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破滅エンドの回避なんてめんどくさいっ!〜悪役令嬢の私は異世界を満喫しつつ五年の余生で国を滅ぼそうと思います!〜  作者: 冬哉


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28.ノアの復讐

「ヒィ……ヒィ……。まったく、誰だぁ? ゾンビなんてもん捕まえてきた阿呆は」


 荒くれ者たちに運ばれて、屋敷に逃げ延びたガーランドは、一際豪華に装飾された無駄に広い自室の椅子に座り息を整える。


「ガーランドの旦那、これからどうするんですかい? ラドスはもう終わりですぜ」


「黙れ! そんなことはわしもわかっておるのだ……」


 ジャラジャラとブレスレットを揺らし、指輪が大量に着いた手を組み考え込むガーランド。だがその時、彼が今背を向けている窓ガラスに、十数の人影が映り込む。


 バリンッ!


 人影が窓を割り、ガーランドの部屋に降り立つ。


「なっ……なぜゾンビごときが二階の窓から入れる?! お主らは何をしておる! さっさとゾンビどもを殺せ!」


 荒くれ者たちに指示を出すガーランド。彼の指示に従い、十数人の体格に恵まれた荒くれ者たちが十体のゾンビに襲いかかる。


「ゾンビなんてザコアンデットが、調子乗ってんじゃねぇ!」


 一人の血気盛んな荒くれ者が、他の荒くれ者より早くゾンビの群れに飛び込んだその時、


「やりなさい」


 ゾンビたちの陰から、凛とした冷たい美声が室内に響き渡る。すると、ゾンビたちはそれに呼応するように、一斉に行動を開始した。


「ハァ?! おい待っ……」


 ズババババッ!


 ゾンビの群れに飛び込んできた荒くれ者は、ゾンビたちが武器を抜くついでに切り刻まれた。さらに、ゾンビたちはウルフを彷彿とさせる機敏な動きで荒くれ者たちを間合いに捉えた。


「舐めんじゃね……ガハッ?!」


 短剣持ちのゾンビは軽やかなツーステップで荒くれ者の拳をかわし首をはねる。対してモーニングスター持ちのゾンビは、剣を持った荒くれ者の攻撃と真っ向から打ち合い、武器ごと荒くれ者の体を破壊。


 そうして、アンデットとは思えない知性とルヴィアの支援魔法によって強化された身体能力によって、荒くれ者たちは程なくして全滅した。


「バカな……なんだそのゾンビどもは?! どうしておまえがここにいるのだ、ノア! おまえの死体は下水道に流したはずだろうに……」


 椅子からずり落ち、腰が抜けて床に尻もちを着いたガーランドに、ノアはゆっくりと近寄る。一歩一歩憎悪を込めて響かせるノアの足音に、ガーランドはたまらず震え上がり、尻もちをついた体勢のまま後退る。


「ガーランド。おまえはあたしが何故ここにいるのかと聞きましたね」


 ノアはゾンビたちが荒くれ者たちを生きたままむさぼり喰らう横を通り抜ける。それでも荒くれ者たちの掠れ果てた悲鳴も気にせず、ノアはガーランドに殺意のこもった鋭い眼光を向け続けた。


「あたしがここにいる理由? そんなもの、あたしのお母さんを散々痛ぶった挙げ句、貧民たちの前に捨てたおまえが許せないからに決まっているじゃない!」


 ノアはガーランドが身に付けている三種類のネックレスを力任せにむしり取り、胸ぐらを掴む。そしてもう片方の手に持った短剣をガーランドの喉元に当てた。


「それにおまえは……あたしの人生を十七年奪った。何の罪もないお母さんからも二十年以上……。おまえさえいなければ、お母さんは今も故郷で幸せに暮らしていたはずなのに……おまえさえ、お母さんを攫わなければ!」


 感情的になったノアが持っているブラックダイヤモンドの装飾された短剣が小刻みに揺れる。それにより、短剣を当てられていたガーランドの首から血が少し流れる。


 するとさっきまで怯えきっていたガーランドは、やけを起こしたようにノアの首を握り返す。


「おまえらをどうしようがわしの自由だろうがぁ! わしには地位も武力も財力だってある。強者が弱者を蹂躙し、強者が弱者から全てを奪うのがこの世界のルールであろう? わしは強者が常に持つ当然の権利を振るったまでだ! 誰にも責められる筋合いはない!」


「そんなことはわかってる! それでもあたしはおまえが憎い、この町の全てが憎い!」


「だが、おまえのような生まれながらの奴隷に何ができる! このようなおぞましい力に頼っていてもいずれは王国騎士団や教会がおまえを殺す。最初からおまえには、何一つ権利なんてものはねぇんだよ!」


「後のことなんてどうでもいい! あたしはおまえを殺すことさえできれば充分……」


「ヒヒッ……おまえのような奴隷ごときがこのわしの命を奪えるなどと、本気で思っておったのか?」


 そう言ってガーランドは、短剣を持ったノアの手首を握った。その握力に、ノアは思わず短剣を落とす。


「無駄な抵抗をしないで! ……あたしにはまだゾンビがいます」


 ノアは荒くれ者たちの肉体を貪るゾンビのうちの二体に指示を出し、ガーランドに向かわせる。その指示に従い、二体のゾンビは左右からガーランドの腕を掴み、ノアからガーランドを引き剥がす。そしてそのまま、ガーランドを壁に押さえつけた。


「これでもまだ、あたしにはおまえの命を奪えないと、そう言うのですか?」


 ノアは機械的な声音で問いかけた後、落とした短剣を拾おうと、上体を屈めて手を伸ばす。短剣を拾い、上体を起こそうとしたその時、


「やれえぇぇええぇぇ!」


 ガーランドが突如叫び出した。それと同時に二筋の光線がゾンビたちの頭を貫き、ノアの髪を掠める。


 今何が……?


 ポニーテールに結んだブロンドヘアが肩に垂れてくる中、ノアはゆっくりと顔を上げる。すると、目の前でガーランドは金の歯を見せ、卑しい笑い声を上げていた。


「ヒヒッ! どうだ? わしにだって戦力はまだあるのだよ。人体改造を施した最強の戦闘奴隷『魔獣混成奴隷』がなぁ!」


 そう言うガーランドの後ろには、四本腕のケンタウロスと言った見た目の男が二張の弓に光属性が付与された矢を番えていた。他にも、氷の体に羽を生やした女や、コウモリの羽に長い鉤爪、さらには全身からウネウネと蔦が生えた男も後ろに並んでいる。


 苦しそう……すぐ、楽にしてあげます。


「やはりおまえは地獄に落ちなさい」


 魔獣混成奴隷の横には、彼らを操っていると思われる灰髪に仮面をつけた男がいた。ノアはすぐさまゾンビたちに指示を出し、仮面の男を攻撃させる。


 ピシッ……。


 だが、統制がとれたゾンビたちの素早い動きは、氷女の氷結魔法によって封じられた。


 そして、動きの止まったゾンビたちをコウモリの羽根が生えた男が蔦でひと撫で。すると次の瞬間、全てのゾンビは灰になって消えてしまった。


 あたし一人では無理でしたか……本当は自分の力だけで復讐を遂げたかったのですが。


「ヒヒッ……ヒィハハハハハ! これでおまえは終わりだノア! 奴隷の分際でこのわしに逆らっておいて、タダで死ねると思ってはおらんだろうなぁ?」


 勝ち誇った笑みを浮かべ、醜悪な想像を膨らませるガーランド。対してノアは俯き、深いため息を吐く。


 その姿を見て、ガーランドはますます得意げな表情を浮かべてノアの顎を無理やり指で押し上げた。


「なんだぁ? 後悔してももう遅いぞノア。おまえはその寿命が尽きるまでわしが……」


「お願いします……ルヴィア様」

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