33.楽園見学
リーナがアーク見学に同意したため、佐々木たち3人と、アードとリーナは、宇宙港へ向かった。
宇宙港のほど近く、貨物ターミナルエリアで、佐々木はふと足を止めた。
一匹の小型犬が震えていた。
毛並みは汚れておらず、首輪もついていたが、迷子のようで、怯えた様子で周囲を警戒していた。
「あれって迷子かな?」
優しい佐々木は、犬を放っておけなかった。
そっとしゃがみ、手を差し出す。
犬は一瞬怯えたが、佐々木の穏やかな声に安心したのか、震えながらも彼の手に鼻先を押しつけてきた。
佐々木が優しくその頭を撫でると、犬はすぐに彼に懐き、足元から離れようとしなくなった。
リリィは佐々木が抱き上げた犬を撫でながら佐々木に話しかけた。
「飼い主さんを探した方がいいけど。こんなところに置いていくのは心配ですね」
リベラは冷静に周囲をスキャンしたが、飼い主を示すID信号は見つからない。
「近くに飼い主はいらっしゃらないようですね」
それを聞いて、佐々木は困った顔を見て押し黙った。
「すみません。一時的にアークに連れて行きましょう。後で戻ってきて、飼い主さんを探しましょう」
佐々木がそう頼むと、リベラは即座に了承した。
「この犬のIDを登録し、我々が保護したことを公開しておきます」
こうして、小型犬は、佐々木たちと共にルインキーパーに乗り込み、母船のアークへと向かうことになった。
ルインキーパーがアークを視認した瞬間、アードとリーナは息を呑んだ。
「これはすごいな。本当に、残骸の寄せ集めじゃないか…」
それは豪華客船の残骸とはよく言ったもので、異常なまでに巨大で、荘厳な廃墟だった。
リベラは、全員を連れてアークのドックから巨大な資材倉庫の一つへと向かった。
倉庫に入ると、その途方もないスケールに再び2人は言葉を失った。
ちょうどその時、無人の運搬船が一隻ドックに入港し、船倉から大量の鉱物資材が、自律的に倉庫内へと運び込まれている最中だった。
倉庫の中は、すでに所狭しと資材で埋め尽くされている。
リベラは稼働状況を説明した。
「ごらんの通り、資材はほぼ無限です。現在も、ナノマシンと無人運搬船が稼働しており、毎日このような量が運び込まれています」
その光景を見たリーナは、エンジニアとしての血が騒ぎ出した。
「これだけの資材処理をナノマシンと無人船でやっているのね……効率性には欠けるけど、確かに資源は無尽蔵だわ。でも、無駄が多すぎる。ここに高度な自律型ロボットを投入すれば、この搬入と保管のプロセスを劇的に効率化できるわ!」
リーナの瞳は興奮で輝いていた。
アードは確信した。
「ワシの夢の宇宙要塞は、今度こそ、本当に実現する」
目の前に広がる途方もない資材の山と、その運用を支えるリベラの高度なAI、そして孫娘の才能。
この巨大な資材と、それをどう使おうが、気にしない気前のいいキャプテンがいる限り、「アヴァロン計画」はもはや夢物語ではないと。




