#3-13.美味しい料理からもらったヒント
【まじらぼ 前回までは】
身代金受け渡しの失敗は歩く死人団に仕組まれたものだった。新たな手掛かりを求め、ソータとのじゃ子さんは王室お抱え猟師モロクとかわいい猟犬イェールの力を借り、においでゾンビが来た場所を探る。しかしそのにおいは船着き場で途切れていた──
1
「よう、お帰り」
ラボに戻ると、またペイジがいた。
ラウンジのソファに腰掛け、すっかりくつろいでいる。
「お前、仕事は?」
「その仕事だよ」
そう言うと、ペイジは姿勢を正した。
「前に荒らされた墓地がないか調べろって言ってたろ。一つあったぜ。最近荒らされた無縁墓地が」
「無縁墓地って?」
「弔う者がいないとか、葬式代が出せない貧民とかの墓地よ」
地下室から上がって来たクロエさんが言う。
今まで地下のモルグでメッセンジャーゾンビを調べていたのだ。
「国がそういう墓地を用意せぬと、死体が川や裏通りに捨てられるからのう」
のじゃ子さんが補足した。
やべぇな異世界。死体をその辺に捨てるとか。
……いや、オレたちの世界でも、始末に困って押し入れの中に放置してたとかいうニュースがあったっけ。
「その荒らされた無縁墓地ってのはウチの縄張りのすぐ隣、フォリーフ町だったンだよ」
「そこ、前にアタシが住んでいたとこの近くね。ほら、この前行った」
「ああ、お昼をご馳走になったクロエさんの友だちがいる」
あの近くの国営共同墓地が荒らされたのか。
「ハッチの調べだと、暴かれた墓は四つ、五つはありそうだって」
「馬車の襲撃と身代金を運ぶのに集めたってところかな」
クロエさんはそう言った後、
「そうなるとヘンね」
と、言ってソファに腰を下ろした。
「何がですか? クロエさん」
「2番目のメッセンジャーゾンビ。あれ、キレイすぎるのよ。墓から掘り出されたものにしては土とかまるで着いてないの」
「てぇことは、馬車を襲ったゾンビと、二回目に脅迫状を届けに来たゾンビは、その出所が違うってことか?」
ペイジがうなる。
「ネクロマンサーは基本、地域密着型の商売をするの。だからアシが付かないように他所の縄張りを荒らしたのかも?」
「手掛かりで、かえって手詰まりかよ」
ペイジが赤毛をかきむしった。
「そっちは?」
「イエールは優秀だったけど、ゾンビたちは船に乗って移動したみたいだ」
「そっちもダメか」
「八方塞がりじゃな」
オレたちはそろってため息をついてしまった。
2
「少し早いですけど、夕食にしませんか?」
重い雰囲気を破ったのは、サミちゃんの明るい声だった。
「ペイジさんも。良かったら食べて行ってください」
「おっ、悪いねぇ。ゴチになるよ」
とペイジが応じ、夕食となった。
「今日は、カワニシンの煮込みと、その卵のバター焼きですよ」
「今年もこの季節が来たかぁ」
クロエさんが言う。
サミちゃんが、大きな鍋から深皿に煮込みをよそってくれる。
さっき川でたくさんの釣り人を見かけたけど、あの人たちが釣っていたのはこの魚か。
「ワインビネガーで煮込んでますから、骨ごと食べられますよ」
「ありがとう、サミちゃん」
ぶつ切りにされた魚の身とセロリ、ニンジン、タマネギが入っている。味付けはハーブと塩って感じか。
うん、うまい。
味はニシンに似ているけど、ニシンほど脂は多くなくて上品な味だ。
「カワニシンが帰って来ると、5月って感じがするわね」
「卵うめぇ!」
クロエさん、ペイジがサミちゃんの料理に舌鼓を打つ。
美味しい料理は気分を上向かせてくれるな。
「帰って来るって、この魚がですか?」
「カワニシンは産卵のために生まれた川に帰って来るのじゃ」
オレの質問にのじゃ子さんが答える。
「帰巣本能ってヤツですか」
「さすがマロウド。よく知っておるな」
シャケは知ってたけど、生まれた川に帰って来る魚って他にもいるんだな。
……帰巣本能。
元の場所に…帰る?
「あっ」
ひらめいた。
「ソータさん?」
「小骨がノドに刺さったか?」
サミちゃんとのじゃ子さんが、何事かとオレを見た。
「クロエさん!」
「えっ、アタシ?」
「思いついたことがあるんですが」
オレは、自分の思いつきをクロエさんに話した。
「面白いこと考えつくわね」
「できますか?」
「難しい…けど、やってみるわ!
唇をつり上げてクロエさんが笑う。
不敵な笑みってこういうのを言うんだろうな。
頼もしいぞクロエさん!
コージーミステリーというものを最近知りました。
本作は異世界ファンタジー版のコージーミステリーと位置づけております。
暴力、グロは控えめに、お色気はラッキースケベ程度に。
そして主人公と周りの人たちとの和気あいあいな雰囲気を。
食事や日常の中でヒントを得るのもそのひとつです。
うまくできているかな?^_^;
ここまでお読みいただきありがとうございます。
よろしければブクマ、評価、リアクション、感想、レビューなどをお願いします。
質問やツッコミも大歓迎ですよ!




