91.資源予測
緊急放送が鳴り響く中、リベラはラウンジの通信設備を介してゾルグに連絡を取った。
ゾルグは、緊急放送で理由もわからずパニックに陥っていた。
「なんだ? 今は緊急事態で忙しい!」
ゾルグは荒々しい声で応答し、一方的に通信を切ろうとした。
「お待ち下さい!今、話を聞かないと後悔することになりますよ」
リベラは冷ややかなトーンで言い放ち、ゾルグの動きを止めた。
ゾルグが無視して通信を切ろうとした所、隣にいた秘書がゾルグの耳元で冷静に何かを囁いた。
ゾルグは一瞬ぎょっとした顔を秘書に向けたが、すぐに落ち着きを取り戻し、通信機の前に戻った。
「…続けろ」
リベラは説明を始めた。
「今、ここへ向かっている宇宙船団は我が社のものです。あれはただの資源運搬船です」
「バカなことを言うな!宇宙船団の規模を理解しているのか?お前たちに依頼した資源にしては、あまりにも数が多すぎる!」
ゾルグは再び声を荒げたが、リベラはすぐに目録の内容を確認するよう促した。
「先ほどお見せいただいた目録、最終ページまで確認してください」
ゾルグは疑念を抱きながらデータパッドを確認した。
本来、資源調達とは、採掘から始まるものや、複雑な加工を必要とするものなど、非常に長いリードタイムを必要とするものもある。
消費量を予測できるものは価格変動リスクを抑えるため、需要予測を立て、前広に調達者に情報を提供する事がある。
ゾルグが渡した、目録の最終ページには、その需要予測が記載されていた。
その期間は、実に10年分。
リベラは淡々と続けた。
「そちらに書かれている資源のすべてを、我が社はご用意いたしました」
ゾルグは驚愕に目を見開いた。
「バカを言うな!そのような契約を結んだ覚えはない!」
リベラは、佐々木に小声で何かを話しかけると、佐々木は静かにうなずいた。
リベラは再びゾルグに向き直り、余裕の笑みを浮かべた。
「社長の許可がおりましたので、それでは、今回の資源は無償でご提供させて頂きます」
ゾルグはそれを聞いて、一瞬停止した後喜びだした。
実に10年分の資源をタダでくれると言うのだ、喜ばない理由がない。
しかし、隣の秘書がゾルグを押し退けて通信に割って入ってきた。
「佐々木さん、お待ち下さい。我々のステーションには、このような量の資源を保管する保管庫が存在しません。正規の料金をお支払いいたしますので、予測分の資源はお持ち帰り頂けないでしょうか?」
佐々木が返答しようとするのを、リベラが静かに手を上げて静止した。
「はい。それがそちらのお望みでしたらそのように対応いたします」
秘書は安堵の息をついた。
「ありがとうございます。かさねがさね申し訳ありませんが、お支払い手続きに少々お時間を頂きたく、本日はわが星の宿泊施設にお泊まり頂けますでしょうか」
佐々木たち4人は、カース星の豪華なホテルの一室に案内された。
佐々木とどっちが一緒に寝るか、ノアとメイリンが隣の部屋で交渉している中。
佐々木はリベラに話しかけた。
「何であの秘書さんは、資源の提供を断ったんだろうね?」
「良識のある人物は断ると思いますよ。だって私たちにはハイローラーを呼び込むほどの信用は今はありませんから。でも…」
扉をノックする音にリベラは話を中断した。
「信用はまだありませんが、今日の出来事は、ハイローラーの気には引っかかったかもしれませんね」
佐々木に許可をもらい、入口の扉を開けるとゾルグの秘書が立っていた。
「失礼します。この星の領主が、皆様にお会いしたいと申しております」




