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#2-21.青い鳥がいっぱい

【まじらぼ 前回までは】

凶器の血液指紋でついに犯人は逮捕された。そして──



     1



「幸運を招く像で殺人事件なんて、悲しいですね」


 サミちゃんがハーブティとクッキーを運んで来た。


 魔捜研の会議室兼ラウンジである。


 オレは騎士団の取り調べに立ち会い、裁判所にレポートを提出した際に知ったことをみんなに報告していた。


「はじめの現場検証の時、凶器がなかったのは何故?」


 クッキーをポリポリ食べながらクロエさんが尋ねた。


「ガスが持ち帰ったンだ」


 同じくクッキーをボリボリかじりながらペイジが答える。


「だけど家に戻ってから怖くなった。血まみれのグリフォン像は、幸運どころか災いを招くもののように見えたんだとよ」


 人を殺した凶器だ。そりゃ怖いだろう。

 ガスは急いで血を洗い流したそうけど罪悪感が消えるわけもない。


 そしてガスは気づいた。

 グリフォン像がなくなっていることがわかれば、自分に疑いが向くのでは、と。


 で、オレたちが帰った後、こっそり元あった場所に戻したのだった。


「わざわざ元の場所に戻さず、運河にでも捨てればいいのに」

「ガスがクロエさんみたいに図太くなくてラッキーでしたよ」

「ほんとね」


 イヤミを言ったのに動じてない。


「オヤジがよく言ってたぜ。下手人の大半はキモの小さいヤツだ…ってな」


 ペイジが言う。

 

「キモが小さいのにコロシなんて大それたことやっちまった。頭ン中は恐怖でいっぱい。で、血を拭って元の場所に戻せばバレないだろう…なんてガキみたいなこと考えた」


 端から見れば非合理的な行動だ。

 ドラマではあまり見かけないけど、リアルでは割りとあるのだろう。


「現場の封鎖を徹底しないとな。こんなラッキー、二度とないだろうから」


 事件現場は、シーマンたち護民兵が見張っているはずだった。

 だけど連中は、オレたちが帰ると自分たちも引き上げてしまった。だからガスは簡単に侵入し、凶器を戻すことができたのだった。


「騎士団の意識も変える必要があるのう」


 と、のじゃ子さん。


 今回はガスの工作が裏目に出て事件が解決したけど、こんな幸運は二度とないだろう。証拠がなくなる可能性だってある。


「あいつらの意識なんて変えられるの?」

「無理だろうな」


 クロエさん、そしてペイジが忌々しそうに言う。


 シーマンはシドの旦那にこっぴどく叱られたそうだけど、それだけだった。

 罰せられたり、クビになったりはしていない。


 魔捜研初の殺人事件は、のじゃ子さん、サミちゃん、クロエさん、それにペイジの協力で解決できた。


 でも、オレの気分は晴れない。


 のじゃ子さんは言った。


 ──この世界は、犯罪捜査の技術や手法がまるでなっておらん。


 ──お主の捜査手法がこの国に根付いた時、元の世界に還ることができるじゃろう。


 科学捜査の手法をこの世界に根付かせる。

 てもそのためには、騎士団はじめとする人々の意識。法律の不備。社会そのものを変える必要がある。

 今回、それを思い知った。


 そんなこと、オレなんかにできるのかな……。

 こんなんで、この国に、科学捜査ならぬ魔法捜査を根付かせることができるのか。


 そして、オレは元の世界に還ることができるのだろうか。



     2



 考えるほどに鬱々してきた。そこに──

 

 パタパタと羽音を立ててメールバードが飛び込んで来た。


 半透明の小鳥はテーブルの上で旋回すると、ぽんっ! と手紙に戻ってのじゃ子さんの前に落ちた。


「ほほう…これは」


 手紙を読んですぐ、のじゃ子さんは笑みを浮かべた。


「このラボに期待している、との手紙じゃ。いわゆるファンレターじゃな」

「え?」


 そんなものが来るなんて思いもしなかった。


「街でも評判ですよ。いろんな新聞にも載ってましたから」


 サミちゃんが言う。そこに──


 どばばば! と、何十というメールバードの群れが飛び込んで来た!


 呆気にとられるオレたちの前で、ぽぽぽぽんっ! と破裂音が連続して上がり、テーブルに手紙の山ができる。


「これも…これもファンレターよ」


 封を切ってクロエさんが言う。


「マジで?」


 何十という手紙は魔捜研への期待や応援メッセージだった。


「これだけ期待されておるということじゃな。ソータ」


 のじゃ子さんの言葉に、オレは我に返った。

 感動で頭が真っ白になっていたのだ。


「濡れ衣を着せられるところ、助けていただきありがとうございます──サナさんからのお礼状だぜ。ソータ!」


 ペイジがオレの肩をたたいた。


 そうだった。

 事件の解決は、冤罪を防ぐことにもなるんだ。


 世界全体でみれば、オレたちがやったことはちっぽけなことだ。


 でも、それで一人の女性が冤罪になるところを救ったんだ。


 そしてオレたちは、こんなにも期待され、必要とされている。


 やば…感動で目が潤んできた。

 それを誤魔化すため、オレはわざと大きなため息をついて、


「じゃあ、これからもがんばりますか!」


 と、ハーブティのカップを掲げた。


「「「おーっ!」」」


 みんなも乾杯するようにティーカップを上げた。


 今日のハーブティーは、すごく美味かった。




(File02 ファンタジー世界に岡っ引き娘がいた件  おわり)




まじらぼの2話(章)でした。

1話冒頭の殺人事件の解決を2話でやるという、変則的な構成ですが、いかがでしたでしょうか?


3話は趣向を変えてゾンビ+誘拐事件となります。

乞うご期待!


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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質問やツッコミも大歓迎ですよ!

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