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#2-19.現場百遍orケガの功名

【まじらぼ 前回までは】

被害者の妻・サナさんが逮捕された。冤罪なのは間違いない。時間稼ぎのため、ソータは殺害現場の現場検証を行うことにするが──



     1



 オレたちが現場の酒場に着いたのとほぼ同時に、シドの旦那と護民兵に連れられたサナさんが到着した。


 サナさんは手枷をはめられていなかったけど、逃走防止に腰に縄がかけられ、護民兵のシーマンがその先を手にしていた。


「確認させるなら早くしてもらおうか」


 シーマンが露骨にイヤな顔をして言う。


「こんな場合ですが、現場の確認をお願いします」


 シーマンを無視して、オレはサナさんに頼んだ。


「何をすれば良いのですか?」

「なくなった物、逆に見かけない物があったりしないか、みてください」

「はあ」


 返事ともため息もつかぬ声で、サナさんはうなずいた。


「……特にないようです」


 しばらく店内を見て回ったサナさんが言った。


「そうですか……」


 マズい。思ってたより早く終わってしまった。狭い店だもんな。

 でも、これじゃ時間稼ぎにもならない。その時だった。


「あ……」


 オレは()()に気づいた。


 カウンターからテーブル席への出入り口、その脇に、翼を持った獣──グリフォンの像があった。


「クロエさん! サミちゃん! あれ!」

「ええっ?」

「ラッキーグリフォン?」


 オレが指差すと二人は驚きの声を上げた。


 そのグリフォン像は、船頭のガスの家にあったものと同じくらいの大きさだった。やはり四角い台座に載ってて、その台座はヨナさんを殺した凶器──とがってないけどカドがあるもの、そのものだった。


 でも、オレたちが驚いたのはそこじゃない。


「アレ、はじめに調べに来た時にはなかったわよ?」


 クロエさんが、目をパチクリして言う。


 そうなんだ。

 初日にオレたちがここを調べた時、あのグリフォン像はなかったんだ。あればクロエさんが見逃すはずはない。


 どうして、これがここにある? いや、そんなことより──


「サミちゃん」

「お任せ下さい」


 オレが指示した時には、サミちゃんは薬品鞄を手に、グリフォン像へと向かっていた。


「サナさん、あの像は?」


 念のため、サナさんに確認する。


「亭主の道楽ですよ。金運を呼ぶラッキーグリフォンとかで。ウチの亭主はいくつも買い込んでいたんですよ。病気ですよ」


 ガスの家にも5つほどあったよな。


「あの像はいつからあそこに?」

「10日ほど前…からでしょうか。──あの日、これを競り落とすため、新たに借金していたことを知りました」


 奥さんが大きなため息をついた。


 あの日とは旦那さんが殺された日だ。

 そして口論になり、怒って先に家に帰った、と。

 口論が、旦那さんと交わした最後の言葉になんて、ツラいよな。


「この像のことで、ご主人と揉めていた人はいませんでしたか?」


 オレは話を戻した。今は事件に集中しないと。


「しつこく譲ってくれっていう人がいましたよ。運河で船頭している人で、名前はガス…いえガストンだったか……」


 そこに、


「出ましたぁ」


 と、サミちゃんが声が上がった。


 グリフォン像に、ぼんやりと青紫色に光るシミが浮かび上がっていた。


「なんだこれは?」


 シドの旦那や護民兵たちが驚きの声を上げた。

 サミちゃんとクロエさんが照明を消したり、雨戸を下ろしたりして店内を暗くする。


「ルミノール反応ですよ。血液に反応して光る薬品を使ったんです」


 グリフォン像のそばに行きながら、オレは答えた。


「そして、これが凶器です」




     2



 ラッキーだった。現場百遍、いや怪我の功名か?

 とにかく、凶器を見つけたんだ!


「これが血だと?」


 薄暗い店内に浮かび上がる燐光まみれのグリフォン像。

 シドの旦那、そしてシーマンら護民兵たちが、こわごわ…という感じでグリフォン像に近づいた。


「洗うとかして、ぱっと見には消せたようになっても、この通り、検出できるのです」


 暗くしたことで青紫の蛍光はよりはっきり見えるようになっていた。


 台座にひときわ濃く付着している場所がある。

 ここで被害者の頭を殴打したのだ。グリフォン像にも飛び散った大小の飛沫、そして血の指紋もいくつかあった。

 よし、これだ!


「しかし、報告では現場に凶器はなかったはずだな?」


 シドの旦那が指摘した。


「そうだ!」

「見落としてたんだろ? マヌケが!」


 ここぞとばかりにシーマンたちが声を上げる。


「はじめに現場検証した時、このグリフォン像はありませんでした。──サミちゃん」

「はい」


 サミちゃんが、薬品鞄から水晶プロジェクターを取り出し、テーブルの一つに置いた。


 水晶にサミちゃんが細い手をかざすと、空中に、店内を撮影した画像が投影される。


 ルミノール反応よりよっぽどすごい技術だと思うのだけど、シドの旦那もシーマンたちも、驚いた様子はない。見慣れたものなんだ。


 サミちゃんが手を振ると、投影される画像が切り替わる。


 この水晶塊はプロジェクターであるとともにカメラでもある。下足痕を撮影したのもこのアイテムだ。そしてもちろん、現場全体も撮影してあった。


「これです」


 サミちゃんが、カウンターからテーブル席への出入り口を撮った画像を出した。そこにグリフォン像は写っていなかった。


「この像は、オレたちが調べた後、置かれたんです」

「調査の後、現場は封鎖するよう指示しておいたはずよねぇ?」


 クロエさんが、意地の悪い顔でシーマンたちのほうを見た。


「誰が担当だったのかなぁ?」


 シーマンたちが、居心地悪そうに縮こまる。


 クロエさんって、意地の悪い顔がよく似合うよなあ。それがまたやたらキレイに見えるから困る。


「そ、それが凶器だったらどうだっていうんだッ?」


 シーマンが怒鳴った。さてはお前が担当だったな?

 責任を追及したいところだけど、今はやることがある。


「サナさんの指紋を」

「はいっ」


 サミちゃんがサナさんの指紋を採取する。


 今こそ、この新兵器を使う時だ!


 オレはのじゃ子さんから渡されたフクロウの人形を取り出した。



1話に続き、今回も指紋が犯人特定の切り札となります。

今時の刑事ドラマやミステリーでは、視聴者のみなさんが指紋のこと知っているので、拭き取られたり犯人側のトリックに使われていますね。

しかし本作は科学捜査の「か」の字もない異世界。

指紋で決着は、原点回帰というわけです。(そう思ってね)


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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