#2-16.冤罪を晴らすため、オレはいる
【まじらぼ 前回までは】
殺された被害者の妻・サナさんと容疑者のコールは密会していた。張り込んでいたソータとペイジはついにコールを捕らえる。ところがコールは、サナさんの兄だった──
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「この人──コールが、あんたの兄さんだってのかい?」
「はい。昔、生き別れた兄なんです」
ガイシャの奥さん──サナさんが言う。
驚きの展開だ。
そう言えば、コールもサナさんも黒髪だった。この〈都〉で黒髪はちょっと珍しい。よく見ると顔もなんとなく似ている。
サナさんの話をまとめると、こうだ。
二人の故郷は、〈都〉から少し離れた田舎町だった。
ある日、父親が事故で亡くなり、母親一人の稼ぎではやっていけなくなった。そこで兄のコールが〈都〉の運送屋に奉公に出た。
コールが11歳、サナさん6歳の時だった。
しかしコールが勤めた運送屋はひどいところだった。大人や先輩たちからの暴力は当たり前。食事は最低限。密輸品の配達までやらされたという。
耐えられずコールは運送屋から逃げ出した。
その後は、物乞いやかっぱらいをしては逮捕されて監獄にぶち込まれる、の繰り返しだった。
監獄で知り合った職人から飾り職の手ほどきを受けたが、それで稼げるほどの腕にはなれなかった。
少ない稼ぎの大半は酒代に消え、ハンパ仕事をしては酒を呑む。
ツケが多い上、酒癖が悪いから出禁になった店も多かった。
『歌うクジラ亭』でも、たまったツケと酒グセの悪さでヨナさんと何度か揉めていたが、ある日、奥さんのサナさんが妹だと気づいたのだった。
「このペンダント。母の形見なんですよ」
サナさんが首にかけたペンダントを外して見せた。
「ナリイのお守りか」
ペイジが言う。
「ナリイって神さま?」
「農耕神だ。農村には信者が多いが〈都〉じゃかなりマイナーだよな。あとナリイのお守りは土地ごと、年ごとにデザインが違うので有名なンだぜ」
サナさんにペンダントを返しながらペイジが言う。
「ああ、だからコールは、一目で母親のペンダントだって気づいたのか」
そして抱き合っていたのは、不倫の現場ではなく、生き別れた兄妹の感動の再会シーンだったわけだ。
「オレは殺しちゃいない! 信じてくれ!」
縛られたコールが叫ぶ。そういやまだ縛られたままだったな。
「じゃあなんで逃げた?」
しかしペイジはまだ縄を解く気は無いようだった。
「借金取りだと思ったんだよ」
「そんな言い訳が通ると思ってンのか? ていうか、今のはカネ目当てに殺したと疑われるぞ」
「そんな! オレはヨナが殺された晩、店には行ってねぇんだ」
「ちょっとペイジ」
コールを犯人と決めつけ、追い込んでいるみたいなペイジに、オレは思わず割って入った。
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「その言い方、ハナからコールを犯人だって決めつけているみたいだぞ」
ペイジは冤罪を憎んでいる。冤罪を防ごうとしているんじゃなかったのか?
「疑いを晴らすためだ。衛士の旦那も、手柄を上げようと眼の色変えている護民兵らも、納得させられるモンが要るんだよ」
「そういうことか。ゴメン」
オレの早とちりだったか。
ペイジもコールを犯人だと思っていない。いや思いたくないんだろう。だから疑われるポイントをつぶそうとしていたんだな。
「コロシのあった晩、店には来てねぇって言ったな?」
ペイジはコールに向き直り確認した。
「ああ、あの日は急ぎの仕事があって、一晩中、作業してたんだ」
「それを証言する人は?」
「それは……」
口ごもってうつむくコール。
「思い出せよ! 誰か来たとか、近所でハデな夫婦ゲンカがあったとか、何かねぇのか? 今、この状況じゃ、お前を詰め所に連行しなきゃならねぇんだよ!」
ペイジもアセっていた。
でも証人がいないんじゃ、コールが家にいたって証明できない。
考えろ、考えろ…!
疑いを晴らすため、冤罪を防ぐため、オレはここにいるんだ。
ドラマではどうやっていた?
証人なしで自宅にいたことを証明するには……。
……まてよ。
そうだよ。アリバイってのは不在証明──その時、その人が犯行現場にいなかったことの証明って意味だった。
「あったぞ、方法が!」
「マジか?」
ペイジ、コールそしてサナさんがそろってオレを見た。
「自宅にいたことは証明できなくてもいいんだよ」
「は?」
「ラボに来てくれ。それとハッチ、ハンナの二人に連絡を」
× × ×
「コールは殺人のあった夜、店に来ていないと言っています」
魔捜研のラウンジである。
いつものメンバーに加えてペイジとハンナ、そしてシドの旦那にも来てもらっている。
コールは取りあえず詰め所の牢に入ってもらい、ハッチが番をしている。
コールには悪いけど、容疑が晴れない内は勾留するしかない。
「サミちゃん、お願い」
「はいっ」
と、元気よく返事して、サミちゃんはテーブルの上にある水晶プロジェクターに手をかざした。
すると空中に撮影した下足痕が投影された。
「これはコールが履いていた靴の下足痕──足跡です」
そう、自宅にいたことが証明できなくても、犯行時刻に殺害現場にいなかったことが立証できればいいんだよ。
現場に残された下足痕で、それを立証するんだ。
立証できるかは賭けだけど……。
賢明な読者はお気づきでしょう。
この作品は、西洋ファンタジーとハリウッドTVとみせかけて、時代劇のノリなんです!
慣れ親しんだもののほうが書きやすいんですよ。
ちなみに冤罪率4割とかいうのも江戸時代を参考にしてます。
ここまでお読みいただきありがとうございます。
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