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#3-10.突入! 4番倉庫

【まじらぼ 前回までは】

〈都〉で指折りの大富豪ニューロックの二代目当主ブライズを誘拐した歩く死人団。その手掛かりがつかめないまま、身代金の受け渡しのメッセージが届けられた。場所はクリークベルの4番倉庫──



     1



 ──クリークベル。

 河沿いにある倉庫の大半は、閉じてるか開いていても人気は無かった。


 オレたちが隠れている場所から4番倉庫までの距離は30メートルほどだ。


「あまり人がいないな」


 人がうろうろしているのは、身代金の受け渡し場所に指定された4番倉庫だけだ。


「仕事じまいだろう」


 ペイジが言う。


「何年か前、川下に大きな倉庫街が出来たせいで、ちっと寂れてンだよ。ここは」


 気がつけば太陽は赤く変わり始めている。

 もうじき死人団が指定した17時だ。


「人気は少ないが、こんな場所に身代金を持って来いだなんて、どういうつもりだ?」


 階段のほうから声がしたと思うと、シドの旦那がシーマンたち護民兵を5人ほど連れて上がって来た。


「魔捜研の、来てたのか」

「どうも」


 挨拶を交わすなり、


「お前さんはどう思う?」


 と、シドの旦那が聞いてきた。


「死人団が、ここを身代金の受け渡し場所に選んだ理由ですか?」

「そうだ」


 どう思うと言われても…。オレはこっちの世界に来たばかりで、ここクリークベルに来るのもはじめてなんだけど。


 考えながら窓から倉庫を見る。


 オレたちの位置から見ると手前に倉庫、その向こうに運河がある。倉庫で隠れて見えないけど、建物の向こう側は船着き場になっているっぽい。


 運河、船着き場…屋根裏にまで充満する南国から来たフルーツの香り。


 もしかしたら……。


「死人団は、ここで身代金を小舟に積み替えて、港に運ぶつもりなのかも」

「港に…ってことは」


 シドの旦那が、あっという顔になった。


「そうです。死人団は、身代金を外国に運ぶ。つまり身代金受け取りと高飛びを、同時に行うつもりなんじゃ──」

「来た!」


 オレの言葉はペイジの声に遮られた。


「身代金を乗せたニューロックの馬車が来たぜ」



     2



 人気のない倉庫街に、身代金を乗せた馬車がやって来た。


 尾行している追跡隊の姿は見えない。うまく距離を取っているようだ。


「川に人員は?」


 シドの旦那に尋ねる。


「上流、下流ともに配置ずみだ」

「え? そうなの」

「騎士団も馬鹿ではない。受け渡し場所が運河の倉庫となれば、金貨を船で運ぶことは予想が付く」


 そりゃそうだ。

 ううっ、ドヤってしまってハズい。


「だが外国にってのは盲点だった。念のため、港に人をやるよう上申しよう」


 シドの旦那は右の耳の小さなピアスに手を触れた。あれが通信石か。


「こちらシド。死人団はカネを国外に持ち出す可能性あり。港に人を送るよう要請します」


 通信石のピアス、その大きさはコメツブくらい。このサイズが通信機とか、魔法文明はすごいな。


 この間に、身代金の馬車は4番倉庫の前に着いていた。

 倉庫にいた作業員たちが馬車に歩み寄る。いずれもゴツい体格で、ランニングシャツと作業ズボンという格好だ。


「あれが死人団の一味か?」

「荷物の積み下ろしをする作業員に見えますが」


 シドの旦那とペイジが低い声で言った。


「ニューロックの馬車だな。中に入んな」


 作業員のリーダーらしい男が言う。

 人気の無い場所だから、なんとか聞こえる。


「旦那さまは?」


 御者台のパレル氏が尋ねた。脅えているせいか声が小さくて聞き取りづらい。


「余計な口たたくんじゃねぇ。さっさっとしねぇか!」


 リーダーに怒鳴られ、パレル氏は馬車を倉庫の中へと進めた。


 たぶん、あの倉庫に人質──誘拐されたブライズ氏はいないだろう。

 人質の解放は、身代金を受け取った後、というのが定番だからな。


「あ…っ」


 隣の窓から見ていたサミちゃんが、小さな声を上げた。


 彼女の視線を追うと、建物の陰に追跡隊の姿が見えた。


 よく見ると、あちこちに追跡隊、そして衛士と護民兵たちが潜んでいて、4番倉庫を包囲している。


 いつの間に……。

 驚くと同時に、オレはイヤな予感がした。


 護民兵や衛士たちの様子が、刑事ドラマで見た、突入直前のSWATみたいに思えたからだ。


 はっとしてシドの旦那が立ち上がった。


「捕縛命令が出た。全員、行くぞ!」


 ああ、やっぱり!

 人質がいるかどうかもわからないのに突入命令が出ちゃったよ!


「ガッテンだ!」


 ペイジが赤いポニテを揺らして真っ先に階段を駆け下りてゆく。あわてて他の護民兵たちが続く。


「制圧が完了するまで、魔捜研はここで待機しててくれ」


 最後に、シドの旦那が下りていった。


 外を見ると、あちこちの建物の陰から衛士に率いられた護民兵たちが飛び出した。30~40人はいる。


「歩く死人団! 御用だ!」

「大人しく縛につけ!」


 衛士は剣を抜き、護民兵たちがこん棒を構えて声を上げ、4番倉庫に突入する。


 たちまち乱闘がはじまった!



地味にスゴイ魔法文明の通信石。

コメツブ程度のピアスで何キロも先の相手と双方向の音声通信ができる。

騎士団以外に広まっていないのは悪用されないため。

盗みやテロ、暗殺にも便利だからね。

あとお高い。騎士団でも衛士以上の身分でないと使用できない。

重要なのは司令部にある親石と呼ばれる通信石本体で、ピアスだけ盗んでも送受信できない仕組みになっています。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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