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宇宙船は俺の楽園~百年の眠りから目覚めた、孤独な億万長者~  作者: まいぷろ
第4章:新しい仲間

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16/90

16.築かれる楽園と砕かれる希望

第3章のあらすじ

登場人物:佐々木啓介(30歳、男性)、リベラ(船のAI、女性)、ギル(130歳、男性)

佐々木はホテル宿泊費で全財産を失う恐怖を感じるも、ギル紹介の施設で安らげる生活設備の設計図を1.5億クレジットで購入。リベラに促され、ギルとの交渉に臨む。ギルは軍備設計図の対価として、4億相当の素材リストを要求。リベラは旧式設計図の価値(3億)を上回る対価だと指摘し、自らの130年の存在を盾にギルのプライドを刺激。怒ったギルは最高の設計図を提供し、素材の過剰分は「恵んでやる」と意地を張る。契約後、リベラはギルを信用しすぎないよう忠告。佐々木は素材と引き換えに、ギルへ自作の『ユニブレ』フィギュアをプレゼント。金では買えない感謝の印に、ギルは静かに笑い、二人の新たな絆が結ばれる。

「食堂99%、浴場施設80%、睡眠施設70%完成…」


アークの大型モニター前で、佐々木はリベラと並び、各施設の完成状況を確認していた。


佐々木の要望に沿って、アークの生活設備構築は急速に進められていた。

佐々木が待ち望んだ安らぎの空間、豪華なベッドルーム、快適な食堂、そして巨大なバスルームがもうすぐ完成する。


佐々木は感動でリベラの手を握りしめた。

「リベラ!ありがとう!早速、最高の喜びを堪能させてもらうよ」


佐々木は新設した食堂の扉を開けた。

壁際に大型の自動調理器があり、10人がゆったりと食事できる机とソファーがあるだけの部屋ながら、宇宙空間とは思えないほどのラグジュアリーな仕上がりだった。


佐々木は早速、ソファーに座り端末を操作した。

これまでは食料カートリッジをそのまま加熱する質素な食事だったが、この調理器は食料カートリッジを再加工して指定した料理に変えて提供する。


佐々木が指定したのは、これまでの人生で一度だけ食べた事のある「ラーメン」という料理だった。


出来上がった料理を口に含んだ瞬間、佐々木は目を見開いた。


「なっ…!これは…!」

これまで食べていたものと同じ素材なのに、なにもかもまったく違う。


緻密な調理プログラムによって、素材の持ち味が最大限に引き出され、温度、食感、香り、その全てが完璧だった。


佐々木は感嘆する。

「素材は同じなのに、こんなにも味が違うなんて。これは調理なんてレベルじゃないね」


孤独な旅で失われていた「食の喜び」を取り戻し、佐々木は涙ぐみながら食事を終えた。


食後の次は風呂だ。

かつてのメインホールを再利用した広大な浴場には、三十人が余裕で入れる露天風呂スタイルの湯船が出来上がっていた。


「くぅ〜っ!」

佐々木は湯船に体を沈め、大きく息を吐いた。


100年の眠りから目覚めて以来、こんな極上の入浴は初めてだ。

湯気と共に、佐々木の肩から百年の垢と孤独が溶けていくようだった。


「最高だ、リベラ!これでこそ楽園だ!」

リベラに背中を洗われながら、佐々木は歓喜の声を上げた。


風呂から上がり、最高の気分で最後に残しておいたベッドルームへと向かった。

ふかふかのマットレスに体を預け、佐々木は思わず笑みがこぼれた。

「完璧だ。これからはこのベッドで、夢も見ずにぐっすり眠れる…」


佐々木が至福の眠りに落ちようとした、その刹那。


ブリッジから繋がる通信機が、けたたましい赤い警報と共に鳴り響いた。


リベラが確認を即座に行い佐々木に報告した。


「緊急報告です。資源探査のために宙域外れに展開させていたナノマシンが。救難信号を発している小型船を発見しました。エンジンは完全に停止し、漂流中。乗員は生命の危機に瀕しています。」


最高の楽園が完成した直後の、他者の絶望。


佐々木の中に葛藤が生まれた。

葛藤を見て、リベラが追加で情報を伝えた。


「偶然見つけた我々に当然ながら救助義務はありませんが。通常のルートから大きくハズレている点からもおそらく、生命維持機能の停止までに小型船が発見されることはありません。佐々木様、いかが致しましょう?」


疲れた体は安眠を求めているが、このまま眠っては寝覚めが悪い。

佐々木は跳ね起き、服を掴む。

「くそっ。リベラ、ルインキーパーで、現場へ行こう!」

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