93.御曹司との出会い
佐々木とリベラが去った後、ノアとメイリンはホテルの近くで見つけた賑やかな飲み屋にいた。
「チッ、ここに来た目的が惑星領主に会うことだから仕方がないけどさぁ」
メイリンはグラスを傾けながら不機嫌そうに唇を尖らせた。
「まあまあ」
賭けに負けたノアは楽しげに笑い、テーブルの上のスナックをつまんでいた。
ノアは周囲を見渡し、少し顔をひそめた。
「ねぇ、メイリン。さっきから視線を感じるんだけど」
メイリンは視線を動かさずに笑い飛ばした。
「そりゃそうだろう。ノアちゃんみたいな美人が、それも2人もいれば目立って当然だろ」
「あのさ。言っとくけど、私の方が年上なんだからね!」
「何言ってんの?29歳と30歳の1歳なんて、誤差みたいなもんだろ」
メイリンの言うことは意外と正しいと、ノアは妙に納得してしまった。
「そうやって、すぐ納得してくれるノアおねえちゃん大すきー!」
「だいぶ酔ってるね…」
酔っぱらいとの言い争いの不毛さに今更ながらにノアは気がついた。
その時、爆音を鳴らす車が店の前で停車した。
小さなヒョロっとした男を先頭に、柄の悪そうなお付きを従え、3人組が、店内に入ってきた。
彼らはまっすぐにノアとメイリンのテーブルに向かってきた。
後ろの男のひとりが、馴れ馴れしい口調でメイリン達に声をかけた。
「おい、おまえら。こんな店で女ふたりで飲んでないで、俺たちといい所にいかないか?」
メイリンは男を冷たい目で見上げ、グラスを指で叩いた。
「私もノアちゃんも男にゃ困ってないよ。ガキはどっかいきな」
「いいから来いよ」
男はそう言って、ノアの腕を掴もうと手を伸ばした。
その瞬間、メイリンが手に持っていたグラスを男の顔面に投げつけた。
男は後ろにひっくり返り、気を失った。
もうひとりの、いかにも強そうな大柄な男がテーブルに近づいてきた。
メイリンは椅子から立ち上がり、不敵な笑みを浮かべて挑発した。
「わたしが遊んでやるよ。にいちゃん、表へ出な!」
そういうと、男はきびすを返し、メイリンの先を歩いて店を出ようとした。
メイリンは背中を無防備に見せる男を見て、ニヤリと笑ったかと思うと、その後頭部めがけて、近くの客の机にあった瓶を使った。
ガラスのくだける音にみなが気がついた時、大柄な男も床に倒れていた。
メイリンは鼻で笑い、まだ立っているヒョロっとした男の方を見た。
「メイリン、ちょっと待って。あなたって、もしかして、この星の領主の関係者?」
ヒョロっとした男は、ビビりながらも、領主の息子だと言った。
メイリンもノアの意図を察した。
「なるほどねぇ、そういうことか」
ノアは笑顔に戻り、ヒョロっとした男に向かって言った。
「いいわ、じゃあ、あなたの家で飲み直しましょう」
外に止めてあった車の運転席にメイリンが座り、ホーンを鳴らした。
「お前ら、道を開けろー!御曹司さまのおとーりだぞ!」
メイリンの傍若無人ぶりに、さすがに父親に怒られると御曹司は腰が引けていた。
ノアは助手席で笑いながら、もっとスピードを出せとメイリンをあおった。
そして、壁を擦り、ぶつけること十数回、車は佐々木たちが向かった広大な邸宅へと到着した。




