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【連載版】破滅エンドの回避なんてめんどくさいっ!〜悪役令嬢の私は余生で国を滅ぼそうと思います!〜  作者: 早川冬哉


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11.山賊狩りと野営

 山賊の頭領と思しき男が声を張り上げると、山賊たちは一斉に私に向かって雪崩れ込む。対して私は、走る足を止めずに剣を鞘から引き抜いた。


「死ねやクソガキィィ!」


 山賊の一人が、私の喉元目掛けてナイフを投げる。


 カキンッ!


 私は剣でナイフを弾くと、そのまま山賊たちの集団に斬りかかる。


「オラァ!」


「死ねぇ!」


 遅いし単調……これじゃあ稽古用のカカシと変わらないじゃない。私が求めているのは実践なのに……。


「はぁ……」


 飛びかかってくる山賊たち。その手に握られたナイフや剣が私に触れる──その寸前、私は剣を閃かせ周囲の山賊たちを斬り伏せた。


「なんだ今の剣技……早すぎないか?!」


「ルヴィアってやっぱりすごい……」


 目を見開いて私を見るゼルとセレナ。すると、杖を構えたユークは魔力の高まりを感じ取り、ゼルに合図した。


「ゼル。ボクはいつでもいける」


「わかった……ルヴィアさん!」


 スパパパッ!


 襲いくる山賊たちを軽く斬り捨てる。そうして山賊たちの中心に入り込んだ私は、リーダーらしき人物に視線を送った。


「この程度じゃ剣を試せないよ……もっとマシな相手はいないの?」


「ァアアッ! んだとテメェ! ……オメェら! その調子に乗ったクソガキに、世の中の厳しさってもんをわからせてやれ!」


「「「オウッ!」」」


 半分近くにまで減った山賊だが、それでもまだ三十人以上は残っている。


 数だけって……一番面倒くさいシチュエーションよね……。


 先程までと同じように飛び込んでくる山賊たち。その学習能力の無さに呆れつつ、私は大きく後ろに跳んでゼルたちの側に戻った。


「ユークさん。お願いします」


 私の言葉にユークは無言で頷くと、凝った装飾の施された杖を掲げ、呪文の最終節を唱えた。


「テンペスト」


 その途端、ユークの視線の先には木が十本以上は入りそうなほど太く、空高くにまで伸びる巨大な竜巻が発生した。


「うあぁぁあぁぁ!」


 竜巻はユークが杖を振ったのと同じ方向に移動していき、残っていた山賊たちを空高く巻き上げた。


 ……この人たちはボスにボコボコにされてた印象が強いけど、やっぱりAランク冒険者ってだけあって実力はあるのね。


 私は風属性魔法の応用で索敵魔法を行使し、山賊に生き残りがいないことを確認する。そして、山賊たちの死体の前まで歩き三人を振り返った。


「この死体はどうしますか?」


「このまま放置する。山賊とはいえ、俺もこのまま遺体を放置するのは忍びなく思う。だがアード殿下の護衛が最優先だ」


「わかりました」


 あの山賊たちの死体、使えそうね……。


 私は三人の元に戻る前に、こっそりと死体に保護魔法をかけてから馬車の前まで戻った。


***


「ちょうど日が暮れてきたな。予定通り、今日はこの湖沿いで野営するぞ」


 馬車を止め、私たちは各々野営の準備を始めた。御者たちは馬の世話をし、ゼルとユークがテントの設営。私はセレナと薪代わりの落ち枝を拾いに森に入った。ちなみにアードは当たり前のように馬車の中でくつろいでいた。


 今日の山賊、まともな実力を持った人が一人もいなかったせいで剣術ほとんど使えなかった……。


「はぁ……」


 肩を落としてトボトボと薪を拾い集める私に、セレナは心配そうに視線を送る。


「ねぇルヴィア、平気なの? 人間をその……あれしたのって初めだよね。気分悪かったりしない?」


「うん……そんなことはどうでもいいんだけど、剣術を実践で試せなかったことが残念で……」


「そんなことって…… まあ、ルヴィアが平気ならいい……のかな?」


 一転して私に若干引き気味になったセレナは、拾った落ち枝の一つをクルクル回して話題を変えた。


「ルヴィアは剣術を試したいの? だったらさ、ゼルさんに模擬戦を頼んでみたらどうかな。ゼルさん、剣の腕は確かだよ……まあ、今日のルヴィアの剣技を見て、早すぎるっていってたんだけど……」


 なるほど模擬戦ね。実践に近そうだしいいかも。スピードだけ抑えれば、多分ゼルさんの技量ならいい経験になりそうよね。


「ありがとうセレナ。あとでゼルさんに聞いてみる」


「うん。それがいいよ……ってみんなもう準備できてるみたい。早く戻ろう」


 セレナに促されて小走りに野営地に戻ると、ちょうどゼルさんが干し肉を配っているところだった。


「セレナ、ルヴィアさん。薪は拾えたか?」


「はいっ! もちろんです!」


 私とセレナも薪を置いて干し肉を受け取る。そうして私たちは焚き火を囲むように座り、干し肉に齧り付いた。


 それにしても、アードが大人しいおかげで思ったほど面倒な旅ではないかもね。


「ルヴィア。よくそんな普通に食べられるね。わたし干し肉が硬すぎで、いつまで経ってもなれないのに……」


 顎に力を入れたり、手で思い切り引っ張ったりして干し肉を食べるゼルとユークと、クッキーでも食べるかのようにモシャモシャと干し肉を食べる私を見比べて、セレナが羨ましそうにしている。


「うーん……多分私は筋力値が高いから、干し肉が硬いとは感じないのよね」


 そういえばよくアニメでも、干し肉って硬いイメージあるな。それが気にならなかったのは多分、レベルアップごとに能力値が二倍になるせい……。


 ガチャン!


 セレナの言葉を気にせず、私がモシャモシャと干し肉を食べ終えた頃、唐突に馬車の扉が開かれた。


 さっきのフラグになっちゃってたかぁ……。


 アードは今の私と同じ十三歳でありながら、地位を鼻にかけた傲慢な態度で馬車から降りると、何も言わずに真っ直ぐ私の前まで歩き、立ち止まった。


 えっ……?! 認識阻害魔法はかけてあるし、私がシルヴィアだってことバレてないよね?

この話を読んでいただきありがとうございます!


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