39.強運が呼んだ出会い
ルインキーパーに乗り込んだ佐々木、セレネ、リベラは、佐々木の故郷であり、宇宙有数のクルーズ拠点として知られる惑星、セレニティへ向かった。
到着した街は、まさに豪華客船の停泊地にふさわしかった。
巨大なドックには、宝石のような輝きを放つ絢爛豪華な宇宙船がひしめき合い、毎日、新しいクルーズが出港と入港を繰り返している。
街全体が観光と快適さを追求した設計になっており、佐々木はアヴァロンに求めている最高の生活空間を学ぶにはうってつけの場所だと確信した。
佐々木は、この街でかつて勤めていた会社についてリベラに尋ねた。
「佐々木様の元所属のアビス・シップヤードは、100年前の大事故により廃業しています」
佐々木はわずかに表情を曇らせたが、すぐに切り替えた。
佐々木は数あるクルーズの中から、評判の宇宙クルーズを予約した。
3人で1週間、5000万クレジットという破格の旅費だったが、未来の快適さのための必要な投資だと考えた。
彼らが選んだ豪華客船は、それ自体が一つの空中都市のようだった。
船内は巨大なアトリウム、温室、劇場、カジノ、そして人工重力を用いたビーチなど、驚くほど多様なアミューズメント施設で溢れていた。
佐々木たちの日課は、午前中にセレネが興味を持つ重力制御システムやエネルギー効率、午後に佐々木が楽しむアミューズメント施設やレストラン、というように分かれていた。
3人は毎晩、その日の施設やサービスから「アヴァロンにどれが必要か?」を真剣に議論した。
クルーズも終盤に差し掛かった頃、船内で一人の女性がセレネに声をかけた。
「セレネ博士ですよね?まさか、ここであなたにお会いできるとは。」
セレネが驚いて振り向くと、そこに立っていたのは知的な雰囲気を持つ女性だった。
彼女はアテナと名乗り、この豪華客船の建築師だという。
アテナは興奮した面持ちで、セレネのファンであることを熱く語った。
「ぜひ、あなたとの会話をゆっくり楽しみたいのですが。よろしければ、今夜、夕食でもご一緒しませんか?ご同伴の方も一緒でかまいませんので」
「ありがとうございます。一度、同行者に確認して参ります」
セレネは戸惑いつつも、アテナにそう伝えてその場を離れた。
自室に戻ったセレネは、佐々木とリベラにアテナとの出会いを報告した。
リベラは即座にデータベースを検索し、アテナの経歴を確認した上で、静かに言った。
「彼女は私たちが今一番欲している人材です。ぜひプロジェクトに協力をお願いしましょう」
佐々木もリベラの提案にうなずいた。
「じゃぁ、今日の夕食の場で、アヴァロンのコンサルタントをお願いしてみましょう」
こうしてセレネが、アヴァロンの未来を左右する重大な交渉役を担うことになった。
夕食の席でアテナはセレネの発表した論文や、非公開の新型炉のプロトタイプについて言及した。
続いて、この船のアミューズメント施設の設計、特に人体の快感と負荷のバランスを取る技術にについて熱く語った。
セレネもアテナの話に合わせ、自分の意見や知識を披露し夕食会は進んでいった。
「セレネ博士は、船の内部構造にも、ご興味があるのですね」
アテネのそのセリフを受け、セレネは交渉を切り込んだ。
「実は今、宇宙に巨大施設を造っているんです。アテネさん。もしよければ、その施設のコンサルタントになってくれませんか? 」
「よろしければ、もう少し詳しい話を聞かせてもらえませんか?」
アテネもセレネが関与する巨大施設というものに興味を持った。




