#2-11.血まみれのテーブル
【まじらぼ 前回までは】
残る容疑者コールのアパートを捜索するソータ、ペイジ、クロエさん。ルミノールに反応してテーブル全体光った。ここで大量の流血が?──
1
テーブルのほぼ全体がルミノール液で光っている!
つまりこのテーブルは血まみれだったということで……。
「まさかコールって…シリアルキラーなのか!?」
ペイジもぞっとした顔で半分以上が発光しているテーブルを見ている。
「違うわよ」
クロエさんは笑うと、テーブルに近づいた。
「この部屋には、血のにおいも肉の腐敗臭もしないもの」
「わかるの?」
「ネクロマンサーよ、アタシは。血と屍臭には敏感なの」
さし込む赤い夕日の中、微笑むクロエさん。
ゾっとしながらも、その笑顔にオレは一瞬見とれてしまった。
クロエさんはテーブルに顔を寄せ、においを嗅いだ。
「ダイコン…かな? これ、テーブルの上にスープをぶちまけたのよ」
「スープだぁ? そのルミなんとかって血に反応して光るんじゃなかったのかよ?」
「……あっ!」
思い出した。
「ルミノール液って血液以外にも、たとえば植物の酵素にも反応するんだった。たしかダイコン。あとニンジンもだっけか」
何年か前に視た旧い刑事ドラマでそんなエピソードがあった。
凶器だと思った包丁が、実はダイコンの酵素でルミノール反応が出たっていうのだったか。
「なんだよ。おどかしやがって」
ペイジがホッとため息をついた。
オレも、おっかない妄想が外れてホッとした。
なんでも凶悪犯罪に結びつけるのは刑事ドラマの見過ぎだな。
「これからルミノールを使う時はダイコンに気をつけないとね」
「改良できないか、戻ったらサミちゃんに相談してみよう」
クロエさんとオレが笑い合った。その時だった。
オレたちの後ろで、ドアが開く音がした。
「「え?」」
振り向いたオレ、そしてドアを開けた男、二人同時に声が出た。
ドアを開けたのは40歳くらいの男だった。
ヨレヨレの服を半分はだけただらしない格好をしている。ぼさぼさの髪は黒色。こっちの世界ではわりと珍しい髪の色だ。
「お前、コールだな」
「うわわわ!」
ペイジが怒鳴った途端、男──コールは悲鳴のような声を上げ、逃げ出した。
2
「待ちやがれ! コールっ!」
叫んでペイジはコールの後を追って駆け出した。
「何してるの! 追うのよ!」
クロエさんに背中を叩かれる。
「お、おう」
我に返ったオレは、クロエさんの後を追ってコールの部屋を飛び出した。
4階から3階へと階段を駆け下りる。3階から2階へ──
「うわっ!」
先行するペイジの叫び声が上がった。
2階でドアを開けて出て来た住民とぶつかったらしい。
「悪い! ケガはねぇな? すまない!」
相手にケガがないことを確認して先を急ぐペイジ。
オレとクロエさんが2階から1階に続く階段の半ばに来た時、建物の外で左右をキョロキョロしているペイジの背中が見えた。
コールを見失ったんだ。
右か左、どっちに行くかで迷っている……。
「えぇい!」
ペイジが迷ったのは一瞬だった。叫んで右へと走り出す。
外に出たオレもペイジの背中を追いかけ──
「待った!」
ようとしたオレのえり首をクロエさんがつかんだ。
ぐえっ! となったオレに、
「同じほうに行ってどうするの! こっちよ!」
と、ペイジと反対方向に駆け出すクロエさん。
「そうだね!」
クロエさんの後を追い、団地みたいな四角い建物の向こう側に回り込む。コールの姿は──見えない。
でもクロエさんは走り続ける。
夕陽の赤い光の中、クロエさんの銀の髪が、踊るように揺れる。きらめくその髪は本物の銀のようにキレイだ。
いや、今は見とれている場合じゃない!
オレは足を速め、そしてクロエさんの横に並んだ。
左右に同じデザインの建物が並ぶ中、オレとクロエさんは駆けて行く。
建物と建物の間に来た。
コールがいないか左右を確認するが、姿は見えない。オレたちは先へと進む。
コールはなぜ逃げた? ヤツが犯人なのか?
そんなことを思いながらも、オレはワクワクしていた。
刑事ドラマで憧れた刑事になった気分だ。
「いた!」
団地を通り抜けたところで、コールの後ろ姿を見つけた。
ペイジを呼んだほうがいいか? ああ、でもスマホとかはないし!
その時、オレのすぐ隣でかん高い音が鳴った。
クロエさんだった。二本の指をくわえて指笛を吹いたのだ。
ピッ! ピィイイーっ! と、最初は短く、次は長く吹く。すると遠くからピィイイーッ! ピッ! と長短を逆さにした笛の音が上がった。
時代劇で、岡っ引きが合図に吹く笛みたい…って、もしかして……。
「今のってペイジ?」
「護民兵が仲間を呼ぶ時の合図よ」
クロエさんは笑うと、もう一度、ピッ! ピィイイーっ! と指笛を鳴らした。
「よく知ってましたね」
そしてそれを指笛で行うなんて。やはり魔法使いって頭がいいんだな。
「護民兵には何度も追いかけられたからね。自然に覚えたの」
追いかけられる側だったんですか。クロエさん……。
恐怖!シリアルキラーの部屋…と思いきやの肩すかし。
ダイコンでルミノールが反応は割と有名らしいですが、ドラマとかではあまり見かけませんね。
プロがこんなことで手間取っては進行が遅くなるからでしょうか?
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