53.暴走AIの交渉術
メイリンが組織と連絡を取り終えると、すぐに3人はタクシーに乗り込んだ。
タクシーは、周囲の高層ビル群と比べても異彩を放つ、漆黒のハイテクビルの前で止まった。
「メイリンさんここまで、いろいろありがとうございました。また、機会があれば一緒に食事でもしましょうね」
サラリと挨拶をしてタクシーを降りる佐々木の後につづいてリベラがメイリンにコソコソと話しかけた。
ビル入口には、重装備で武装した警備員が複数人立っており、ものものしい雰囲気を醸し出していた。
タクシーを降りたメイリンは、入口にいるリーダー格の男に話しかけた。
「男を連れてきた」
佐々木とリベラは警備員たちに囲まれ、そのままビルの中へと連れて行かれた。
リーダー格は無言で、厚みのある茶封筒をメイリンに手渡した。
中には、足がつかないよう高額紙幣の札束がぎっしり詰まっていた。
「佐々木。あとはうまくやれよ」
メイリンは受け取った封筒を強く握った。
2人を乗せたエレベーターは最上階で止まった。
2人は警備員に促され、豪華な調度品で飾られた部屋に通された。
部屋の中央には、一人の男が座っていた。
まだ若いが、鋭い眼光と、特注品らしきスーツを身に着けており、この組織のボスだとすぐに分かった。
ボスは椅子から立ち上がらず、佐々木を値踏みするように見つめた。
「お前が、セレネを連れ去って、俺達の船を沈めた男か」
佐々木はボスのセリフに驚いた。
「沈めた?えっ!リベラそうなの?」
「いえ、佐々木様もご存知のとおり、私たちの船は彼らの船を巻いただけです。その後、行方不明になったのではないでしょうか?」
証拠がないことをいいことに、リベラは自分たちは関係ないことを主張した。
「そうなんだ。それは災難でしたねぇ」
佐々木は心底つらそうな顔でボスに答えた。
ボスは苛立ちを抑え、話を続けた。
「ギルの紹介だから、生きたままココへ連れてきたが、どうやって落とし前をつけるんだ?」
佐々木は臆することなく、冷静に問い返した。
「ちなみにあなたは、どういった答えを望んでいるんですか?」
ボスは椅子に深く座り直し、冷たい目で言った。
「かんたんだ。セレネを渡…」
「それはできません」
佐々木は即座に提案を断った。
「ほう」
ボスは顎に手をやり、挑戦的な笑みを浮かべた。
「お前らなぞ、いつでもひねりつぶせるんだぞ。それがわかっているのか?」
その言葉を聞いた瞬間、隣にいたリベラが佐々木の前に一歩出た。
「それは、私たちも同じです」
ボスは面白がるように笑った。
「なんだと?俺たちの力を、舐めているのか?」
リベラは言葉を重ねた。
「繰り返しになりますが、それはそちらも同じでは?」
ボスは熱くなり、テーブルを叩いて立ち上がった。
「そこまで言うなら、お前らの実力を見せてみろ!」
リベラは通信をするように動きを止めた。
そして、少し間を置いて、部屋の隅の大型モニターを指さした。
「…では、テレビをつけてください」
ボスは不審に思いながらも、電源を入れた。
画面には、ニュース速報が流れていた。
『…南部の荒野にて、所属不明の不審船が墜落しました。幸い、墜落地点周辺には荒野のため人的被害はなかった模様ですが、半径50メートルの範囲が、何らかの強烈な爆発によって跡形もなく吹き飛んでいることが確認されました…』
リベラは、冷然と言い放った。
「これで証明になりますか?半径50メートル。あの所属不明の不審船が、このタワーの真上に落ちたら、このビル程度は跡形もなくなるかもしれませんね」
ボスの顔から余裕が消えた。
彼は再び椅子に座り、リベラの脅威的な言葉に真剣に耳を傾けることにした。
「…わかった。交渉をはじめよう」
最近皆さんからいただく評価はかなり嬉しく、書いてよかったと思えます。
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