83.プロジェクトの再始動
佐々木の部屋。
環境光が穏やかに室内を照らし、佐々木はベッドの上で目を覚ました。
彼の隣では、セレネが佐々木の胸元に頭を寄せ、安らかな寝息を立てている。
佐々木は静かにセレネの柔らかな髪を撫でた。
昨晩、佐々木が食堂から連れ出された後、2人は久しぶりの再会を分かち合った。
アヴァロンの食堂には、リベラと、アード、そしてアテネが、かんたんな食事を摂っていた。
食堂の扉が開き、佐々木が入ってきた。
その片腕には、すっかり機嫌の良くなったセレネが抱きついている。
佐々木は皆に恥ずかしそうに微笑みかけ、着席した。
リベラが、言葉を選びながら口を開いた。
「佐々木様。昨晩は、…」
リベラが言い切る前に、アテネが笑顔でカットインした。
「さみしくはなかったんじゃない?」
佐々木はセレネの方を見ながら、さらに恥ずかしそうに答えた。
「おかげさまで。いつもありがとうございます」
「皆さま。本日は改めて、新たな協力者についてお話させてください」
食事が落ち着いたところで、リベラが改めて状況を説明し始めた。
「まず、オリーヴさんについてですが、リリィさんから出発の通信が入りました。予定ではもうすぐこちらに到着します」
「続いて、ゼウスさんについてですが、現在、新しいボディへの換装中です。ゼロさんがそれに付き従い、サポートを行っています」
それから数時間後、食堂の扉が再び開いた。
入ってきたのは、オリーヴと、彼女に付き添うリリィだった。
「リリィ!」
リーナが席を立って駆け寄った。
アードはオリーヴを見て、ニヤリと笑った。
「オリーヴ!お前もアヴァロンに未練があったんだな」
「アード。久しぶりだね。そういうアンタも私と同じなんだろ。今度こそ誰も攻め込めないアヴァロンが作れそうだね」
歓迎ムードの中、オリーヴは周囲を見回した。
「ところで、ゼウスはどうなったんだい?」
リベラはオリーヴの質問に穏やかに答えた。
「はい、オリーヴさん。このプロジェクトへの参加を、無事、了承していただきました」
「ただ、ゼウスさんは...」
リベラが言葉を選び続きを話そうとした所、食堂の扉が再び開いた。
そこには、背が高く、引き締まった体躯を持つ男が立っていた。
男のすぐ後ろには、アンドロイドのゼロが付き従っていた。
その姿を見たアードとオリーヴは、同時に大声を上げた。
「「ゼウス!」」
「おお、オリーヴじゃないか。ひさびさだな」
そう答える男は、40代の姿をしていた。
「せっかく義体に入るなら、40年前の姿にしてみたんだがどうだ?」
「義体って、何があったんだい?」
ゼウスは手短に自分に起こった出来事をオリーヴに説明した。
「ってことは、その体には脳みそを含めて一切の生体組織はないってことかい?…なんというか、なかなか業の深い技術だねぇ」
そんな話を年配組で話し込んでいると、食堂にノアが入ってきた。
リベラはノアに語りかけた。
「ノアさん。新しいメンバーを紹介しますね」
ノアはリベラに今はいいと返事をして、セレネに近づいた。
「セレネさん。じゃぁ次は私が佐々木さんをお借りしますね」
佐々木を引いて食堂から出ていったノアをみてアテネが言った。
「ハーレムの主に休みはなさそうだね」
「では、ゼウスさん、オリーヴさん。このアークと新生アヴァロンについて先に説明させて下さい」




