#2-20.ラッキーがアンラッキー
【まじらぼ 前回までは】
殺害現場に、前はなかったはずのグリフォン像があった。ルミノール反応でこれは凶器に間違いない。ソータは凶器に残る血液指紋で犯人を割り出そうと──
1
のじゃ子さんが用意してくれた金色のフクロウ人形をオレは手に取った。
今こそこれを使う時だ!
右手でフクロウの人形を頭の上へ持って行き、左手で頭に打ち込まれた〈スパイク〉を探す。
……あった。
指先にイヤホンジャックに似た感触。
フクロウ人形の足、その下にある金属のピンを、〈スパイク〉の穴へと差し込んだ。
「いでででッ!」
ビリリっと痛みが走った。
歯医者で麻酔の効きが悪い場所にドリルが当たった痛みに似ている。それが頭の中で起きた。
前のヤツより痛いぞのじゃ子さん。これなんとかならないかなあ。
「指紋、準備できました」
サミちゃんが、サナさんの指紋を押した指紋シートを持って来た。
「ありがとう」
指紋シートを受け取り、シドの旦那、シーマンたちを見回す。
「見ていてください」
ルミノールの燐光まみれのグリフォン像。
一番形が残っている血液指紋に、オレはじっと目を凝らした。
頭の上で光りが放たれ、壁に、人の頭くらいの大きさに拡大された光る血液指紋が投影される。
このフクロウの人形もプロジェクターだ。
魔法と魔法の機器が使えないオレに、のじゃ子さんが作ってくれたものだ。
こいつを頭の〈スパイク〉に接続して、オレが投影したいものを見つめて念ずると、フクロウがプロジェクターとなってその画像を投影してくれるのだ。もちろん拡大や移動も、文字通り、思いのままにできる。
「これが凶器についていた血液指紋です。次に、これがサナさんの指紋」
指紋シートのサナさんの指紋を見つめ、念ずる。
血液指紋の横に、もう一つ、採取されたサナさんの指紋が投影された。もちろん拡大倍率は同じだ。
頭の上にあるため見えないが、フクロウの右眼からのビームが血液指紋を、左眼のビームが奥さんの指紋の画像を投影しているのだ。
「指紋というのは一人ひとり違っていて、同じものはありません。二つの指紋を重ねると──」
二つの指紋よ、重なれ…とオレが念ずると、二つの指紋は互いに近づき、重なった。
「別人の指紋ですね」
血液指紋と奥さんの指紋は別物だった。
「どういうことだ?」
「犯人は奥さんじゃねぇってことだよ」
理解してないシーマンに、ペイジが小馬鹿にしたように言った。
ぐぎぎき…! と歯がみするシーマン。怒りで顔が真っ赤だ。
「シーマン。後で話がある」
シドの旦那がシーマンに冷たく言うと、今度は青くなった。
サミちゃんが照明をつけ、クロエさんが雨戸を開けた。
明るくなった店内で、オレは「ライトオフ」と念じてプロジェクターを停止した。
「至急、被害者と揉めていた船頭のガスを確保してください。グリフォン像に付いた血液指紋とガスの指紋が一致すれば、彼が犯人です」
……キマった。
刑事ドラマの主役みたいにキマったぞ! とオレは内心ガッツポーズした。
しかし──
2
「う、うむ」
あれ? 頷いたシドの旦那の表情がカタいぞ。
もしかして、犯人がサナさんじゃなくて不機嫌になったのか?
……いや違う。
ペイジ、それにサナさんの様子もおかしい。
身体をぶるぶる震わせている。まるで笑いをこらえているみたい?
「な、なに?」
わけがわからない。
「かわいいです~」
サミちゃんだけ、目をハートにして喜んでいた。
「ソータ、頭の上!」
笑いながらクロエさんが指差した。
はっ、と思わず窓ガラスを鏡にして自分を見る。
「げっ!」
頭の上にプロジェクターフクロウが乗ったままだった。
しかもこの金ピカのフクロウ人形、オレの感情を反映するらしく、両羽根を口元に当てて、びっくりした、というポーズを取っているし!
もしかしてさっき「キマった!」と思った時、バカなポーズをとったのか、これ?
こ、これはハズい…!
って、頭のフクロウが頭を抱えて、「ハズい」のポーズをとってるし!
「ぶはははは!」
「お似合いだぜソータ!」
耐えられない、という感じでクロエさんとペイジが爆笑する。シドの旦那、サナさんまで声を上げて笑っているし。
シリアスな空気も緊張感も、どこかへ飛んでいってしまった。
くそ、このフクロウプロジェクターは二度と使わないぞ。
× × ×
その後、船頭のガスが逮捕された。
ペイジたちが「御用だ!」と踏み込んだ途端、ガスは観念して、ヨナさん殺害を認めたという。
調べによると、ガスは博打で借金がかさみ、家庭も崩壊。人生再建をこのラッキーグリフォンに賭けようと考えていたそうだ。
だけどヨナさんと競り合って負けた。
しかしあきらめきれないガスは、さらに借金してヨナさんからグリフォン像を買い取ろうとした。でもヨナさんは譲ってくれない。
そして事件当日。
ガスはラッキーグリフォンを譲って欲しいと頼みに行き、ヨナさんに断られた。
一度は帰ったものの、数時間後、ガスはヨナさんの店に戻った。
譲ってもらえないなら盗んでしまえ、と考えたという。
閉店後、裏口から店に入ると内には誰もいなかった。
ラッキー! とグリフォン像を手にした時、すぐ近くのテーブルの下からヨナさんが現れた。
テーブルの下に落ちていたコインを拾うためかがんでいたらしい。
この時、ヨナさんはガスに背中を向けていた。
──振り向いたら見つかる!
焦ったガスは、発作的にグリフォン像をヨナさんの頭の上に振り下ろした。
面白アイテム、フクロウプロジェクターでした。
今後も、科学アイテムを魔法で再現した面白アイテムを登場させてゆく予定です。
そして次回が2話(章)の最終回となります。
もう少しお付き合いのほどを。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
よろしければブクマ、評価、リアクション、感想、レビューなどをお願いします。
質問やツッコミも大歓迎ですよ!




