#3-15.ウォーキングデッド Day2
【まじらぼ 前回までは】
歩く死人団が脅迫状を持たせたゾンビを、クロエさんとのじゃ子さんがハッキング。アジトへ案内させようとする。しかしゾンビMZ1号は不具合か、街を迷走するだけだった──
1
──次の朝。
オレとクロエさんは、MZ1号を連れてニューロック屋敷の前にやって来た。
死人団のアジトに案内させるためである。
このゾンビは、ニューロックの屋敷にはじめて脅迫状を届けたメッセンジャーゾンビだ。だから、ここをスタート地点にして、歩いて来た道を逆に辿らせるようというわけだ。
それともう一つ。今日は別の目的があるのだが──
「ソータ」
クロエさんが屋敷の中を指差した。
見れば屋敷の玄関前に馬車があり、エアリー夫人とパレル支配人もいる。
夫人は顔色が悪い。
「あれって身代金を積んでいるんじゃない?」
「まさか!」
オレたちは馬車のほうへと駆け寄った。
「死人団からまたメッセージが来たんですか?」
「あなたたちは!」
エアリー夫人に尋ねると、
「ひ、引っ込んでいたまえ!」
パレル支配人が割って入った。
「まさかこれから取引を?」
「帰って下さい! あなた方がここにいては旦那さまの命が!」
青い顔をしたエアリー夫人が叫ぶ。
そのリスクはある。でも、今、身代金を渡されるとマズい。
「ご主人を助ける目途がついたんです」
「え?」
夫人は、まじまじとオレを見た。
「これから取引が行われるのか、違うのか、それだけでも教えてくれませんか?」
「いけません! 奥さま」
またしても支配人が割って入った。
「前回、彼らを信じてどうなりました? 助ける目途だなんて、手柄を上げたいだけのウソに決まっています!」
「助ける目途というのは?」
しかし夫人は、支配人を制し、尋ねた。
「これよ」
クロエさんがMZ1号のフードを取った。
半分腐りかけたゾンビの顔があらわになり、夫人と支配人が、ぎゃあ! と悲鳴を上げる。
クロエさんって、いい大人なのに、こういうイタズラが好きだよな。
「脅迫状を届けに来たゾンビよ。こいつをアタシが操り、死人団のアジトに案内させようってわけ」
そして、得意げに語る。
「そんなことが?」
夫人と支配人が息を呑む。しかし、夫人はすぐに、
「余計なことはしないで下さい!」
と、声を上げた。
「そ、そうだ! 死人団に見られたら旦那さまの命に関わる。帰って下さい!」
続いて支配人のパレル氏が怒鳴る。
「捜査は旦那さまが無事戻ってきてからにして下さい! 帰って下さい!」
夫人と支配人は聞く耳持たないという雰囲気に戻った。
「退散した方がよさそうね」
「そうだね」
クロエさんに促され、帰りかけて、ふとオレは気になった。
「今回、メッセージを届けたゾンビはどこです? 回収して行きたいのですが」
「そんなものはありません! 出て行って!」
ヒステリックに夫人が叫び、オレたちはそれに追われるようにニューロックの屋敷を出た。
2
「今のどう思う?」
「メッセンジャーゾンビが来てないってことよね」
MZ1号にフードをかけて、お屋敷街からメインストリートへと向かう。
「次の取引の指示はまだ来てないってことじゃない?」
「ということは、取引は今すぐってわけじゃないのかな」
話していると、後ろからゴーレム馬に牽かれた馬車がやって来た。
端によって馬車を避ける。
「屋敷にあった馬車ね」
見送りながらクロエさんがつぶやく。
黒塗りの箱型馬車は客を運ぶためのものだ。
「多分、身代金は積んでないか、積んでいても1箱か2箱だろうな」
外には何の荷物もないし、客車に積んでいるとしてもスペース的に1、2コがせいぜいだろう。
「朝っぱらから身代金の受け渡しなんてしないわよ」
「オレもそう思うけど…クロエさんみたいに楽観的になれないよ」
× × ×
次にオレたちが向かったのは、運河の近くにある公園だった。
ここでペイジと待ち合わせしているのである。
「少し早いけどランチにしない?」
「そうだね。ペイジが来るのでまだ時間あるし」
というわけで、公園で時間つぶしがてらサミちゃんが作ってくれたお弁当を食べることにした。
クロエさんと並んでベンチに座り、丸パンにハムとチーズと野菜を挟んだサンドイッチを食べる。
「ゾンビのそばで平気でランチするなんて。ソータもゾンビに慣れちゃったわね」
「忘れてたのに、言わないでよ」
フードで顔を隠しているから気にしなかっただけだ。思い出したら食欲がだいぶ下がってしまった。せっかくのサミちゃんのお弁当だというのに。
「あらゴメンね。お詫びにアタシのイチゴあげるから」
と、細い指でイチゴをつまんでオレの前に出す。
ラブコメの定番、あーん、か?
「け、結構ですから」
慌てて離れたオレを見て、クロエさんがけたけた笑う。
このひと、隙あらばオレをからかうんだから。
それにしても……。
オレはニューロック邸から出て行った馬車が気になっていた。
まさか今日取引はないと思うのだけど。
「まださっきの馬車を気にしているの?」
水筒のハーブティーをカップに注いでクロエさんがオレに渡した。
「わからないことは考えてもしょうがないじゃない。それに、アタシたちは目的を果たしたんだから」
「そうだね」
クロエさんからカップを受け取り、オレはうなずいた。
──目的は果たした。
後は行動するだけだ。
──目的は果たした。
コレ、覚えておいてくださいね^^
ここまでお読みいただきありがとうございます。
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