87.古き仲間と新しい技術
ギルは会議を終えると、佐々木たちがいるテーブルを後にし、食堂の一角で談笑していた古い馴染みの輪に向かった。
アード、オリーヴ、そしてゼウスの3人は、50年前の旧アヴァロン建設時代商人のギルと親交を深めた仲間たちだった。
「オリーヴ、元気そうだな」
ギルはオリーヴの肩を叩いた。
オリーヴは皮肉めいた笑みを浮かべ、ギルを見た。
「ギルじゃないか。アンタの話をしてたところさ。130歳にもなって全身チタンの義体のお前さんほどではないさ」
オリーヴは肉体のままに、歳を重ねた風格のある75歳の女性だった。
ギルはオリーヴの隣にいる、若い男と目があった。
こんな若い男の知り合いはいないはずだが、昔の馴染みのような、懐かしさを感じる男だった。
一瞬、記憶に引っかかる人物を思い出した。
「もしかして、ゼウスか?」
「ギルさん。久しぶりだ、この姿になってからは初めて会うな」
ゼウスの実際の年齢はアードと同い年の80歳だったが、現在の義体の見た目は30歳前後だった。
ちょうど、始めてギルと会った頃の姿に似せている。
アードが説明した。
「ギルさんが、驚くのも無理はない。ゼウスは2年前に不慮の事故に遭って死にかけてな。なんとか、ゴースト・スキャンで意識をデジタル化することができたそうだ。アークで義体を作り中に入ったのが数日前。我々と出会った頃の姿にしたものだから、混乱しただろう」
ギル自身もほぼ全身が義体で構成されているが、生体部分を補う形で、継ぎはぎの老人の外見をしている。
一方、ゼウスの姿は生体部分がまったくない、若者と見間違う姿をしていた。
ギルは興味津々といった様子でゼウスの義体をまじまじと見つめた。
「なるほど、そういうことか。生体部分のない完全な全身義体なのか」
「ええ、その通りです。私の意識データがこの義体を動かしています。若返った体であなたと話せるのは嬉しいですよ」
そう言ってゼウスは微笑んだ。
「最近の技術進歩は恐ろしいな。まさか、ココまで見分けがつかないとは」
ギルは感嘆した。
その時、メイリンに腕を引っ張られて食堂を出て行く佐々木の姿がギルの目に入った。
「アイツは一体、なんであんなにモテるんだ? 」
アードは肩をすくめた。
「佐々木? 見ての通り、ああいう人間だからな。常識のあるいい奴だ。権力や富に溺れず、弱者に手を差し伸べる。あのアークの女たちは皆、男に苦労してきた者ばかりだろう。彼のようなタイプは、この世界では稀少価値だ」
ギルは鼻を鳴らした。
「愛想が良いだけでは、この世界で生き残れん。だが、言われてみれば、奴は確かに妙な優しさを持っている。それが女どもには魅力的に見えるか」
ギルは佐々木への疑問を残しつつも、ゼウスの若々しさの方が気になるようだった。
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