47.3人の最適解
佐々木のカジノ経営の提案にギルも興味を持った。
「金儲けの匂いがするな。その話もっと詳しく聞かせろ」
ギルは身を乗り出して言った。
佐々木は微笑んだ。
「ありがとう、ギル。実はね、今、アークの大量の資源を隠すため、宇宙要塞を作っているんだ。そして、その要塞は豪華なカジノを併設したリゾート施設として経営したいと思っている。で、そのカジノ経営を、誰にお願いしようかと考えていたんだ」
ギルはそこまで聞くと、膨大な資源を持つものの優位性を見抜いた。
「なるほどな。カジノは元手が大きければ大きいほど勝てる。資金源となる希少金属を大量にもつアークは確かに最適だ。一度その施設を見てほしい。話はそれからだ。」
佐々木はさっそく、ギルたちをアークへ案内することにした。
ギルは佐々木が乗るルインキーパーに乗らず、自分で準備した船に乗りルインキーパーに続いた。
ギルたちを曳航するルインキーパーの船内で、リベラは沈黙を破り、佐々木に謝罪した。
「佐々木様、この度の交渉は、私の好戦的な態度がギルさんとの関係をこじらせたことを反省しております。本当に申し訳ございません。」
佐々木は優しくリベラの肩に手を置いた。
「謝らなくていいよ、リベラ。君が僕のことを第一に考えてくれているのはよくわかっているから。今回の君の行動はまちがってないよ」
リベラは固い表情で続けた。
「しかし、結果的に佐々木様が全資源を差し出すという極端な決断を下されたことが、セレネさんの問題解決を導く最適解となりました。私の交渉論理では到達できない結果です。私は、感情や人間関係を考慮した判断基準を、今後優先すべきか否か、自己の見解を改善する必要があると感じています。」
佐々木は笑って答えた。
「リベラ。君は今のままでいいんだ。リベラが全てを完璧にこなす必要はないよ。誰かが足りない部分を補っていれば、それはそれでバランスが取れているんじゃないかな?僕がリベラをサポートする点もあっていいんじゃない?」
すると次は、これまで黙っていたセレネが、佐々木につっかかった。
「でも、佐々木さん、私のために資源をすべて渡すなんて、もう二度と言わないでください!あなたの行動はいつも極端すぎます!」
セレネは自分でも怒るべき内容ではないことを理解はしていた。
しかし、どういう態度をとるべきか感情をコントロールできずそんな口調で佐々木に言ってしまった。
佐々木は驚きながらもしっかりした口調で答えた。
「全然たいしたことないよ、セレネ。だって、リベラがいれば僕らはいくらでも資源は集められるんだから」
リベラはすぐに反応し、佐々木の言葉を裏付けた。
「お任せください。現在の総量でしたら、私が全力で取り掛かれば3年以内に集められます」
その回答に3人は驚くも、逆に笑いだしてしまった。
気を取り直し、佐々木はセレネに向き直り、静かに言った。
「まぁ、リベラもこういってくれてるし。僕はセレネの方がずっと大事なんだ」
その言葉を聞いたセレネの瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちた。
「佐々木さん。ありがとう…」
セレネは絞り出すように言って佐々木に寄りかかった。
出発から2時間ほど経過し、佐々木はギルの船に通信を入れた。
「ギルー!もうすぐ建設中の要塞が見えるよー」
しかし、すでに進行方向を見ていたギルは口を開けたまま止まっていた。
そこには、直径80キロにもなる球体の骨組みが見えていた。
「おいおい、こりゃアヴァロンじゃねーか…」
ギルは昔の記憶を思い出していた。
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