31.アヴァロンの生き残り
6章のあらすじ
登場人物:佐々木啓介(30歳、男性)、リベラ(船のAI、女性)、リリィ(17歳、女性)、アード(80歳、男性)
佐々木はリリィへの強要を拒否し、リベラとのチーム関係を修復。直後に3億クレジットの大型依頼をこなし、その報酬でリリィの借金を前払いした。リリィの地元である惑星ゼニスでは、彼女の船の業者ザックが佐々木を詐欺師と疑うも、リベラの冷静な対応と佐々木の善意に触れて信用するに至る。翌日、一行はリノベーション施設「プロトコル・ゼロ」へ。リリィは莫大な資源に見合った「宇宙要塞化」計画を提案し、チームはこれを採用。不落の要塞『アヴァロン』の設計図を探す中、老設計士アードが独自に改良した設計図の模型を発見する。佐々木は1億クレジットで設計図を購入するが、アードはチームの実行力を知り、金を返して設計者としての参加を懇願する。
「そのプロジェクトに、このワシを、設計者として、是非とも入れてくれ!」
老人は、震える手を抑え、居住まいを正した。
一億クレジットを返金し、設計者の座を懇願した老人の目は、先ほどまでの胡散臭さを消し、真剣な光を宿していた。
「改めて、ワシの名前はアード。かつて、宇宙要塞アヴァロンの設計チームにいた者だ」
佐々木とリリィ、リベラの三人は息を飲んだ。
彼らが探してた要塞の、生きた設計士が目の前にいるのだ。
「アヴァロンは、銀河の歴史上、最も強靭な要塞と言われた。だが、結果は陥落だ」
アードは悔しそうに顔を歪めた。
「戦争が終わった後、ワシのような設計士は、どこも雇おうとしなかった。だから、このプロトコル・ゼロで、細々と日銭を稼いでいる。たまに、外部の者をカモにして、怪しげな設計図を売りつけて荒稼ぎもしていたがな」
アードは再び、目の前の模型に視線を戻した。
「だが、あのアヴァロンの陥落は、ワシの心に今もずっとくすぶり続けている。ワシの設計が、何がどう足りなかったのか。それを追求し続けたのが、この模型に込めた最強の要塞だ。これは、ワシの人生の答えなんだ」
アードの熱い語り終わりに、リベラはタブレットから目を上げ、冷静に指摘した。
「佐々木様、お待ちください。この設計図には、重要な要素が欠落しています」
リベラはタブレットの画面を操作し、その欠陥をリリィと佐々木に示す。
「要塞の心臓部であるエネルギー炉、そして主砲となるレーザー砲に関する情報が、一切見当たりません」
佐々木は不安げにアードを見た。
「あ、あの、アードさん。それって、どういうことですか?」
アードは大した問題ではなさそうに答えた。
「むっ、ワシは要塞の構造設計が専門だ。外郭の強度、隔壁の配置、空間の効率化。それがワシの全てだ」
彼は正直に吐露した。
「武装や動力炉といった機関設計は専門じゃないんでな。ワシは知らん」
リベラは、佐々木に代わってアードを冷静に見定めた。
「佐々木様。この構造設計は、リリィさんと確認した限り、極めて高度です。エネルギー炉とレーザー砲の設計が欠けているのは事実ですが、レーザー砲はリリィさんの専門分野です。あとの問題はエネルギー炉だけとも言えます」
リベラは、佐々木の最終的な判断を仰ぐ前に、論理的な結論を提示した。
「この要再構築のため、アード氏を、コンサルタントとして採用する事を推奨いたします」
佐々木は、リベラの明確な判断に安堵し、少し気弱な声で答えた。
「あ、はい。リベラがそこまで言うなら、お願いします!」
その時、ブースの裏側から、一人の若い女性が顔を出した。
彼女はタイトなタンクトップの上にエプロンを羽織り、ジャンク品の詰まった重いコンテナを抱えている。
女性がコンテナを持ち上げるたび、そのタンクトップの裾から健康的な腹部がわずかに見え隠れし、佐々木は思わず目を逸らした。
彼女は佐々木たちを見て、顔をしかめた。
「おじいちゃん!またお客さんをだましてるの? いい加減にしなさいよ!」
佐々木たち三人は、突然の乱入者に言葉を失った。
アードは孫娘に見つかり、顔を真っ赤にして叫んだ。
「バカモノ!今は仕事中だ!」




