表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/57

#3-19.裏切り、裏取引、裏をかく

【まじらぼ 前回までは】

ゾンビMZ1号が導いたのはウエスト葬儀社。しかし誘拐されたブライズ氏はもちろん、ゾンビの1体さえなかった。悔しがるソータだったが──



     1



 ニューロックの本店は、大きな店が並ぶサンブリッジ通りにある。


 この通りの北の端には大きな橋が架かっている。長さ50メートルくらいの橋は「サンブリッジ」と言う。通りの名は、この橋の名からきている。


 大きな橋があるということは大きな川があるということだ。


 ニューロックの本店をはじめ、サンブリッジ通りにある商店の裏はこの大きな川に面していて、設けた船着き場で荷物の積み下ろしを行っている。

 荷馬車での搬入もあるが、大量の荷物は船着き場を使うのが基本だ。


 ──深夜。


 サンブリッジ通りの店のすべてが閉店し、灯りを落としている。

 表通りには光魔法を点す街灯があるが、店の裏、川に面した場所には灯りはほとんどなく、川面も店の裏側も、真っ暗な闇に沈んでいる。


 その闇の中に、小さな光が点った。

 ニューロック本店の裏にある船着き場に、薄いオレンジ色のランプが点っている。


 そのランプを目指し、対岸にある倉庫から小舟が出た。


 小舟と言っても、10人くらいは乗れるサイズだ。

 だが乗っているのは一人だけだった。


 船尾でオールを取る船頭。そのオールさばきは、のろのろとしてぎこちないが、一瞬も休むことはない。


 ゾンビだ。あの船頭はゾンビなんだ。


 やがて、死人が操る小舟はニューロックの船着き場に着いた。


 船着き場には支配人のパレル氏と若い従業員が待機していて、支配人の指揮で大きなチェスト──箱を小舟に積んでゆく。


 身代金が入っている箱だ。


 箱にはリフトの魔法が仕込まれていて、何十キロもあるそれを従業員たちが軽々と持ち上げ、船に積んで行く。


 箱は全部で13コあったが、あっと言う間に積み終わった。

 ちょうどそこで軽量化の魔法が切れたらしく、船の吃水が目に見えて下がった。


 支配人がランプを大きく横に振った。積み込み終了の合図だろう。

 合図の直後、身代金を積んだ船が、元来たほうへと戻っていった。


 ゾンビの船頭は漕いでいない。

 なのに小舟は対岸へと戻って行く。それも驚くほどの早さでだ。


 よく見ると、船尾に太いロープがくくりつけてある。ロープの先は、対岸の倉庫へと続いていた。


 薄暗い倉庫の中では、大きな巻上機があり、それを十数体の木の人形が動かし、ロープを巻き取っていた。


 ニューロックのゴーレムだ。


 頭のない紡績用、一本足の織布用、脚のない縫製用…それら木のゴーレムたちが身体を床に固定され、巻上機を回している。


 ロープはみるみる巻き取られ、身代金を乗せた小舟は倉庫の船着き場へとやって来た。


「やめ」


 薄暗い倉庫。その中の、見通せない濃い闇の中から発せられた命令に、ゴーレムたちは動きを止めた。

 その闇の中から、屈強な男たちが現れた。


 ガラン運輸の作業員たちだ。


 作業員たちは小舟を接岸させていると、倉庫の外に駐めてあった大きな馬車から、5,6体のゾンビが下りて来た。


 ゾンビたちは小舟から身代金の詰まった箱を陸揚げしてゆく。ゾンビの怪力で13コの箱はあっと言う間に運び上げられた。


 倉庫の中から、赤ら顔の男──ウエストが現れた。


「やったぞ」


 赤い顔をゆがめ、ウエストがニンマリと笑った。


 もういいだろう。


「そこまでだ!」


 オレは叫んだ。



     2



 ぎょっとして立ちすくむウエスト。


 頭上に、鬼火のような光の精霊がいくつも現れ、辺りを昼間のように明るくする。


 建物の陰から密かに抱囲していた騎士、衛士、護民兵たちが姿を現す。その数50人以上。


「先に言うなよ! アタイが言いたかったのに」

「早い者勝ちだ」


 肩をぶつけて抗議するペイジを軽くいなす。


「き、ききき貴様! どうしてここに?」


 慌てふためくウエスト。


「それは──」

「てめぇらごとき出し抜くのなんざワケねぇんだよ! 大人しく縛につけ!」

「ちょ、ペイジ!」


 これからオレが名探偵よろしく種明かししようと思ったのに、遮りやがって!


「ええい! やっちまえ!」


 そしてウエストが叫び、ガラン運輸のマッチョたちが、うぉおおー! と雄叫びを上げて向かって来た。破れかぶれの抵抗だ。


 たちまちはじまる大乱闘。


 あ~あ、オレの見せ場はなくなってしまったよ。


「キメようと思ってたのに残念だったわね」

「自慢するほど大そうな計略でもなかろうが」


 一緒に来ていたクロエさん、のじゃ子さんが言う。


 それは…その通りなんだけど……。



     ×   ×   ×



 昨日、MZ1号で死人団のアジトを捜索している内、オレとクロエさんは無縁墓地に出た。

 そこからあらぬほうへ歩き出したMZ1号を追いかけているうち、ウエスト葬儀社を見つけたのだ。


 クルミの木。

 出入りするガラン運輸の男たち。

 そして葬儀屋。


 葬儀屋なら、墓に埋める前に死体をちょろまかすなんて簡単だ。

 2度目の脅迫状を持って来たゾンビに土が付いてなかったのは、埋葬する前の死体をゾンビにしたからだ。


 これらの状況証拠から、オレたちはウエスト葬儀社が死人団のアジトだとにらんだ。


 で、ペイジやのじゃ子さんと相談して、罠を仕掛けたのだ。


 昨日の朝、ニューロックの屋敷に行って、


「死人団のゾンビを操ってアジトに案内させる」


 と、言ったのは、ニューロックの関係者の中にいる内通者に伝えるためだった。


 エアリー夫人、パレル支配人、あるいは他の人間か。

 誰が裏切り者かはわからないけど、死人団に内通しているなら、動きがあるだろうと考えたんだ。


 案の定、オレたちが屋敷を去ってすぐにウエスト葬儀社にメールバードが届き、ウエストたちは大慌ててで動き出した。

 監禁していたブライズ氏、そしてゾンビたちを川沿いの倉庫へと移したのだ。

 その一部始終をハッチとハンナの老ドワーフ夫婦が見ているとも知らずに。


 オレとクロエさん、ペイジの三人がウエスト葬儀社に行ったのは、その後だ。

 ヤツらに工作する時間を与えるため、わざと時間をかけてアジトに到着した。

 もちろんオレが悔しがって地面を蹴ったのは演技だ。


 ちなみに、機能停止したMZ1号は、クロエさんが再びゾンビ化して回収したぞ。

 事件が片付いたら、ちゃんと葬ってやるためにね。



はい、主人公がしかけた罠でした^^

次回はアクション回そしてすべての決着が着く最終局面です。

乞うご期待!


ここまでお読みいただきありがとうございます。

よろしければブクマ、評価、リアクション、感想、レビューなどをお願いします。

質問やツッコミも大歓迎ですよ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ