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#3-4.ゾンビの作り方、教えます

【まじらぼ 前回までは】

ゾンビを使う犯罪集団・歩く死人団が大富豪ニューロックの二代目当主ブライズを誘拐。ソータたちはニューロックの屋敷で馬車、メッセンジャーに使われたゾンビを調べる──



     1



「ゾンビにされてどのくらいかわかるかな? クロエさん」


 ゾンビ化された時期がわかれば、それは死体が盗まれた時だろう。その時期、墓荒らしがあった墓地を見つければ、犯人の手掛かりになる。


「今はちょっとわからないわね。ゾンビ化すると腐敗は止まるから」


 むぅ…そうなんだ。


「今わかるのは、この死体は死後1週間から10日くらいってことね。それも土とかお棺とか、条件によって幅があるけど」


 クロエさんはペイジを見て、


「荷馬車を1台頼める? この死体、ラボに持って帰りたいんだけど」


 と、頼んだ。

 機材、薬品、資料で予算の大半を使いきった魔捜研には馬車とかもないんだよな。


「ガッテンだ。あとで手配しとくぜ」

「クロエさんなら死体をゾンビにできるよね? 今回はやらないの?」


 ふと気づいてオレは尋ねた。

 酒場の主殺人事件の時は、被害者の遺体を運ぶのにゾンビ化した。


「やれるけど、それやると手掛かりが消えちゃうのよ」

「手掛かりって?」

「ゾンビには、ゾンビ化した術者の手掛かりが残っているのよ」


 クロエさんが語ったのは、この世界おける生命、そしてゾンビを作る仕組みだった。


 人間をはじめとする生物には、物質である肉体とエネルギー体の幽体とがある。


 肉体には様々な精霊エネルギーが働いていて、幽体はこのバランスを調整している。

 精霊エネルギーのバランスが崩れた状態が「病気」や「老化」であり、大きく崩れると肉体は活動不能──「死」を迎える。

 そして肉体が死ぬと幽体も壊れ、消滅する。


 オレたちの世界──物質がエネルギーより優位な下位世界では、死ねばそれで終わりだ。だが、この世界のようにエネルギーと物質に優位の差がない、あるいはエネルギーが優位な上位世界では事情が違う。


 魔法で人工的な幽体を作り、それを死体に入れることで蘇らせることができるのだ。


 これがゾンビと呼ばれる存在だ。


 もっともこの人工幽体には、生前の記憶や経験といったものは入っていない。だからゾンビは自我も感情もないし、生前の記憶も無い。頭が空っぽのロボットみたいな存在なのだ。


「その人工幽体をエクトプラズムって言うんだけど、ゾンビが機能停止しても、このエクトプラズムの残りカスが残っているのよ。でもアタシがこの死体をゾンビ化すると、それは消えちゃうの」


 ファイルを上書きしするようなものか。だからもう一度ゾンビにすることはできないと。


「残っているエクトプラズムを抽出できれば、ゾンビを作った術師の手掛かりになるはずよ」


 おお、爆弾の残骸から爆弾作った犯人の特徴を見つける感じだな。


「じゃあ馬車の手配を待つ間、脅迫状を調べよう」



     2



 オレたちが通された部屋は、応接室っぽい部屋だった。


 内装は多分、品良くお高いものだと思うのだけど、そんなもの気にしている余裕は無かった。


 部屋には、30歳手前くらいの女性と、丸眼鏡の神経質そうな40代の男。そして、


「何用だ?」


 ゴーワン騎士団長と騎士が数人いた。


 オレたちが入ると、ギロリとこっちをにらみつけた。

 その迫力と、何より、前に捕まって拷問されかかった記憶に、一瞬、すくんでしまった。

 クッソ…負けるか!


「脅迫状を調べに来ました」


 自分を奮い立たせて言うと、ゴーワン団長は「ふん」と鼻を鳴らした。


「脅迫状から何がわかるというのだ?」

「まず文字です。文字の特徴は犯人を特定する手掛かりになります。紙は、犯人の指紋や手掛かりがついている可能性があります。また購入した店を見つけることができれば、その近くに住んでいる可能性が高いです」


 オレの説明に、女性と丸眼鏡の男が「おお」と感嘆の声を上げた。


「えっと、こちらは?」

「ブライズ氏の奥さんのエアリーさん。こちらはニューロック服作店の支配人のパレル氏だ」


 ペイジが教えてくれた。


「お願いします。主人を助けて下さい」


 奥さん──エアリーさんが涙目で言った。

 誘拐されたブライズ氏は55歳だっけ? その奥さんにしてはかなり若いな。


「ご主人を助けるためには情報が必要です。ご主人の周囲に、恨んでいる人とか、お金に困っている人とかはいませんか?」

「それは──」

「そんなことは我々騎士団が調べる! 貴様らは証拠品の鑑定だけしておれ」


 奥さんが何か答える前、ゴーワン団長が怒鳴った。


 うわぁ…鑑識はすっこんでろとか、日本の鑑識ものの定番だよ。


「奥さま、捜査よりも旦那さまの無事が第一です。身代金の用意を急ぎませんと」


 丸眼鏡──支配人のパレル氏が言う。


「身代金を支払えば、誘拐された者は無事に帰ってきております。次の使者が来るまで──」

「第一にするのは犯人逮捕だ!」


 パレル氏を遮って、またゴーワン団長が怒鳴った。


「これ以上、死人団の跳梁を許せば国の威信に関わる。ヤツらは必ず殲滅する! そのためには人質の命など二の次だ! いやしくも王国の民ならそのように考えよ!」

「そんな──」


 奥さんが叫んでソファにへたり込む。


「貴様らはラボに籠もり、手紙でも死体でも調べるがいい。鑑定とやらはヤツらをみな殺しにしたあとで読んでやる」


 そう言うと、ゴーワン団長は「しっしっ」というふうに手を振った。


「ラボに戻ろうかの」

「はい」


 のじゃ子さんにオレはうなずいた。


 ゴーワン、この脳筋騎士団長は、話しが通じる相手じゃない。

 ヤツの頭には歩く死人団を殲滅することしかない。


 コレに任せていたらブライズ氏が危ない。


 家族やニューロックのお店の人たちのためにも、死人団のアジトを突き止めないと!



名前の由来

服の量販店ユニクロ→ニューロック

安い→グッドプライス→ブライス

エアリズム→エアリー

アパレル→パレル


昭和人(しょうわびと)のネーミングセンスです^^


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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