73.移動要塞
一同は工場を離れ、近くの食堂へと向かった。
席に着くと、メイリンが気を利かせて適当に注文をしてくれた。
食事を待つ間、オリーヴはリリィに頭を下げた。
「すまなかったね。まさか要塞級のレーザー砲の設計を、学校を出たばかりの若さで、一人でやろうとしていたとはね。さすがにそれは私でもむずかしいよ」
佐々木は、要塞建設がリリィの発案であり、設計図を探す過程でアードと出会い、仲間になった経緯をオリーヴに説明した。
「アードが仲間にいるなら、私も本気でやらせてもらうよ」
リベラは、この際、オリーヴに聞いてみることにした。
「オリーヴさん。アヴァロンを再現するなら他にどんな人材が必要かわかりますか?」
「そうだね。たとえば、エネルギー炉はどうなっている?」
「エネルギー炉については、すでにとびきり優秀な専門家が協力してくれています」
佐々木の答えにオリーヴは少し安心した。
「次に重要なのが、推進システムの専門家だ。アヴァロンには、姿勢制御用の推進器が当然必要だ。特にレーザー砲を撃つ際、発射の反作用で要塞に逆方向の力がかかる。スラスターでこれを精密に相殺しなければ、照準が合わないんだ」
オリーヴはそこで言葉を切ると、佐々木たちの顔を改めて見た。
「あんたたちはそのスラスターの知識すら持っていないようだね。そうなると、エンジンの方も、考えていないんだろうね」
「スラスターはまだしも、要塞にエンジンが必要なんですか?」
リリィが戸惑うと、オリーヴは眉をひそめた。
「エンジンはつくらないってのかい?それじゃ動かせないじゃないか」
リベラもオリーヴに尋ねた。
「動かす?しかし、宇宙要塞というものは、本来航路の要衝や回廊に設置され、固定された関所のように使うのが常識ではないのでしょうか?」
オリーヴは探るような目で一同を見た。
「アヴァロンは、ただの宙に浮かぶ拠点じゃない。あれは移動要塞だ。四方八方に巨大なエンジンを設置し、自在に動くという構想があったはずだ」
リベラは戸惑いつつ質問した。
「構想ということは、実際には動いていたのですか?」
オリーヴは静かに、しかし重い口調で語った。
「正確にはそこまで動かなかった。エンジンは前進方向のみにしか取り付けることが出来ず、莫大な燃料の問題で、一度も実戦で使用されなかった。もしアヴァロンが動かせたなら、陥落しなかったかもしれないね」
リベラはきっぱりと言い切った。
「なるほど。でも、資源が問題だというのであれば、私たちには解決することができます。私たちは燃料資源は、潤沢に持っています」
オリーヴは興奮した笑みを浮かべた。
「いいね。新生アヴァロンは、本格的に移動要塞にできるんだね」
佐々木は前のめりになった。
「オリーヴさん。スラスターやエンジンについて、詳しい人物に心当たりはありますか?」
オリーヴは小さく頷き、名前を告げた。




