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#2-17.そして誰もいなくなっちゃったよ

【まじらぼ 前回までは】

容疑者コールは被害者の妻・サナさんの兄だった。不倫ではなく兄妹の対面だったのだ。無実を信じるソータたちは、その証明に下足痕を使う──



     1



 サミちゃんが水晶プロジェクターを操作して、現場で採取された他の下足痕を空中に表示させた。


「判別が可能な下足痕は4つ。そのどれもがコールの靴とは一致しませんでした」


 サミちゃんの操作でコールの下足痕と撮影採取された下足痕が重ねられる。

 大きさが合わないのが2つ。他は大きさが同じものでも模様やキズが一致しない。


「念のため、ハンナさんにコールの家に他に靴がないか調べてもらいました」

「あったのはサンダルが一つ。念のため、部屋中探したけどありやせんでした」


 ハンナがサンダルを見せて言う。下足痕の違いは比較するまでもない。


 この世界の庶民の靴はローファーに似たタイプである。材料は革か布。錬金術で布を革っぽく加工したものもある。

 値段は、安いものでも平均的な労働者の賃金1ヶ月ぶんと高価だ。だから2足も3足も持っているものは稀だった。


「事件当夜、コールは一晩中、作業していたと言っています。自宅にいたかは不明ですが、現場に来ていないことはたしかです」

「判別不能の足跡があったな? そこにコールの足跡がある可能性は?」


 ジドの旦那が確認してきた。


 ペイジが不安そうにオレを見る。

 大丈夫。これは想定内だ。


「判別不能の下足痕は犯行時よりかなり前に付けられたものです。上から他の判別できた4つの下足痕が重なっていたり、遺体から離れた場所にあるものばかりです」

「では、コールが別の靴を履いて犯行に及んだ可能性は?」


 う…それは否定できない。と、内心アセったが、


「いや、このコロシは計画的なものじゃない。そのセンはないか」


 と、シドの旦那は自ら否定した。


「もし計画的なモンなら、コールは現場にいなかったことを証明する証人なり証拠なりを用意していたハズですよね」


 続いてペイジが言った。


「その通りだ」


 そう言うと、シドの旦那は大きくため息をついた。


「魔捜研の」


 シドの旦那はオレのことをそう呼ぶと決めたみたいだ。


「はい?」

「手間掛けたな」

「いえ、仕事ですから」


 そう言ったオレに、シドの旦那は苦笑した。


「容疑者いなくなっちまったな」

「あ……」


 奥さんはアリバイがあって。

 船頭のガスの家に凶器はなく。

 コールは現場に来ていないことが確認された。


 そうだった!

 容疑者、誰もいなくなっちゃったよ!



     2



「アタシまでゴチになって悪ぃな」


 シドの旦那が帰った後、オレたちはペイジを交えて遅い夕食となった。


 ちなみにハンナは、コールの釈放をサナさんに知らせるのと、旦那ハッチの晩メシを作るため帰っていった。


「今日はリノ叔母さんに頼んで、届けてもらいました」


 サミちゃんが言う。


 リノ叔母さんというのは、サミちゃんが魔捜研に来る前に住み込みで働いていた大衆食堂『日の出』の女将さんである。

 サミちゃんが研究で忙しい時なんかに、こうしてデリバリーしてくれるのだ。


「サミはルミノール液の改良で大変じゃったろ」

「料理運ぶのはアタシたちがするから、座っててね」


 のじゃ子さん、クロエさんがサミちゃんを強引に座らせるとキッチンに向かった。

 ドジッ子のサミちゃんに運ばせると、コケてせっかくの料理をぶちまけかねないからな。


「ルミノール液の改良?」

「はい。ダイコンやニンジンに反応しちゃうって聞きましたから。血液だけに反応できないか改良してみたんです」


 科学捜査の薬品作りに、下足痕の分析、分類に、ほんとサミちゃんはよくやってくれているよな。


「まだちょびっと反応しちゃいますけど、血液は、はっきり強く光るようにできました」

「おお! すばらしい」

「でも、寿命が短くなってしまったんです」


 困った顔でサミちゃんが言う。


「寿命?」

「薬を作ってからすぐ使わないと、反応が起きなくなるんです」


 反応が良くなったぶん、劣化しやすくなったのか。


「なら現場で作るというのはどうかな? 二つか三つの薬品を混ぜればできるって感じで」

「あ、できます! それでいきましょう!」


 ぱぁって明るい笑顔になるサミちゃん。


「問題はひとつずつ、できるものから解決すればよい」

「そうそう。まずはこの空腹からね」


 のじゃ子さんとクロエさんが料理を並べて行く。


 シチューみたいなトリの肉団子のクリーム煮。チーズとスモークサーモンのサラダ。クルミ入りパン。そして様々なピクルスの盛り合わせ。


「オレの世界にあるのと同じもの、こっちにも結構あるんだな」


 コーヒーと紅茶はないけど、ニンジンやダイコン、キャベツ、カブといった野菜はこっちでも普通に食べられていた。鶏、牛に馬、魚はアジ、イワシ、シャケ(サーモン)なんかもある。


「世界同士が近いのじゃ。この場合の近いというのは、違いが少ないという意味じゃ。故にお主のように転移する人間がおる」


 肉団子をふーふーしながらのじゃ子さんが言う。


 パラレルワールドってヤツか? 違いが少ない世界はお隣って感じか。

 それはそうと、肉団子のシチューがうまい。


「魔法がある世界とない世界なのに?」


 ものすごく違いがあるんだけど。

 でもサーモンはサーモンの味がする。スモークしたものを薄く切ってあるところも同じだ。


「それは世界の階層による差異であって、世界の隔たり──異質さとは別ものじゃ」

「異質さ?」

「例えば、お主の世界にもこの世界にも馬がいる。じゃが馬という生き物がいない、あるいは家畜化できない世界もあるじゃろう」


 ちぎったパンをもぐもぐ、そして飲み込んでのじゃ子さんは続けた。


「ヒトもそうじゃ。──ちなみに、ここでいうヒトとは、我ら人間だけでなく、エルフやドワーフといった種族も含むのじゃが──こちらの世界も、そちらの世界もヒトは腕と足が二本ずつ、頭は一つじゃろ。しかしヒトの手足が三本も四本もあったり、頭が四つ、五つとある世界もあるかもしれぬ。世界の隔たりとはそういうことじゃ」

「なるほど」


 ──どっちの世界も同じだな。


 ペイジと張り込みしていた時の会話を思い出した。無意識に彼女のほうを見ると、


「……なんでぇ?」


 視線が合ってしまった。


「えっと、またイチから仕切り直し。大変だなって」


 なんでか、オレは誤魔化してしまった。


「でも、間違って誰かが罪に問われなかった。それだけでもめっけもんだぜ」


 ニッと笑うペイジ。その笑顔は、心からそう思っているように見えた。



     ×   ×   ×



 ──翌朝、ペイジがラボに駆け込んできた。


「サナさんが捕まった!」


 サナさんって…ガイシャの奥さんじゃないか!

 アリバイあったのに、なんで逮捕されたの?



この世界ではフィルムのカメラができる前にデジカメが出来たみたいな感じです。

クリスタルのプロジェクターはカメラ&プロジェクター。

ただし動画は撮影できない。

お金持ちでないと買えないお高い品です。

魔捜研の設立資金の多くは、こうした機材、薬品、資料に消え、建物は中古物件となっています。

人数も少ないしね。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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