訪問者がやって来た。
ラマンドさんとウィロウさんだった。
「二人してどうしたの?」
「この子を案内してきたのよ」
ウィロウさんの後ろから、小さな女の子が顔を出した。5歳か6歳くらいだ。
「ネクロマンサーのクロエさん」
ちょっと舌足らずな話し方で女の子が言った。
「あら、あなたは」
「クロエさんの知り合い?」
「お礼を言いたくて、探してました」
とてとてと女の子はクロエさんのそばに来ると、
「おばあちゃんに会わせてくれてありがとう!」
と、小さな花束を差し出した。野原で咲いていた花を摘んできたものっぽい。
「そう、ありがと」
そっけなくクロエさんはお花を受け取った。
それでも女の子は、受け取ってもらえたことがうれしかったみたいだ。
ラマンド、ウィロウ夫婦に手を引かれ、帰って行く間、何度も振り返ってクロエさんに手を振っていた。
「あの子は?」
「アタシが牢にぶち込まれる原因になった子」
サミちゃんの問いにクロエさんが肩をすくめて答えた。
クロエさんは以前、許可無く霊を呼び出したため投獄されたことがある。
それは、「死んだおばあちゃんにもう一度会いたい」という子どもの願いを叶えるためだった。今の子が、その子だったのか。
「クロエさんが牢から出てすぐ魔捜研に加わったから、あの子は会ってお礼を言うことができなかったんだね」
「わざわざ探してお花を届けるなんて、とても嬉しかったんですね」
オレとサミちゃんが言う。
「お礼なら、金貨とか持ってこいっての」
ふん、とクロエさんはオレたちに背を向けた。
そう言いながらも、クロエさんはもらった花束をとても愛おしそうに見ている。
まったく、ほんとうにクロエさんはへそ曲がりだ。
(File03 死体が歩いて脅迫状を持って来た件 おわり)
事件が解決したらみんなでお食事しないとね!
これにて まじらぼ3話(章)は終了です。
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