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宇宙船は俺の楽園~百年の眠りから目覚めた、孤独な億万長者~  作者: まいぷろ
第27章:誠実なる市場の覇者

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155.ギルバートの初仕事

第26章のあらすじ

登場人物:佐々木(30歳、男性)、リベラ(AI、女性)、ギル(130歳、商人、男性)、リラ(30歳、女性)、ガルド(元造船所社長、53、男性)、アテネ(32歳、建築師、女性)、ゼウス(技術者、ゴースト)、ギルバート(30代の義体となったギル、男性)

ギルはセレノグラフィアへ戻り、ガルドとアテネたちに引退を表明し、後事を託した。その帰り道、ガルドはアテネに求婚し、二人は共に歩むことを誓い合う。次に、拠点レガリスに戻ったギルは、全資産を部下へ分け与えて組織の清算を図るが、連行される最中に凶弾に倒れ、公式には死亡が報じられた。しかし、ギルはこうなる事を予想し、リベラに「ゴースト・スキャン」による意識移植計画を依頼していた。アヴァロンへ密かに運ばれたギルの意識は、ゼウスの協力により30代の最新義体へと移植され、「ギルバート」として若々しく蘇る。真相を知った妻リラは、隠し事をしていた夫への腹いせに佐々木の「ハーレム入り」を宣言するなどの大騒動を起こすが、最後は土下座する夫を許した。無一文から再出発を誓うギルバートは、佐々木と最強のパートナーとして固い握手を交わし、アヴァロンの経営に本格的に参画することが決まった。

ギルバートは、さっそく佐々木とリベラに商売の提案を持ちかけた。


「俺に策がある。アヴァロンに眠ってる膨大な資源を市場に流して、運営資金に変換してやるよ」


自信たっぷりに笑うギルバートは、リベラにいくつかの資源品目を指定した。

さらに、足となる「ルインキーパー」と、資材運搬船を1隻融通してほしいと付け加えた。


「今度は私もついて行くよ」

横からリラが身を乗り出した。


レガリスでの騒動で肝を冷やしたリラにとって、もうギルバートを一人で外に出すつもりはなかった。


ギルバートは若返った顔を少し綻ばせ、リラの肩を抱いた。

「そうだな。今後、子供ができれば常にどちらかがアヴァロンに居ようと思ってる。お前をハネムーンにも連れていけてなかったし、ちょうどいい機会かもな」


2人のやり取りを見守っていたノアが、意を決したようにギルバートへ歩み寄った。


「社長、お願いがあるのですが」


「おいおい、ノア先輩。あんたの社長はもう死んだろう。俺はアヴァロンの新米商人のギルバートだよ」


ギルバートはわざとらしく肩をすくめて、『社長』呼びを訂正させた。


「失礼しました、ギルバートさん。実は、最近ガルドさんの娘さんのミラさんに経理を教えているんですが、ギルバートさんが正式にメンバーに加わるのであれば、私よりも適任かと思いまして…」


ノアの言葉に、ギルバートは興味深げに目を細めた。

「ほう、あのガルドの娘か。いいぜ、俺の商売のやり方を叩き込んでやるのも悪くない」


ノアに背中を押されるようにして、ミラが緊張した面持ちでギルバートの前に進み出た。

「ミラです。よろしくお願いします!」


ギルバートは不敵な笑みを浮かべ、彼女を品定めするように見つめた。

「いいか、俺の指導は厳しいぞ! 泣き言は受け付けねえ。しっかりついてこいよ!」


「はい!」

ミラの威勢のいい返事に、ギルバートは満足げに頷いた。


「さて、最初の目的地はセレノグラフィアだ。俺たちが到着する頃には、あそこでは面白いことが起こっているはずだぜ」


ギルバートが予言者のような口ぶりで言うと、ミラはふと故郷に残した父を思い出した。


「お父さん、私がいなくて寂しがってるかなぁ…」


「ん?いや、たぶん寂しがってねえぞ」

ギルバートの即答に、ミラは目を丸くした。


「え? なんでですか?」


「俺がセレノグラフィアを発つ直前、アイツはアテネと結婚したんだ。今ごろは新婚生活に夢中だろうよ」


「「「「えっ!?」」」」


その場にいた全員が声を上げた。


誰もその初耳の事実に追いつけない。


「ありゃ? お前ら聞いてなかったのか?」

ギルバートは軽い調子で首を傾げる。


佐々木は少し驚いたものの、すぐに穏やかな笑みを浮かべた。

「そうですか。アテネさん、幸せになってくれるといいなぁ」


一週間後、義体の動作が完全に安定した出発の日。

ギルバート、リラ、そしてミラの3人は、新たな販路を切り拓くべくルインキーパーへ乗り込もうとしていた。


「ギルバート、これを受け取ってくれ」

佐々木が手渡したのは、丁寧に包まれた小さな箱だった。


中身を見た瞬間、ギルバートの目が見開かれた。


それは100年ほど昔に一世を風靡したアニメ『ユニバーサル・ブレイブ』、通称『ユニブレ』の主人公のライバル、ガイアのフィギュアだった。


「コックピットにでも、飾っておいてよ」

佐々木の言葉に、ギルバートは胸を熱くした。


レガリスの件ですべてのコレクションを失った彼にとって、これ以上ない贈り物だった。

「…ああ。最高だ。ありがたく受け取っておくぜ」


「行ってくるぜ。達者でな」

「気をつけて。いってらっしゃい」

ギルバートと佐々木は拳を合わせ、男同士の挨拶を交わした。


ハッチが閉まり、ルインキーパーがアヴァロンのドックを静かに離脱する。


ギルバートの、商売人としての第二の人生が今、宇宙の闇へと滑り出した。

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