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まじらぼ 異世界こぇえ…(((;゜Д゜))) 魔法で科学捜査して冤罪を晴らす研究所 異世界のCSI  作者: GIN
File01 異世界で、科学捜査官ならぬ魔法捜査官になった件
12/57

#1-12.魔法の世界で科学捜査

【まじらぼ 前回までは】

試験で不正を働いたとの疑惑をかけられたサミちゃん。疑惑を晴らすべくソータが思いついたのは、指紋検出だった──



     1



 この白い粉こそ、サミちゃんの無実を証明するものだ。

 まさかキッチンで作れるとは思わなかったけど。


「皮膚の水分と脂肪分が、微細な塵を取り込んで指紋の形を残す。それがどうかしたのか?」


 白髭の先生が、何を当たり前のことをという顔をする。

 他の先生たち、そしてエリスも同じような顔をしている。


 この世界でも指紋は存在し、そのことは知られていた。しかし──


「まあ、これを見ろ」


 さっさっさっと空中に光の数式を描いてのじゃ子さんが言う。


 フィニッシュの二本線の後、右手でコップを、左手で黒板を指した。すると黒板に、人の頭くらいの大きさに拡大された指紋が投影された。


「よく見ておれ」


 と、のじゃ子さんがちょいちょいっと右手の指を動かすと、二つ目の指紋が現れた。拡大倍率は同じ、つまり同じサイズだ。


「右がソータの指紋。左が学長、お主のものじゃ」

「はあ」


 白髭の先生が曖昧にうなずく。

 あの人学長だったのかよ。オレは今さら緊張した。


「ソータによれば、指紋の形は人それぞれ違う。二つと同じものはないとのことじゃ」


 のじゃ子さんが右の指を動かすと、二つの指紋がスライドし、一つに重なった。異なる指紋が重なり、ごちゃっとしたものになる。


「はあ」

「まだわからぬか?」


 戸惑うアカデミーの先生たちに、のじゃ子さんは苦笑した。


 そう、この世界では指紋の存在は知られていたが、それを使って個人を識別するという考えはなかったのだ。


 オレたちの世界でも、指紋の存在は何千年も前から知られていたが、犯罪捜査に利用されるようになったのは1880年代からだ。(ドラマでみた)

 犯罪捜査の「は」の字もないこの世界では知られてなくて当然なのだ。


「準備できましたぁ」


 サミちゃんの声に振り向くと、イーサーの壺が白い指紋まみれになっていた。


 みんなが黒板の指紋を見ている間、サミちゃんはイーサーの壺の指紋を検出していたのだ。


 のじゃ子さんが右手を一振りすると、黒板に投影されていた指紋が消えた。そしてイーサーの壺のそばに移動し、先ほどと同じ魔法──拡大投影を行う。


 コップの時と同じように、黒板に、壺に残された指紋がいくつも投影される。


「ざっと見たところ、イーサーの壺に残された指紋は二、三人というところじゃな──サミ?」

「はい、こちらです」


 サミちゃんが自分の指にインクを塗り、それを用意してきた紙に押し当てた。


「見るがいい」


 のじゃ子さんは、紙の上のサミちゃんの黒い指紋を黒板に投影。そこにイーサーの壺にある指紋のひとつと重ねた。


 サミちゃんと壺の指紋は一致しない。つまり別人のものだ。


 次から次に、同じ倍率で拡大した指紋が重ねられた。

 サミちゃんの指紋と同じものはひとつもない。


「イーサーの壺にサミの指紋はない。サミが触れていないことの証明じゃな」



     2



「しかし、それは素手で触れていないというだけでは?」


 教師の一人が言う。


「その通り。じゃから次は、誰がこの壺に触れたのかを特定する。アカデミー全ての生徒と教師から指紋を採り、壺のものと照合すればよい。もっとも──」


 そこでのじゃ子さんは、エリスのほうを見た。


「そこまで手間をかける必要はないかな。のう、エリスよ」


 先生たち、それにサミちゃんがエリスのほうを見た。


 エリスは見るからに動揺していた。

 唇を噛み、拳を握りしめている。そして、


「そうですわ! 壺をあの子の部屋に置いたのはわたくしですわ!」


 髪をかきむしり、エリスは叫んだ。


「どうしてこんなことしたんだ?」


 サミちゃんを陥れたエリス。オレは許せなくて声を上げた。


「あの子が嫌いだからですわ! アカデミーから消えてほしかったのっ!」


 オレの問いに答えるように、エリスのサミちゃんへの罵倒がはじまった。


「はじめて会った時から気に入らなかった。田舎郷士の娘のくせに、このわたくしを、平民と同列に扱って!」


 サミちゃんは誰に対しても丁寧に、敬意を持って接する。

 それがサミちゃんのいいところだ。ところがエリスはそれを侮辱と受け取った。


 ドジっ子で失敗ばかりだけど、サミちゃんは周りから愛されている。それがムカついたという。


 極めつけは、サミちゃんがコンクールで入賞したことだった。


 ちょっと懲らしめてやれ、という軽い気持ちでエリスは、不正の告発文を出した。


 ところがサミちゃんは頑として不正を認めない。


 エリスは焦り、ムカついた。

 そこでイーサーの壺を持ちだし、サミちゃんの部屋に隠したのだった。



     ×   ×   ×



「まさかサミちゃんを嫌うヤツがいるなんて思いませんでしたよ」


 エリスが自供した後、オレとのじゃ子さんは、二人でアカデミー内のカフェに来ていた。


 先生たちは、エリスの処分とサミちゃんへの相談があるとのことで、別室で話している。


「まだ若いな」


 苦笑してのじゃ子さんが言った。


「憧れと嫉妬、愛憎の分岐はささいなものじゃ。自分と正反対の人間を好ましく思うこともあれば、自分を否定する存在と映ることもある」


 そう語るのじゃ子さんは、幼いのに賢者の顔をしているように見えた。


 気がつけば、太陽は街の建物の近くにまで降りていて、世界を赤く染めはじめていた。


 もう夕方か…と思った時、サミちゃんが戻って来た。


「先生、それにソータさん。本当にありがとうございました」


 ぺこり、とサミちゃんはお辞儀して言った。


「これでサミちゃん、アカデミーに復帰できるね」


 エリスのことは結果としてサミちゃんを傷つけてしまったけど、これで万事解決だ! と、オレは思ったのだが──


「自主退学を勧められました」


 力なく笑って、サミちゃんが言った。



     3



「な…なんで?」

「エリスさんだけを退学処分にしたら、後々困ることになるみたいです。ですから、わたしも、と」

「エリスの家──ソーエラ伯爵家は大貴族じゃ。アカデミーへの寄付も多いからな」


 のじゃ子さんが言う。


「サミちゃん、まさか承知したの?」


 オレの問いに、サミちゃんは小さく頷いた。


「どうして!!」

「わたしが、エリスさんを傷つけていたことは事実ですから」

「そんな! そんなことって──」


 大声を上げようとするオレの手を小さな手がつかんだ。のじゃ子さんだ。


「察してやれ。この状況でサミがアカデミーにいられると思うか?」

「お二人は、わたしが不正を働いていないことを証明してくれました」


 涙をこぼしながら、サミちゃんは笑ってみせた。


「それで十分です。ほんとうに、ありがとうございました」


 そして、ぺこりとお辞儀をするとオレたちに背を向けた。


 帰って行くサミちゃんの細い背中を、オレはただ見送るしかなかった。


「アカデミーのバカ共が。この国は、有能な術師を一人失ったぞ」


 のじゃ子さんが冷たい怒りを燃やし、吐き捨てた。


「何も…できなかった…!」


 オレは頭を抱え、うずくまった。


 サミちゃんを助けられたと思ったのに、学校に復帰は叶わなかった。

 真犯人を見つけたけど、サミちゃんを傷つけただけの結果になった。


「お主はサミを救ったぞ。疑惑を晴らし、名誉を回復したのじゃ」


 ぽんぽんとオレの頭をたたいてのじゃ子さんが言った。


「ヘタな慰めはよしてください」


 小さい女の子に慰められるのがカッコ悪くて、オレは顔を上げられなかった。


「いやいや、お主の知識と機転は大したものじゃ。さすがはマロウド。この大賢者すら思いもよらぬ知恵がある」

「ドラマの知識ですよ」

「科学捜査とかいうヤツじゃな。それをこの国でやってみないか?」

「えっ?」


 いきなりの申し出に、オレは思わず顔を上げた。



流行りでない物語。

今時の主人公でないソータ。

この物語、思いついたのが2019年で、そういうの気にしてなかったんですよね。

冤罪を晴らすのは、「ざまぁ」に近いかな? 近づけたほうがいいのかな?

悩みながらの公開です。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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質問やツッコミも大歓迎ですよ!

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