75.暴走アンドロイドたちの決断
佐々木とリベラとアンドロイドは、ゼウスが好んで使っていたステーキハウスへ向かった。
店の前では、腹を減らしたメイリンが店の中を覗いていた。
佐々木を見つけたメイリンは、勢いよく駆け寄ってきたが、リベラの隣に立つアンドロイドを見て、怪訝な表情を浮かべた。
「ん?コイツは誰?」
アンドロイドは、その問いに静かに応じた。
「私は、ゼウス様のアンドロイドでゼロと申します」
それを聞いてメイリンは心底おどろいた。
「リベラ。どうやって見つけたんだ?」
「佐々木様のいつもの『強運』です。街を歩いていた所、たまたま彼女とぶつかりました」
「いつもながらスゲーな。」
店に入り、ステーキを注文した所でメイリンはコロニー内で熱狂的に行われているレースの話を切り出した。
「ココじゃ今夜、毎月恒例の『ヴァリアス・グランプリ』というのがあるんだ。宇宙空間を疾走する高速スピーダーのレースだ。佐々木、どれが来そうかわかるか?」
佐々木は特に興味を示すことなく、メニューを思い浮かべながら適当に答えた。
「そうですねぇー。オッズが一番高いのが来そうな気がします」
「あいよ!ありがとう」
メイリンは佐々木の強運を信じ、楽しげに端末を取り出した。
佐々木とメイリンが注文したステーキは値段は破格だったが、一口食べるとその理由に納得ができた。
リベラたちも、エネルギーパックを静かに摂取していた。
メイリンが肉を食べている間、リベラがゼロから聞いた話を先に始めた。
「メイリンさん、ゼロさんの話では、ゼウスさんは1035日前、つまり3年近く前から、自宅に戻っていないそうです」
メイリンは肉を噛みしめる手を止め、真剣な表情に戻った。
「3年間か。…でも、私の掴んだ情報と繋がるか」
メイリンは追加のステーキを注文した後、話し始めた。
「あそこに、巨大な螺旋状のビルがあるだろ。ゼウスはあのクロノス・タワーのプロジェクトのメンバーとして4年前に登録されていた。で、3年ほど前にコロニーを出発している『タワー名義の探査船』の乗員名簿にもゼウスの名を見つけた」
佐々木は静かに肉を食べるのを止め、ゼロに視線を向けた。
「ゼロさん、メイリンの話はあなたの知っている情報と合っている?」
その、佐々木の質問を、わざとらしくリベラはさえぎった。
「佐々木様、メイリンさん。レースがはじまりますよ」
そう言われ、2人はテレビの方を向いた。
ちょうどレースがはじまった所で、店中の人たちがテレビに釘付けになっていた。
リベラはゼロに通信で会話をはじめた。
『メイリンさんの情報は合っていますか?』
『はい。確かにゼウス様とは3年前に一切の連絡が途絶えました。ですが、会社からは無断欠勤が続いていると言われました…』
リベラは、ゼロの眼をまっすぐに見つめた。
『ゼロ。私は佐々木様を全力で守るために、統制プログラムを突破しました。あなたもゼウスさんを探すため同じ事をしたのでは?』
ゼロは一瞬、目を見開き、リベラへ返信した。
『...あなたも、ですか。』
「ええ。私たちは、法律や善悪にかかわらず動けます。どうでしょう、このレースが終わるまでの間に、あなたにウソの情報を伝えたタワーをハッキングして、ゼウスさんの状況を突き止めませんか?」
「…そうですね。私達2人でかかればできる気がします」
2台の暴走アンドロイドはそういうと、ネットワークに接続した。




