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まじらぼ 異世界こぇえ…(((;゜Д゜))) 魔法で科学捜査して冤罪を晴らす研究所 異世界のCSI  作者: GIN
File01 異世界で、科学捜査官ならぬ魔法捜査官になった件
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#1-2.遺体に事情聴取してみた

【まじらぼ 前回までは】

殺人現場の現場検証に来たソータ、クロエさん、サミちゃん。

犯人につながる手掛かりは見つからない。ネクロマンサーのクロエさんは、被害者の霊を呼び出し、事情聴取を行う──



     1



 もやもやした白い塊はみるみる死体と同じ姿、いや生前の姿へと形を変えてゆく。


「死したる霊よ。汝が声を聞かせよ。汝の心を語れ」

「……で…っきん……もう…くに……」


 オレの頭に、直接声が響く。


 霊の声だ。

 だけどその声はかすれ、途切れ途切れでよく聞き取れない。


 オレの魔力が低いからだ。電波が弱い場所での携帯みたいな感じかな。違うのはノイズがないことだ。


「はら~」


 となりでサミちゃんが驚いたような、あきれたような声を上げる。

 いったい何を語っているんだ?


 オレは霊の声に集中した。

 左耳に手を添えて霊の方に向ける。聞き耳を立てるポーズだ。魔法が存在する世界では、形から入るということが効果的なんだ。


 だんだん霊の声がはっきりしてきた。霊が語った言葉は──


「これでもう借金返さなくていいんだな。楽になれるならいいか……」


 だった。


「……残念でしたね」

「まあ、このくらいは想定内だからね。がっかりしてないよ」


 サミちゃんの言葉に、強がりを言う。


 死者の霊というのは、死の直前に思ったことや、強い心残りを一方的に語るだけだ。生きていた時と同じようにコミュニケーションをとれるわけではない。


「死因は後頭部への一撃だし、犯人の姿を見てないのかもね」


 霊を死体へ戻したクロエさんが言う。


 犯人を見ていれば、そしてそれが知り合いだったなら、霊は犯人が誰か語っただろう。


 だけど彼は犯人を見ていなかった。

 へたすると誰かに殴られたこと自体気付いてないのかもしれない。これでは証言できない。


「じゃあ、あとの作業はラボに戻ってからだね」


 気分を変えるため、明るく言う。


 世の中、そううまくことは運ばない。ここが魔法のファンタジーな世界でもだ。


「んじゃ、彼にはもうひとがんばりしてもらおうか」


 そう言うと、クロエさんはちょいちょいと指で招くような仕草をした。


 すると、被害者の死体がびくっと震えた。


 ぎく、しゃく……そんな擬音が聞こえそうな、ぎこちない動作で死体が立ち上がろうとしている。

 クロエさんが死霊術で死体を動かしているのだ。


「うわぁ……」


 オレは思わず数歩後ずさった。


 本物のゾンビだ。


 クロエさんのこの術を見るのはじめてじゃないけど、まだ慣れない。


 膝立ちになったところで、死体と視線が合った。


 ぞぞ…っと怖気が走る。


 次の瞬間、死体の膝がかくってなったかと思うと倒れた。顔面から床に倒れ、いやな音がした。


「硬直がハンパかな。もうちょっと硬いか、新しいと動かしやすいんだけど」


 クロエさんが眉をひそめながら、指をくいくいっと動かす。まるでマリオネットを操るような動作だ。


 見えない糸に操られるように死体が立ち上がる。


 ゆら、ゆら…と揺れながらも死体はとにかく立っている。


「うん、安定した。じゃ、帰るわよ」

「あ、待って下さい。これを」


 サミちゃんが、立ち上がった死体にフード付きのマントを着せた。これでぱっと見、死体には見えない。


 オレたちの魔法捜査研究所──略して魔捜研は、そのたいそうな名前と裏腹に、馬車の一台もない小さな研究所(ラボ)だ。

 だから現場から死体をラボに持ち帰る場合、死体に歩いていってもらうのだ。


「やっぱり、気味悪いですよね」


 と、サミちゃん。


 さすがの彼女も死体が歩くのは気味悪いのだ。


「ぎくしゃくしないで、しゃんとして歩いてくれればいいのですが……」


 しゃんと背筋をのばしてしゃきしゃき歩く死体……。


 それはそれでいやだぞ。



     2



「おう、おかえりなのじゃ」


 ラボに戻ると、リビング兼会議室にその人がいた。


 見た目は小学校高学年、10~12歳くらいの女の子。


 ソファに座って足をぶらぶらさせ、ちんまい両手でティーカップをもって、ふーふーしてお茶を飲んでいる。


 しかし、この外見に騙されてはいけない。


 ──大賢者ノーマ・ナージャ・コンリーロ。


 彼女こそ、このクレイエラ王国で最高の賢者にして魔法使いなのだ。


 若返り魔法を失敗したとかで、ほんとうの年齢は500歳を超えているという。その実力と名声は、王国はもちろん、大陸中に轟いているとかいないとか。

 ついでに、この魔法捜査研究所の所長でもある。


 もっとも所長なのにあまりラボにはいない。

 大賢者としての公務か、単に気まぐれなのか、ちょいちょい留守にするのだ。


「先生、いつ戻ってきたんですか?」


 クロエさんでさえこの人には敬語を使う。


「ん、ついさっき来たところなのじゃ。ほれ、お土産じゃ」

「わぁ、ありがとうございます」


 紙包みを渡され、喜ぶサミちゃん。


 包みの隙間からなんか黒いもの──両生類の干物のようなものがたくさん入っているのが見えた。


「先生~、アタシには~?」

「ちょっと待つのじゃ。たしかこの辺に……ほれ」

「やった! 先生ダイスキ!」


 金色の小さな竪琴がついたペンダントを渡され、クロエさんが子供みたいに喜ぶ。


 なんか、おばあちゃんと孫たちの会話みたいだ。

 そのおばあちゃんが見た目小学生だからヘンな感じだ。


「のじゃ子さん、オレには?」


 のじゃ子さん──オレはその特徴的な口調もあって、彼女をそう呼んでいる。


「もちろんあるぞ」


 と言って取り出したものは──


「なんですか? この猫の足跡みたいなものは?」


 たぶんキーホルダーだろう。

 3センチくらいの円盤が付いていて、そこにピンク色の猫の足跡が描かれている。


「かわいいです~」

「ケット・シーの足形ね」


 サミちゃんに続いてクロエさんが言う。


「厄除けのお守りなのじゃ。何かと不運なおぬしにぴったりじゃろ」


 と、のじゃ子さん。


 しかし、サミちゃんの言うとおり、かわいいアイテムである。

 女の子ならともかく、オレが身につけていたら笑われないか、これ。


「ちなみに」


 と、のじゃ子さんが小さな黒猫の置物を取り出した。

 大きさは10センチくらい。見た目は黒猫のダルマといった感じ。


「ソータが死ぬほど危険な目に遭うと、これの目が光って知らせてくれる」

「喜んで身につけさせていただきます」


 オレは腰を直角に折ってのじゃ子さんに礼をした。

 そして早速、ベルト通しに肉球キーホルダーを着ける。


 この世界はマジでこわいからだ。


 ちょっとした不運、うっかり口を滑らせただけで、とんでもない目に遭うんだよ。


 そう言えば、のじゃ子さんと出会った時もそうだっけ──



のじゃ子さんも加わり、魔捜研メンバーすべて登場しました。

次話から、主人公ソータが異世界に来て魔法使いヒロインたちと出会ってゆく物語がはじまります。

乞うご期待!


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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