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宇宙船は俺の楽園~百年の眠りから目覚めた、孤独な億万長者~  作者: まいぷろ
第11章:義体と裏社会

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57.予期せぬ問題

タクシーでゲインの自宅へ向かう道中、メイリンは口を開いた。


「佐々木。作戦前、リベラから言われた話を伝えておく」

メイリンは静かだが真剣な声で言った。


「リベラは言っていた。『自分は母船にバックアップを取っているため、自分を助けるためにアンタが危険になる事だけは避けてほしい』と」


佐々木は息を呑んだ。リベラが自身の破壊の可能性まで想定していたことに、胸が締め付けられた。


「私も、アンタを第一に考え動くことを約束した。だから、無茶はしないとアンタも誓ってくれ」

メイリンは佐々木を真っ直ぐに見つめ、佐々木は深く頷いた。


タクシーを降り、二人は2人の形跡を探した。


メイリンはすぐに近くの監視カメラをハッキングした。


カメラは、エントランスからエレベーターへと向かうゲインの姿が映っていた。

ゲインは、まるで大きな人形を運ぶようにして、リベラを肩に担ぎ強引に連れ帰っていた。


「ちくしょう!急ぐぞ!」

メイリンは即座にマンションに潜入することにした。

義体化された左手でセキュリティを無効化し、ゲインの部屋がある階までエレベーターで移動した。


佐々木がメイリンの後を追う途中、突然、佐々木の端末が通信を受信した。

画面には『リベラ』と表示されている。


「メイリン。リベラが再起動した!だが、映像と音声がとぎれとぎれだ!」


『…佐々木様、…再起動しました…。まだ不安定ですので、突入は…少し待ってください…』

途切れ途切れのリベラの音声が端末から流れた。


2人はゲインの部屋の前に到着した。


佐々木はメイリンを見て言った。

「リベラの指示を待ちましょう」


メイリンも義体の左手をドアノブにかけながら頷いた。

「わかった。突入指示を待つ」


しかし、待機して数秒後、大きな破壊音と共に、リベラとの通信は完全に途絶えた。

端末はノイズを吐き、リベラの表示も消えた。


「くそっ!また切れたか!これ以上待てない。今すぐ奴がリベラに何をするかわからない!行くぞ!」

メイリンはキーロックを解除し、佐々木と共に室内へ突入した。


部屋の中央には、黒いイブニングドレスを着たリベラの体があった。

リベラは十字架のような台に、手足を拘束されていた。

その異常な光景に2人は一瞬立ち止まった。


一番異様だったのは拘束された頭だった。

その頭部は激しく破壊され、内部の金属骨格と配線が露わになっていた。


ゲインは破壊されたリベラの横に立ち、血のようなオイルで汚れた小型のチェーンソーを握っていた。


「リベラ!」

佐々木は悲鳴のような声を上げ、ゲインのチェーンソーも気にせず、リベラに近寄ろうとした。


メイリンはゲインの手元の凶器に気づくや否や、佐々木の首根っこを掴み、驚くほどの力で大きく後ろへ放り投げた。

佐々木は後ろの壁にぶつかり、一瞬息が止まった。


ゲインは、突然の侵入者に驚愕の表情を浮かべていた。


メイリンはゲインに走りよった。

義体の左手に全ての力を集中させ、避ける間も与えずゲインの顎を、全力で殴りつけた。


鈍い打撃音と共に、ゲインの体は宙を舞った。

ゲインはその瞬間、意識を失い、そのまま床に倒れた。

チェーンソーはゲインの手を離れ、安全装置がはたらき急停止した。


佐々木は破壊されたリベラに近づいた。

自身の無力さと、リベラを危険に晒したことを激しく後悔し始めた。


その時、佐々木の端末に再び通信が入った。


「佐々木様、ご心配なく。私は問題ありません」


画面を確認すると、発信元は確かに『リベラ』と表示されている。

通信は音声のみだったが、いつもの落ち着いたリベラの声だった。

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