#2-5.聖女さまって…コレが?
【まじらぼ 前回までは】
護民兵たちが捕らえてきた男フーゴはほんとうに殺人犯なのか? ソータのアイデア、のじゃ子さんの魔法でフーゴにかけられた容疑を晴らしたが──
1
「ケッ! 紛らわしい!」
「目障りだ! とっとと消えろ!」
不機嫌に怒鳴ると、三人の護民兵は出て行った。
オレを捕まえた騎士団と同じだ。謝罪の言葉もない。
これが、この国の警察に相当する組織なんだ。
「あんた何者だい? 今の、高度な魔法だろ」
ペイジがのじゃ子さんに尋ねた。
「わしは魔捜研の所長、大賢者ノーマ・ナージャ・コンリーロじゃ」
「大賢者さま! これはおみそれしやした」
ペイジが目を見開いた。
「さすが大賢者先生だ。コイツの腕のこと、よく気がつきましたね」
「気づいたのはソータじゃよ」
「……え?」
またしても驚くペイジ。
でも、今度のはなんかムカつく驚き方だ。ホントに? という顔でオレを見ている。
「こう見えてもこやつはマロウド──異なる世界から来た知恵者じゃぞ」
「へぇ、マロウドかい」
──稀迷客。
この世界では、別の世界から来た者をそう呼ぶ。
「あ、だからトイレのドアの前で脂汗かいてたのか! 魔力足りなかったんだ!」
そう言うと、ペイジはケタケタと声を上げて笑った。
こいつ、かわいいのは顔だけだな。くそう。
「迷惑かけたな」
笑い終えたペイジは、床にへたりこんでるフーゴの前にしゃがんで言った。
「詫びの代わりだ。その腕、アタイにみせてくれねぇか」
そう言うと、ペイジはフーゴの右腕に手をかざした。
「法と正義の神テージャスよ。我が祈りに応え、傷つきしものを癒やしたまえ」
かざした手の平に、白くやわらかな光が生まれた。
「ああ…痛みが消えてゆく…!」
フーゴが驚きと喜びの声を上げる。
マジで治っている。おまじないとかじゃなくて。
「ペイジって魔法使えるの?」
「神聖魔法じゃな」
驚くオレにのじゃ子さんが説明する。
「祈りを捧げることで神にアクセスし、その力を降ろす。それが神聖魔法じゃ」
「この世界って、神さまがいるんですか?」
魔法がある世界だから、神さまがいてもおかしくないけど。
「正確には、この世界にはいない」
「どういうこと?」
「お主の世界には魔法がない。その理由にも関わることじゃ」
2
のじゃ子さんの魔法や神さまの講義が始まった。
それをまとめると、次のようになる。
いわゆるマルチバースは、大きく分けると二つに分類される。
エネルギーが物質より優位な上位世界ハイアース。
物質がエネルギーより優位な下位世界マットアース。
エネルギーが優位になるほど、物質とエネルギーの境界はあいまいになるらしい。
境界が曖昧だから、物質からエネルギーを取り出すこと、エネルギーを物質に変換することが簡単にできる──これが魔法だ。
逆に物質が優位な下位世界では、物質とエネルギーはきっちり分かれてしまう。
物質からエネルギーを取り出すのは難しくなり、エネルギーを物質にすることはできない。
この下位世界では、魔法に代わって物理法則が支配する。つまりオレがいた世界だ。
オレらの世界で魔法や超能力が存在しないのは、物質がエネルギーより優位だから、というわけだ。
そして究極の上位世界では、物質はほぼ存在せずほとんどエネルギーだけになる。
そこにいる生命体はいわゆる精神だけの存在──これが神や天使という存在だ。
ちなみに悪魔がいる魔界もこの究極の上位世界だ。
のじゃ子さんが言うには、
「観測する者によって現れ方が異なる」
ということなんだけど、よくわからない。
とにかく、神とか悪魔は上位世界にいる精神生命体、エネルギー知性体だってことだ。
「ちなみに、わしらがいるこの世界はミドルアースと呼ばれている。エネルギーと物質の均衡が取れているのじゃ」
「だから魔法や神の奇跡が存在しているわけですか」
なんとなくわかった。……と、思う。
「ありがとうございます。おかげですっかりよくなりました」
治癒魔法が終わり、フーゴが治った右腕をぐるぐる回してみせた。その直後、フーゴのハラがぐぅ…と鳴った。
「ハラ減ってるなら神殿に来いよ。炊き出しやってるからよ」
「いや、しかし……」
「遠慮すンなって。そうだ、仕事も世話できるかもしれねぇ。すぐ行こうぜ」
善は急げとばかり、ペイジは立ち上がった。
「ペイジって、神殿に顔が利くんだ」
思わず声に出して言うとペイジは、
「へへ、今は護民兵やってるけどよ。ちょい前までテージャスの聖女だったんだぜ」
と、照れくさそうに笑った。
「せ、聖女ぉ?」
ヘンな声が出てしまった。
聖女って、清楚で、穏やかで、優しいってイメージなんだけど。ファンタジー世界じゃ違うのか?
「なンだよ? アタイが聖女じゃおかしいか?」
「いえ、意外だっただけです」
ペイジに睨まれ、オレはあわてて言い訳した。
「まあ、このナリだからな」
ペイジは苦笑して肩をすくめた。こいつ、アツくなるのも冷めるのも早いな。
「そうだ。ソータと先生も一緒に来なよ。礼に茶くらい飲ませてやっからよ」
「礼って?」
「こいつが無罪って証明してくれたじゃねぇか」
と、フーゴを指差すペイジ。
「冤罪はよくねぇ。下手人を捕まえるのは大事だが冤罪はよくねぇ」
つぶやくように言うペイジ。
その顔は、真剣というか思い詰めているようで──
バンっ! とペイジが手を打った。
「よし決めた!」
「な、何を?」
「お前ら魔捜研は信用できそうだ。手ぇ組んでやるぜ」
手を組む? 協力してくれるってことか?
「この二代目ペイジさまが協力してやるってンだ。ありがたく思えよ!」
そんなわけで、護民兵で元聖女のペイジが仲間になった。
しかし、なんで上から目線なんだよ。コイツは。
魔法が科学の代わりをしている文明。
つまり魔法にも法則がある…という考えと、ファンタジー民おなじみの「中つ国/ミッドガルド」から上位世界と下位世界、魔法ある世界とない世界、その理由を考えてみました。
いかがでしょうか?
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