#2-13.張り込みに行こう!
【まじらぼ 前回までは】
容疑者・酒飲みのコールが逃走。小船で逃げるコールを、クロエさんのゾンビー魚が追撃するが、あと少しのところで逃げられてしまった──
1
コールを取り逃がしたオレたちはダンカン通りの衛士詰め所に報告に戻った。
「ざまぁねぇな」
ペイジがシドの旦那に報告すると、他の衛士たちがここぞとばかりに嘲った。
「未熟モンが。10年早ぇんだよ」
「やっぱ罪人の娘に護民兵は務まらねぇな」
黙って耐えていたペイジだが、この一言にはブチ切れた。
「ンだとコラぁ! もっぺん言ってみろ!」
こん棒に手を掛けて怒鳴った。
「おっ? やんのか?」
「その減らず口、聞けねぇようにしてやるぜ」
護民兵たちもこん棒に手を掛ける。
まるでチンピラだ。こんなのがこの国の治安を守る警官代わりなんだ。
いやそれより、相手は男が三人だぞ? ペイジ、ヤバくないか? オレがそう思った時──
「やめねぇか!」
シドの旦那が怒鳴った。
詰め所がビリビリ震動するような大声に、ペイジもチンピラ護民兵たちも思わず首をすくめた。
「町がてめぇらにカネ払ってんのは何のためだ? 今、この時も下手人は野放しで〈都〉の人間は不安がってるんだぞ。ケンカや減らず口は、手当てぶんの働きをしてからやりやがれ!」
さすがベテランの衛士だ。会った時は、こんなじーさんで大丈夫か? と思ったけど。
シドの旦那の剣幕に、ペイジもチンピラ護民兵たちも小さくなって「へーい」と返事するしかなかった。
「魔捜研の」
「え? オレ?」
いきなり声をかけられ、オレはちょっと焦った。
「コールの家に凶器はあったのか?」
「いえ。見つかりませんでした」
そもそも凶器に使えそうな物がほとんどなくて、あってもルミノール反応は出なかった。
「するとコールが下手人じゃない可能性もあるのか……」
シドの旦那は自分のアゴをなでながらつぶやいた。
そう、その可能性もあるんだよな。
でも、コールが犯人じゃないとすると、容疑者がいなくなってしまう。
「ペイジは引き続きコールを探せ」
「はい」
怒鳴られたからかペイジは神妙な顔でうなずいた。
「他は聞き込みを続けろ。ガイシャの周りにあやしいヤツがいないか探れ」
「へいっ!」
方針が決まり、オレたちは詰め所を出た。
「お腹空いたわね」
それまで黙っていたクロエさんが言った。
言われてオレも空腹なことに気づいた。
日はとっくに暮れ、詰め所のある通りに並ぶ飲食店はディナータイムを迎え、うまそうなにおいが立ちこめていた。
早くラボに帰ってサミちゃんの料理を食べたい。そう思った時だ。
「間違いねえのか?」
ペイジが大きな声を上げた。
「どうしたんだ?」
「ハンナが新しい情報を取ってきたンだけどさ……」
ペイジはめずらしく躊躇って言った。
「ガイシャの奥さん、コールと密会してたらしいンだ」
なんだって?
2
被害者の奥さんが、逃げた容疑者コールと不倫していた?
オレとクロエさんは詳しく聞くため、また詰め所の中に戻った。
シドの旦那と衛士たちは帰った後で、中にはオレたちしかいない。
ハッチとハンナのドワーフ老夫婦はこの詰め所の番人で、上の階に住んでいるという。交番っていうより駐在所だな。
「話をする前に、夕飯いかがですか?」
ハンナが言った途端、オレとペイジのハラがぐぅ、と鳴った。
「仲が良いことで」
クロエさんが笑った。
「人数が多いからこちらへ」
ハッチに案内されたのは、奥に牢屋がある待機所だった。
そこの小さめのテーブルに料理が並べられた。
具だくさんの海鮮スープ。ライ麦パン。それにチーズとオリーブの実入りのマリネっぽいサラダというラインナップだ。
「うん、うまい!」
料理はどれも美味かった。
オレたちが暮らす〈都〉は北西が海に面していて海産物も豊富だ。
オリーブの実やオイルが使われているあたり、イタリアかスペインの料理に似ている気がする。
前から思っていたけど、このクレイエラ王国は地理、気候が南ヨーロッパに近いと思う。だから料理も似たものになるんだろう。
ちょっと意外だったのはペイジだ。
時代劇の江戸っ子みたいな言動だから、もりもりガツガツ食うのかと思ったら、意外と上品に食べていた。
「奥さんがコールと不倫してた? マジで?」
食後のハーブティーをいただきながら、オレはあらためて尋ねた。
「現場周辺の住民に聞き込みしたら、奥さんとコールが店の裏で隠れて会っているのを見た人がいたんで。それも何人も」
ハンナが淡々と答える。
「目撃者の一人によると、奥さんとコールはとても親しい関係に見えたそうです。抱き合っているとこも見たとか」
それは…大変な情報だ。
「て、ことはコロシの動機は痴情のもつれ…か?」
「酒癖のせいで出禁になった、よりは納得するわね」
ペイジに続いてクロエさんが言う。
「もし二人がそういう関係なら、コールは奥さんに会いに来るんじゃないか?」
オレがそう言うと、
「たしかに!」
と、ペイジが立ち上がった。
「行き当たりばったりに探すより、奥さんを張り込んでたほうがいいな」
「ちょ…まさか、今から張り込みに行こうってんじゃ?」
「あたぼうよ! 善は急げだ!」
オレ、今日一日歩き回ってヘトヘトなんだけど?
「みなさんは今日一日歩き回ってお疲れでしょう」
「今夜の張り込みはあっしらに任せて。お休みになってください」
そこに、ハッチとハンナのドワーフ夫婦が張り込みを申し出てくれた。
助かった……。
ペイジは不満そうだったけど、おかげでオレもクロエさんも、帰ってベッドで休むことが出来た。
下っ引き夫婦に感謝だ。
その翌日──
「ソータ! 張り込みに行くぜ!」
と、早朝、ラボにペイジが呼びに来た。
「朝呼びに来る小学生かっ!」
はじめ刑事ポジがほしいな…くらいで登場させたペイジですが、すっかりいい感じに。
他の3人とはまた違う、ツンデレ系あるいは同性のような気安い関係です。
うん、定番、王道。
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