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宇宙船は俺の楽園~百年の眠りから目覚めた、孤独な億万長者~  作者: まいぷろ
第11章:義体と裏社会

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58.依頼の終結

『佐々木様、ご心配なく。私は問題ありません』


「リベラ!?頭が、…頭部が破壊されてるのに!?」

佐々木は混乱した。


佐々木の混乱を無視して、端末からリベラの声は続いた

『頭部は破壊されましたが、頭部にはカメラや通信機能しか搭載されていませんので、破壊されても致命的ではありません。システムがショートした際、一時的に通信が切断されました。その後、コア側の通信機能に接続を切り替えるのに時間がかかったため、ご連絡が遅れました』


その説明に呼応するかのように、リベラの左胸のあたりがパカッと開き、内部の機構から『黒く光る小さな玉』が姿を現した。


『佐々木様。その黒い玉が、私の全てです。これをアークに持ち帰っていただければ、最新の記憶を持ったまま私は復活できます』


リベラは佐々木に今後の進め方を伝えた。

『さらに重要な情報です。破壊される直前にゲインから話を聞きました。彼は以前から街でアンドロイドや義体化の女性を見つけては、システムをショートさせ、この家でバラバラに破壊していたようです』


メイリンが部屋を見渡すと、部屋の隅にいくつかの損傷した女性型アンドロイドや義体らしき部品が散らばっているのが見えた。


「くそっ、コイツ...趣味の悪い変態野郎だ!」

メイリンが吐き捨てた。


『はい。あの中には捜索願が出ている人もいるでしょう。そこで、ゲインが逮捕され、この猟奇的犯罪が明るみに出れば、ゲインの独断で実施していたセレネさんの技術回収依頼は白紙に戻るのではないでしょうか』


「でも、どうやって通報する?普通にやったら、お前たちの素性が割れる可能性があるぞ」

メイリンは警戒した。


『私のボディには、セキュリティのため自爆装置が組み込まれています。これを遠隔で起動させれば、このマンションに警察と消防を呼ぶことができます』

リベラは提案を語った。


佐々木はゆっくりとリベラの体へ近づき、その左胸の黒い玉を、震える手で優しく掴み取った。

コアはほのかに温かく、微かに振動していた。


『我々の痕跡を削除します。佐々木様とメイリンさんは外へ出て下さい』


「行こう、佐々木!」

メイリンは佐々木の腕を引っ張り、2人は階段を駆け下りた。


2人がマンションのエントランスを抜け、雑踏に紛れた直後、マンションの上階からドンッという爆発音が響き、割れたガラスが落ちてきた。


火災警報が鳴り響き、高層マンションの緊急放送が騒然とした空気を生んだ。


翌日、佐々木がホテルでテレビを見ていると、昨日の火災のニュースが流れた。

「ー昨夜、都心の高層マンションの一室で火災が発生しました。現場には警察と消防が急行し、火は間もなく鎮火されました。原因は部屋のガス漏れとの報告が消防からー」


ニュースではゲインのこと報じられず、あくまでガス火災が発生したとだけ流れた。

メテオラ社の影響力により、ゲインの犯罪は隠蔽され、無罪となる可能性さえ見えてきた。


「チッ、大企業の力ってやつか」

メイリンは舌打ちをした。


その時、佐々木の端末が通知音を鳴らした。

それはリベラからの通知だった。


『佐々木様、メテオラ社の動きは想定内です。ゲインに頭部を破壊される直前の映像データをネット上の匿名掲示板に流出させました』


流出された動画の内容は、やめるよう懇願する女性をに対し、ゲインがまさに小型チェーンソーを突きつける、短くて非常にインパクトのあるものだった。


『彼の猟奇的な趣味と犯罪は、すでに広く拡散され始めています』

リベラの言う通り、動画がホンモノか、この男は誰なのかと特定班が動きだしていた。


メイリンもその場で自身の端末を操作し始めた。

「おもしろいな。私の知り合いの記者に、マンションの火災が単なる事故ではないこと、そしてゲイン開発部長の『コレクション』に関する情報を流すぜ」


数時間後、佐々木の端末にドレッドノートからの通信が入った。


『メテオラ社から連絡があった。ウチへの依頼は正式にキャンセルになった』ドレッドノートの声は落ち着いていた。


「そうですか」

佐々木の返事はそっけなかった。


『会社の重要人物の醜聞が明るみに出たことで、社内は対応に追われている。今、我々とのつながりが明るみに出ることは避けたいだろう』

ドレッドノートはここで一度話を切り、本題に入った。


『改めてオレから申し出がある。お前たちの能力は、オレたちにとっても有用なことが証明された。これから、ギルと同じように、お前たちとも手を組むことを約束しよう。なにか困ったことがあれば、いつでも相談に乗ろう』


佐々木は静かに頷いた。

「わかりました。今後とも宜しくお願いします」


すべての問題が解決したが、佐々木の心は浮かなかった。

佐々木はコアを大事に握りしめ、今回払った代償に後悔していた。


しかし、もう、用がすべて済んだ今いつまでもここにいても仕方がない。


「メイリンさん。じゃぁ行きましょうか。僕らの家へ招待しますよ」

佐々木はメイリンに声をかけ、ルインキーパーでアークに戻ることにした。

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― 新着の感想 ―
マシンボディは頭部が弱点とは限らないは鉄板だけど無事というか生き残ってよかった。 リベラの印象が強すぎて他のヒロインが覚え切れない。他のヒロインにも活躍の場を。エネルギーやロボットの専門家なのは分かる…
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