38.創生の第一歩
「計画の開始に先立ち、皆様に支援者を紹介します」
リベラが指示すると、5体のリベラによく似た、女性型アンドロイドが入室してきた。
「アードさん、リリィさん、リーナさん、セレネさん。この四体のアンドロイドは、私のコアシステムから派生した作業特化型です。皆様の助手としてお使い下さい」
四人は、自分専用の高性能AI助手が与えられたことに、驚きと喜びの表情を浮かべた。
リベラは最後に残った1体を指した。
「そしてこの5体目は、アーク全体の防衛に特化させております」
アヴァロン計画の作業ロードマップがリベラによって展開された。
巨大なホログラムスクリーンには、要塞のワイヤーフレームと、膨大な作業項目が時系列で表示されている。
リベラは淡々と、しかし明確な口調で構築の段取りを語り始めた。
「まず、簡易エネルギー炉を構築し、大規模な工事のスタートに必要な電力を確保します。次に、その電力を使って、リーナさん主導で建築ロボットを大量生産し、作業員を揃えます」
続いてワイヤーフレームの構築の段取りを説明した。
「そしていよいよ、要塞の骨格作りです。要塞の中心に位置する主炉区画を核として、そこから宇宙空間に垂直に一本の背骨(中心軸)を構築し、上下の基準点(極)を定めます。次に、その背骨に沿って、最も太くなる中央部分(赤道部)を完成させます。この赤道部が主炉稼働の基礎になります。最後に、赤道部から上下の極へ向かうように、ドックや防御システムを収めるための円環構造を順に組み上げ、球状の巨大なワイヤーフレームを完成させます」
リベラはセレネに質問した。
「セレネさん、まずは、アヴァロンの初期構築に必要な大規模な電力を賄う簡易エネルギー炉を最優先で構築していただけませんか? ナノマシンによるサポートは全力で行います」
セレネはコメットを優しく抱きしめながら答えた。
「ええと、ナノマシンが使えるなら、プロトタイプの組み込みは... たぶん、1週間くらいあれば、一応、初期構築に必要な電力はカバーできるだけのものは作れると思います」
セレネの謙虚な言葉を受け、アークの作業が開始された。
セレネはリベラが指揮するナノマシン群と共に簡易炉の構築に集中した。
一週間後、セレネの簡易エネルギー炉が稼働を開始した。
その出力は、彼女が控えめに言っていた予測を大きく上回り、アヴァロンの初期構築に必要な電力が安定的に供給される体制が整った。
簡易エネルギー炉の安定稼働と、建築ロボットによるワイヤーフレーム構築の目覚ましい進捗を確認した佐々木は、次の重要なステップである本格的なエネルギー炉の制作に入る前に、一つの決断を下した。
佐々木はブリッジで一仕事お終えた、セレネに話しかけた。
「次の主炉の設計に入る前に、ちょっと休憩をしませんか?」
セレネが怪訝な顔をすると、佐々木は続けた。
「快適な空間の徹底調査ってことで、豪華客船の宇宙クルーズに一週間ほど行きたいと思うんだけど、どうかな?」
こうして佐々木は、セレネとリベラを伴い、アヴァロン建設の現場を一時的に離れ、極上の快適さを探る旅へと出発することになった。




