151.牙を剥く街
ギルが亡くなる数日前のこと、リベラはギルからある通信を受け取っていた。
その通信の内容をゼウスに話したところ、リベラはゼウスからある機械を預かった。
リベラは佐々木に、惑星レガリスへの旅行計画を提案した。
ギルが仕事を終了することもあり、会社の正面で花束を渡して驚かせようという話であった。
それならメイリンも護衛として同行を志望したが、身重の体に何かあってはいけないと佐々木は留守番を言い渡した。
自分も付いていきたいとノアが言い、ついでにリラも連れて行こうと提案した。
リベラは、佐々木とノアの同行は構わないが、リラは連れてこないでくれとギルから言われていると伝えた。
どうやら、最後に泣いている所を見せるのが恥ずかしいとのことだった。
3人はルインキーパーに乗り、惑星レガリスに到着した。
⋯
しかし、港で流れているニュースを見て驚くことになる。
ギルの関連企業による不正会計についての報道がたびたび流れていた。
ノアによれば、こうした内容はこれまでギルの権力で情報統制がされていたが、その力が弱まっている証拠のようだった。
ノアは自分のツテを使って情報を聞いてくると言い、佐々木とリベラにホテルで待つよう伝えた。
ホテルに着くと、リベラも情報の精査をすると言い、隣の部屋へ引っ込んだ。
佐々木は一人になり、久々に寂しさを感じていた。
豪華な部屋の静けさの中で、アヴァロンに残してきた存在を思い出した。
「ああ、ベガ、今何してるかな⋯」
佐々木は独り言をこぼし、窓の外の夜景を見つめた。
⋯
ロビーに入るとすぐに番頭のバルトがノアを見つけ、奥の部屋へ通してくれた。
ノアはどういう状況なのかを把握するため、バルトに話を振った。
「お前は知らないかもしれないが、社長が引退すると言い出したんだ。その話を聞いて、今まで辛酸を舐めさせられた奴らが急に元気になってきたんだよ」
バルトの言葉に、ノアは眉をひそめた。
「もしや、カジノにも何か影響が出ているんですか」
「いや、今までの損失はすべて社長が肩代わりしてくれるとよ。あのじいさん、資産をすべて投げ出す覚悟で今回の引退を決めたようだ。お陰で俺たちの金庫には今、金が唸っているのさ」
バルトはそう言って下卑た笑い方をした。
以前からノアはバルトのこうした所が好きになれず、離れたいと思っていたところに降って湧いたのがアヴァロンへの転任話だった。
当初はアヴァロンがどういう場所か理解できず、ただの左遷だと思っていたが、佐々木という伴侶を見つけるに至った今では、過去の不満も消えていた。
「ノア、俺はお前のことが好きだ。社長が引退するなら、お前も今の仕事を続ける必要はないだろう。ここへ戻ってこい。いや、俺の妻になってくれ」
突然のプロポーズであった。
アヴァロンへ行く前であれば、思想も近いバルトと夫婦になることも厭わなかったかもしれない。
だが、佐々木を知った今、あの男が与えてくれる心地よさから離れる気にはなれなかった。
ノアは丁重に断りを入れた。
「私はギルさんのお陰で、とても素敵な伴侶を見つけることができました。もうココへ戻って来る事もありません。さようなら」
バルトの制止も聞かず、ノアはカジノを後にした。
残された部屋の中で、バルトは去っていったノアの背中と、すべてのきっかけを作ったギルのことを憎らしげに唸っていた。
翌日から、情報を聞き出すために3人でギルの店を訪れたが、中に入ることは許されなかった。
店の外で待ちぼうけを食らう日々が続き、3人は刻一刻と変わるレガリスの不穏な空気を肌で感じていた。
レガリスに着いて、4日目。
その事件は起こった。




