#3-20.大捕物
【まじらぼ 前回までは】
誘拐犯、歩く死人団を罠にはめたソータたち魔捜研。騎士団による大捕物がはじまる──
1
光の精霊魔法が照らす夜の倉庫で、騎士団と死人団の乱闘が繰り広げられている。
「このガキが!」
ガラン運輸の男がナイフを振りかざしてペイジを襲う。
「へんっ!」
ペイジが手にしたこん棒──ガードロッドがトンファー型に変形。ナイフをガードして、拳を突き出すようにガードロッドで男の鳩尾を一撃する。
男がよろめき、前屈みになる。
ペイジの手の中で、ガードロッドがくるりと回り、男の首筋を打ち据えた。
ペイジ、強い!
「神妙にしやがれ!」
捕縄を取り出し、膝をついた男をペイジがふん縛った。
他の場所でも衛士、護民兵たちがガラン運輸の作業員を制圧しつつあった。
「かかれぇ!」
ウエストが叫ぶと、ゾンビたちがこちらに向かって来た。
悪あがきか…いや、時間稼ぎだ!
ウエストが船着き場に向かって階段を下りて行く。止めようにも、オレたちには5,6体のゾンビが向かって来ている。
「こんのっ!」
ペイジが持つトンファー型のガードロッドが変形した。今度は2メートル近い長い棒になった。
長い棒をペイジは巧みに操り、ゾンビの胸を突いて後退させ、脚の間に入れて引っかけ、転倒させる。
しかし長さまで変わるとか、どうなってるんだあの棒は?
「形状記憶魔法じゃよ」
オレの心を読んだみたいにのじゃ子さんが解説する。
「護民兵の使うガードロッドは、魔力を加えることで変形するよう作られておるのじゃ。長い棒がデフォルトで、変形は短いこん棒とサイドハンドル付きの2種類しかないがの」
2種類に変形できるだけでもスゴイんだけど。
「クロエ、ペイジを手伝ってやれ。ソータは船着き場に行くのじゃ」
のじゃ子さんは言いながら、空中に光るルーン文字を描きはじめた。
「お、おう」
「はいよ」
のじゃ子さんの指示に従い、オレは船着き場へ。クロエさんは両手の指をからませ印を結んだ。
「生は仮初め、巡りしは魂魄。器は眠りに、魂魄は行くべき所へと向かえ。我、その道を示さん」
後ろでクロエさんが呪文を唱えるのが聞こえた。
次の瞬間、1体のゾンビが光に包まれ、倒れた。
これ、ウエスト葬儀社の入り口でMZ1号を機能停止させたのと同じ魔法か?
しかし確認しているヒマはない。
オレはウエストを追いかけて船着き場へと続く階段を下りていった。
ウエストはすでに小舟に乗り込んでいた。船頭のゾンビに命じて船を出させる。
「しまった!」
もうちょっと、というところでオレは間に合わなかった。
2
「残念だったな!」
船の上でウエストが汗をふきながら嘲笑う。
小舟はどんどん離れて行く。もう船着き場から10メートルほども離れてしまった。しかし──
ウエストを乗せた小舟が、がくんと大きく揺れた。
「な、なんだ?」
ウエストが不審の声を上げた直後、小舟は止まった。
「あははは!」
思わず爆笑してしまった。
小舟はロープで巻上機とつながったままだったのだ。
倉庫のほうを見ると、開け放たれた戸の向こうに、光に包まれた巻上機とそのそばに立つ三角帽子の小さな人影が見えた。
のじゃ子さんだ。のじゃ子さんが巻上機を魔法で回している。
それはもうすごい勢いで回している。
ウエストを乗せた小舟がものすごい勢いで船着き場に戻ってくる。ウエストは船縁に必死にしがみつくことしかできない。でもそれもごく短い間だけだった。
ものすごい勢いで巻き戻された小舟は船着き場に激突、バラバラになった。
「わぁっ!」
悲鳴を上げてウエストが川に放り出される。
一度沈んだがすぐに水面に顔を出した。
「た、助け…助けて!」
水面に浮かび上がったウエストがもがいている。
「あっ!」
オレは思わず声を上げてしまった。
ウエストの顔に異変が起きていた。
顔の表面が溶け、下から別の色をした肌がのぞいている。
ウエストの、不自然に血色のいい赤ら顔は化粧だったんだ。
「お前、ネクロマンサーだったのか!」
化粧が落ちたウエストの肌は、ネクロマンサー特有の、青みがかった灰色をしていた。
──この後、
歩く死人団は全員逮捕され、倉庫に監禁されていたブライズ氏は無事、保護された。
〈都〉を騒がせた大富豪誘拐事件はここに解決した。
あともうちょっとだけ続くんですよ^^
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