34.エネルギー問題と幸運
アークへの倉庫見学を終えた一行は、船内の食堂で、食事を取りながら会議を開いた。
佐々木に抱かれていた小型犬は、佐々木の膝の上で寝息を立てている。
「アークの資材量は、もう疑う余地がないわ。あとは、おじいちゃんの要塞計画の実現化は、エネルギー問題と、要塞を構築するロボットの問題だけね」
佐々木は優しい口調で頷いた。
「そうですね。次は快適に過ごせるように生活環境改善にもっと力を入れたいです」
リベラがここで、冷静に喫緊の課題を指摘した。
「佐々木様。確かに生活環境の改善は重要ですが、先に解決すべき問題があります。現在の要塞化計画の前提として、QOL向上のために、生命維持エリアを拡張し、建設・資材管理用のロボットを増強することは不可避です」
リベラはさらに続けた。
「しかし、これらのプロジェクト、何より要塞の再構築を前提とするならば、現状のままではエネルギーが決定的に不足します。どう考えてもエネルギー問題を先に解決しないと、アヴァロン計画全体が停止します」
リベラの明確な指摘を受け、リリィが設計図を見ながら補足した。
「あらたなエネルギー炉の構築は最優先事項です。でも、ココは誰にも手に負えません」
リーナとリリィは、この分野で名が知られている複数の技術者の名前を挙げた。
ここにいる誰もが、知らない名ばかりだった。
リベラは、佐々木の今後の活動を支援するため、新たな計画を提案した。
「今後の大規模工事のサポートのため、私から派生した5体の補助AIロボットを構築しようと思います。構築完了には時間が必要ですが、本日よりプロセスを開始します」
会議が終わり、彼らの地元である惑星ゼニスへ戻る途中今後の方針を決めた。
アードとリーナとリリィは準備のためそれぞれ活動する事になった。
宇宙港にて、3日後に再びここに集合することを約束し、解散となった。
解散後、リベラは佐々木に伝えた。
「佐々木様、その犬の飼い主から連絡が着ています」
佐々木は小型犬を抱き、リベラと共に、飼い主がいるという家へ向かうことにした。
飼い主の女性は、宇宙港から少し離れた住宅街の小さな家に住んでいた。
佐々木が玄関先で小型犬を女性に渡すと、彼女は涙ながらに抱きしめ、何度も佐々木とリベラに頭を下げた。
「本当に、ありがとうございました。私の名前はセレネと言います」
「セレネさん……?」
佐々木はその名前に聞き覚えがあるような気がしたが、すぐに思い出せなかった。
セレネは家に招き入れ、佐々木のためにとお茶を用意した。
リベラは室内をスキャンしながら、壁に飾られた小型エネルギー炉の精巧な模型に目を留めた。
それは、セレネが開発中だと噂されていた高性能炉のプロトタイプに酷似していた。
セレネは小型犬を抱きながら、小さな声で話し始めた。
「実はこの子、迷子になったんじゃないんです」




