66.栄光の島流し
ノアはギルのカジノ部門で番頭補佐を務めていた。
新しいカジノの経営をそろそろ任される頃、ギルから呼び出しを受けた。
社長室に入るとギルと妻のリラがいた。
「いいんじゃないかい」
リラの意味不明な評価の翌日、ノアは『異動』と称して宇宙船に乗せらた。
ノアは宇宙酔いがひどく、外を見る余裕がなかったため自分がドコへ連れて行かれているかわからなかった。
宇宙船はどこかのドッグ入港し、その船内に入る直前、ギルが耳打ちした。
「ココのAIアンドロイドのリベラは自分で統制プログラムを突破した人知を超えた存在だ。くれぐれも注意しろよ」
船内へ入ると、ギルはリーダーらしき青年に話しかけた。
「カジノの経営に詳しい優秀なヤツを連れてきた。コイツをココにいさせて欲しい。オレとの連絡役にもなる」
佐々木と呼ばれるその男は、どこにでもいるような印象の薄い男だった。
しかし、ノアにはギルがこの男を自分よりも評価しているように見えた。
ギルは佐々木の方を見て、ニヤリと笑った。
「あと、お前のハーレムに参加させたいなら、自分で交渉しろ。オレはそこまでは面倒見切れん」
どうやらこの部屋にいる女性陣はみなこの佐々木という男のハーレムメンバーであるらしかった。
中には10代の者もいるようで、見た目と違いかなり好色な男なのかもしれない。
特に隣の下着姿の女性は、ニヤニヤとこちらをいやらしい目つきで眺めてくる。
ギルが帰ると、うわさのリベラが近づいてきた。
「ノアさんの部屋へご案内いたします」
案内された部屋は清潔だったが、ビジネスホテルのような簡素な作りだった。
船内の気密エリアはかなり狭く、ブリッジと食堂、あとはやたら豪華な温浴施設がある程度だった。
「なんなんだろう、この船は?」
この時になって、リラの査定の意味がわかってきた。
どうやらノアはハーレムメンバーとして送り出されたのだと。
しかし、なぜだろう?
仕事は誰よりもそつなくこなしていたため、30にしてカジノの経営者になろうとしていた自分が。
ノアは自分が何か知らない間に失敗をしていたのかと考え込んだ。
翌朝、ノアは食堂に行くとリベラが話しかけてきた。
「ノアさんには、カジノを立ち上げていただきたいと考えております」
ノアは深く沈み込んだ。
「ココで?一体誰を相手に?」
島流しジョークだろうか?
リベラは提案した。
「ノアさん。佐々木様のハーレムにご参加いただければ、生活や仕事は格段にしやすくなりますよ」
さっそく来た誘いに、ノアは即座に拒否した。
「馬鹿にしないで!なんで私がそんなことをしないといけないの?ねぇ、私はどんなミスをしてココに左遷されたの?」
リベラは静かに答えた。
「どちらかというと栄転ではないでしょうか。ドッグ入港の際、建造中の要塞を確認をされませんでしたか?」
リベラはホログラムを映し出した。
それは、宇宙空間に浮かぶ、直径80キロの巨大な球形の骨組みだった。
「こちらが、現在建設中の要塞、アヴァロンです。ノアさんには、この要塞の経済的な心臓部となる、カジノの総責任者として、全てをプロデュースしていただく予定です」
ノアは茫然としながらもたずねずにはいられなかった。
「そ、そんなものを作る資金や資源がどこにあるの?」
リベラは即座に答えた。
「このアークには、資源は十分にありますよ。ギルさんのところにも最近はかなりの資源を納入しているのでご存知ではないでしょうか?」
ノアは最近の資材部門の好調を思い出していた。
突発的に発生する資源不足の高騰に合わせるかのように、最近の資材部は大量の資源をどこからか融通し、異常な利益を稼ぎ出していた。
ギルとリラは自分を世界最高の舞台の適任者として、この大型プロジェクトに送り込んでくれたのだ。
リベラは穏やかに微笑んだ。
「誤解がとけたようでなによりです。先ほどのハーレムの件ですが。佐々木様は今、お一人で入浴中でございます。ノアさん。懇親を深めに行ってはいかがでしょうか?」
ノアは、その誘いに乗るべきか、しばらく考えた。




